家の不具合は先に伝える?契約不適合責任と伝え方の順番
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士築年数の経った家を売るとき、雨漏りの跡や調子の悪い給湯器のことを、買主にどこまで話すかで迷う方は少なくありません。
話せば値引きを求められ、黙っていれば後で責められるのではないか、という迷いです。
結論から書くと、気になる点は売り出す前に書き出し、査定の段階から順番に伝えていくほうが、売主の手取りと安心の両方を守れます。
この記事は、福岡市で古い戸建てやマンションを売る予定の方に向けたものです。
全宅連の2026年の調査と民法の契約不適合責任をもとに、何をどの順番で伝えるかをまとめました。
2. 不具合を先に伝えると、売れにくくなりますか?
3. 戸建てを売る前に、何を書き出しておけばよいですか?
4. 気になる点は、どの順番で伝えればよいですか?
5. 直してから売るか、伝えて価格に織り込むか、どう決めますか?
6. まず何から始めればよいですか?
家を探す人は、不動産会社に何を求めていますか?
全宅連の2026年の調査では、不動産会社の支援で安心できることの1位が「物件の良い点だけでなく、注意点も正直に教えてくれること」で、48.4%でした。
調査の素性と、読むときの注意
この数字は、公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が2026年9月に公表した「2026 住宅居住白書」にあります。
調査は2026年7月30日から8月5日にかけて、全国の20〜65歳の男女5,000人にインターネットで行われました。
家を買った人や、いま探している人だけに聞いた調査ではありません。
設問も「家の売買や部屋の賃貸をするとき等」と、賃貸を含んだ聞き方です。
ですから「買主の半分が」とは読めず、住まいを探す側に立ったときの一般の感覚として受け取るのが正確な読み方になります。
地域別の数字は「九州」までしか出ておらず、福岡市だけの値はありません。
「注意点も正直に」は、ほぼ2人に1人
複数回答で聞いた「安心できるサポート」では、注意点を正直に教えてくれることが48.4%で、前年より2.7ポイント上がりました。
2位の「契約前に十分な時間をかけて説明してくれること」は32.8%です。
1位と2位のあいだには15.6ポイントの開きがあります。
担当者に「最も」期待することを1つだけ選ばせた設問でも、1位は「わかりやすい説明」の21.4%でした。
すぐ後ろの2位は「デメリットなど全て隠さず情報を伝えてくれること」の19.1%でした。
住まいを探す側が知りたいのは良い話ではなく、あとで困らないための悪い話のほうだと読めます。
天災について聞いた設問でも「築年数や構造」が32.7%、「地盤」が30.7%と、建物の中身を気にする回答が上位に並びました。
物件情報で「あると便利」なものとして、耐震や省エネなどの品質情報を挙げた人は35.8%です。
当社もこの結果を受けて、良い点だけでなく注意点も正直にお伝えする姿勢でお付き合いしていきます。
不動産会社の選び方から同じ調査を読んだ記事はAI時代の不動産会社の選び方にまとめました。
不具合を先に伝えると、売れにくくなりますか?
先に伝えた不具合は売り出し価格や交渉の中で織り込まれますが、引渡し後に見つかった不具合は、修理・減額・損害賠償・解除のどれかを求められる理由になります。
後から見つかると、話が値引きでは済まない
内見の前に「北側の天井に雨漏りの跡があり、10年前に屋根を補修しています」と聞いた買主は、それを前提に価格を考えます。
同じ跡を、買主が自分で見つけたらどうでしょうか。
ほかにも隠していることがあるのでは、と疑われるのが自然な流れでしょう。
予定より大きな値引きを求められたり、話そのものが止まったりするのはこのときです。
引渡しが済んだあとに見つかれば、今度は交渉ではなく、次に書く契約不適合責任の話になります。
雨漏りを告げずに売って裁判になった例は雨漏りを隠して売却したら|裁判になった3件の結論で紹介しています。
契約不適合責任で、買主が求められること
契約不適合責任とは、引き渡した家が契約の内容と合っていないときに、売主が負う責任のことです。
民法562条は、品質などが契約の内容に適合しないとき、買主が修補(直すこと)を請求できると定めています。
563条では、買主が期間を決めて修補を求めても直されなければ、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
564条は、それとは別に損害賠償の請求と契約の解除もできる、としています。
ここで効いてくるのが「契約の内容」という言葉です。
雨漏りの跡があると告げ、それを承知で買ってもらったのなら、その跡は契約の内容に含まれます。
伝えた不具合は、そもそも「適合しない」ものになりにくいわけです。
いつまで責任を負うかは契約不適合責任はいつまで?個人が売主のときの期間の数え方で詳しく書きました。
免責の特約があっても、黙っていたことは残る
個人が売主の古い家では、契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」という特約を入れる例は珍しくありません。
ただし民法572条は、この特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられないと定めています。
「現況のまま・免責」で売れば安全、とはならない理由です。
知っていたことを告げておくことが、特約を本当に効かせる前提になります。
特約の効き方は契約不適合責任の免責特約は有効?現況有姿の限界をご覧ください。
出典:e-Gov 民法
戸建てを売る前に、何を書き出しておけばよいですか?
書き出すのは、建物の不具合、設備の状態、過去の地震や修理の履歴の3つで、「知っていること」と「分からないこと」を分けて書きます。
建物と設備は書類を分け、分からないことは「不明」と書く
建物の不具合を書くのは、物件状況報告書(告知書とも呼ぶ、売主が家の状態を書く書類)です。
雨漏り、シロアリ、給排水管の故障、床や建具の傾きといった項目が並ぶのが一般的です。
エアコン、給湯器、キッチン、照明などの設備は、付帯設備表(引き渡す設備と、その状態の一覧)に分けて書きます。
設備表では「付いている・付いていない・故障している」を1つずつ分けてください。
「動くけれど15年使っている」のような補足も、書いておけば後の言い争いを防げます。
相続した実家のように住んでいなかった家では、雨漏りがあったかどうかを売主自身が知らないこともあります。
その場合は無理に「無し」と書かず、「不明」と書きます。
「無し」と書いた項目で不具合が見つかると、契約の内容と違うと言われる材料になるためです。
分からないことを減らしたいときは、あとで触れる建物状況調査が使えます。
心理的な事情(事件や事故)をどこまで伝えるかは別の決まりで動くので、事故物件の告知義務はいつまで?を読んでください。
マンションに特有の騒音や管理の問題はマンション売却で伝えるべきトラブルは?に分けてまとめました。
福岡市の家なら、2005年の地震のあとの記録を探す
福岡市は、2005年(平成17年)3月20日の福岡県西方沖地震を経験しています。
市はその経験を踏まえて平成20年3月に耐震改修促進計画をつくり、警固断層に着目した耐震対策も掲げました。
地震の当時から住んでいる家なら、そのときの被害と補修の有無を思い出しておいてください。
外壁のひびを直した、瓦を積み直した、といった記録や領収書が残っていれば、それが買主の気にする「築年数や構造」への答えです。
記録が見つからなければ、「補修したが書類は残っていない」とそのまま書けば足ります。
出典:福岡市 耐震改修促進計画
気になる点は、どの順番で伝えればよいですか?
伝える順番は、査定のときに不動産会社へ、売り出すときに資料と内見で買主候補へ、契約の前に書面で、の3段階です。
査定の段階で、担当者に全部話す
最初に伝える相手は、買主ではなく不動産会社の担当者。
査定額が、不具合を知っているかどうかで変わるためです。
不具合を伏せたまま出た査定額で売り出すと、内見や調査で見つかったときに値下げを重ねることになり、売り出しの期間も延びます。
最初から織り込んだ価格なら、下げ幅を読んだうえで売り出せます。
戸建ての査定で見る点は福岡市の戸建て売却にまとめてあります。
無料査定のご依頼の際は、気になる点を書き添えてください。
その前提で金額をお出しします。
内見では、資料と口頭の中身をそろえる
売り出したら、不具合は販売図面や物件の資料にも載せ、内見で口頭でも同じことを伝えます。
資料には書いてあるのに案内のときに触れない、またはその逆だと、買主は「どちらが本当か」と迷うからです。
おすすめは、内見の最初に注意点を伝えてから室内を見てもらう順番です。
先に聞いた買主は、その場所を自分の目で確かめ、直す費用を頭の中で見積もりながら家全体を見ます。
値下げの相談が来たときの考え方は不動産売却で価格交渉されたら?にあります。
契約の前に、書面に残す
口頭で伝えただけでは、何年も経ってから「聞いていない」と言われたときに示せるものがありません。
告知書と付帯設備表に書いた内容は、宅地建物取引士が説明する重要事項説明と売買契約の場で、買主にも確かめてもらいます。
契約から引渡しまでの全体の流れは売却の流れで確かめられます。
直してから売るか、伝えて価格に織り込むか、どう決めますか?
雨漏りや水漏れのように放っておくと広がる不具合は直し、見た目や好みに左右される部分は伝えたうえで価格に織り込む、というのが判断の目安です。
建物状況調査(インスペクション)で「分からない」を減らす
建物状況調査とは、国土交通大臣が定める講習を修了した建築士が、柱や基礎、屋根や外壁など、構造と雨水の入り込みに関わる部分を調べるものです。
宅建業法34条の2は、既存の建物の売却を頼まれた不動産会社に、調査を行う者のあっせんに関する事項を媒介契約書に書くよう定めています。
媒介契約(不動産会社に売却を頼む契約)を結ぶときに、調査を頼める先を紹介してもらうかどうかを確かめる場面がある、ということです。
調査をすれば、売主自身が知らなかった不具合も書面で示せるようになり、告知書の「不明」を減らせます。
直したほうがよいとき、直さないほうがよいとき
雨漏りが今も続いている、給水管から水が漏れている、といった不具合は、直さないと家の傷みが広がり、買主が見込む修理代も大きくなります。
こうした不具合は、売り出す前に直して、直した記録ごと伝えるほうが話が早く進みます。
一方、古い壁紙や使い込んだキッチンは、買主が自分の好みでリフォームすることが多い部分です。
売主が先にお金をかけても、その分がそのまま売値に乗るとは限りません。
壊れた設備をどうするかは住宅設備が壊れていても不動産は売れる?直す前の判断で、場合ごとに書いています。
どちらか迷うときは、修理の見積もりを1つ取り、その金額と価格への影響を担当者と並べて比べてください。
まず何から始めればよいですか?
始めるのは、家の気になる点を思いつくまま紙に書き出し、不動産会社に相談する前に手元へ置いておくことです。
いつ、どこで、何が起きて、どう直したかを、分かる範囲で書けば十分です。
領収書や工事の書類が見つかれば、一緒にまとめておくと話が早く済みます。
全宅連の調査で「注意点も正直に」を選んだ人が約半数いたことは、裏返せば、注意点を先に出す売主はそれだけで信用されやすいということでもあります。
当社では、引渡しから3か月を契約不適合責任の期間の標準としており、その範囲で困らないよう、書き出したメモをもとに告知書づくりからお手伝いしています。
売るかどうか決まっていない段階でも、15分の無料相談で、書き出した内容をどう伝えるかから一緒に整理しましょう。
