収益物件の売却に必要な書類|取得先と手数料の一覧
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士一棟ものの売却は、資料がそろうまで査定も買主探しも前に進みません。
買主は投資家か法人で、賃料の裏づけと建物の状態を書類で確かめてから値段を出すからです。
この記事では、福岡市で一棟マンション・アパート・ビルをお持ちの方に向けて、何の書類をどこで取るのかを一覧にしました。
権利・収益・建物・税・境界の5つに分けて、取得先と手数料まで並べています。
売却の全体の流れは一棟ビル・一棟マンション売却の流れに書いたので、こちらは書類の取り方だけに絞ります。
2. 権利の書類は、どこで取れますか
3. 収益の書類は、誰が持っていますか
4. 建物の書類が手元に無いときは、どうしますか
5. 税の書類は、どこから出せばよいですか
6. 境界の書類と、取りかかる順番はどうなりますか
収益物件を売るとき、書類は何のために要るのですか
買主が融資を受けるときと、買主が物件を調べるときに、同じ書類が2回読まれるからです。
買主は、同じ書類を2回読む
1回目は金融機関です。
事業用の融資では、金融機関が賃料の資料と建物の資料を読み込んでから結論を出します。
2回目が買主自身の調査、いわゆるデューデリジェンスです。
どちらも、書類が足りないとそこで止まります。
止まっている間、売主にできることはありません。
「揃っている/これから取る/無い」の3つに分ける
査定を頼む前に、手元の書類をこの3つの山に分けてください。
- 揃っている … いま手元にある
- これから取る … 役所や法務局で取れば手に入る
- 無い … 紛失した、もともと交付されていない
3つに分けた状態でお持ちいただければ、当社は足りないものから先に手配できます。
登記事項証明書は「これから取る」、竣工図は「無い」、レントロールは「揃っている」という具合です。
分けてみると、手配に人の都合が絡むものだけが手元に残ります。
いちばん困るのは、あると思っていたものが売買契約の直前で見つからない場合です。
無い書類は、無いと早く分かったほうがよい
無い書類があっても、売れなくなるわけではありません。
代わりの証明を取る、価格に織り込む、買主を選び直す、といった手は残っています。
ただし、どの手も時間がかかります。
買主の調査が始まってから「ありません」と伝えると、その時点で条件の交渉がやり直しです。
価格を下げる話になるのか、そのまま進むのかは、買主がそれをいつ知ったかで変わります。
売り出す前に開示してあれば、あとから下げる話にはなりません。
確定測量が要ると分かるのが遅れれば、それだけで数か月の後ろ倒しになります。
権利の書類は、どこで取れますか
登記事項証明書・公図・地積測量図の3点は、どの法務局でも取れます。
法務局では3点まとめて取る
登記事項証明書は、所有者・面積・抵当権などが載った書類です。
公図は土地の形と並びを示した図面で、地積測量図は測量の結果を記録した図面になります。
福岡市内の不動産でも、全国どこの法務局の窓口でも請求できます。
一棟マンションで敷地が数筆に分かれている場合は、筆ごとに請求してください。
敷地が何筆あるかは、公図を見れば分かります。
登記事項証明書は「全部事項」を取る
登記事項証明書には、全部事項証明書と現在事項証明書の2種類があります。
売却で使うのは全部事項証明書のほうです。
過去に抹消された抵当権や、所有者が変わった経緯まで載っているからです。
買主と金融機関は、そこを読んで物件の履歴を確かめます。
現在事項証明書では、いま有効な内容しか出てきません。
手数料は1通600円。オンラインなら安くなる
| 書類 | 書面請求 | オンライン請求・郵送 | オンライン請求・窓口交付 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 600円 | 520円 | 490円 |
| 公図・地積測量図 | 500円 | 470円 | 440円 |
金額は令和7年4月1日からのものです。
土地が5筆あれば、登記事項証明書だけで3,000円。
数百円の話ではありますが、筆数の多い一棟ものでは枚数がふくらみます。
収益の書類は、誰が持っていますか
レントロール・賃貸借契約書・入金の記録は役所では取れず、オーナーか管理会社の手元にしかありません。
レントロールは、管理会社に最新版を出してもらう
レントロールは、部屋や区画ごとの賃料・共益費・敷金・契約の始期と終期をまとめた一覧表です。
管理を委託していれば、管理会社が毎月作っています。
売却のために出してもらうときは、いちばん新しい月のものを指定してください。
半年前の一覧では、その後の退去や賃料改定が反映されていません。
この最新のレントロールは、受け取った査定書の満室想定と突き合わせる材料にもなります(収益物件の査定書の読み方)。
賃貸借契約書は、原本の所在を先に確かめる
賃貸借契約書は、買主がレントロールの数字を突き合わせる相手です。
原本が管理会社にあるのか、ご自宅にあるのかを先に確かめてください。
更新を重ねた部屋では、当初の契約書と更新の合意書が別々になっていることもあります。
どちらも一組にしてそろえるのが、あとの手間を減らす近道です。
入金の記録は、通帳か送金明細で足りる
買主は、レントロールの賃料が実際に入っているかを見ます。
使うのは、賃料の入る口座の通帳か、管理会社からの送金明細です。
直近1年ぶんがあれば、たいていの金融機関の審査には足ります。
滞納や空室があっても、隠さずに出してください。
入金の記録とレントロールの食い違いは、買主の調査でほぼ見つかります。
事業用のテナントが入っている建物では、保証金と原状回復の特約も読まれます。
敷金と保証金がどう引き継がれるかは一棟のオーナーチェンジ売却に書きました。
管理委託契約と駐車場の契約も出す
建物の管理を会社に委託していれば、その管理委託契約書も引き継ぎの対象になります。
買主は、契約をそのまま続けるか、自分の管理会社に替えるかを決めます。
解約の予告期間が契約書に書いてあるので、そこを先に確かめてください。
駐車場を別契約で貸しているなら、その一覧も要ります。
賃貸借契約に含まれていない駐車場は、レントロールから漏れやすい部分です。
建物の書類が手元に無いときは、どうしますか
確認済証と検査済証は再発行されず、福岡市では代わりに台帳記載事項証明書を取ります。
福岡市の取引は、築31年以上が3割
当社が国土交通省の取引価格情報を集計したところ、福岡市7区の共同住宅の取引は10年で2,982件ありました。
このうち築31年以上が31%を占め、築41年以上だけで290件です。
構造は木造が47%、鉄筋コンクリート造が33%でした。
事務所・店舗の建物は、同じ10年で651件でした。
こちらは築41年以上が21%、鉄骨造が52%を占めています。
これは買主へのアンケートに回答があった取引だけの集計で、全数ではありません。
それでも、古い建物が普通に売買されていることは読み取れます。
建てたときの書類が手元から消えているのも、築年が古い建物ほどです。
台帳記載事項証明書は、本庁舎4階の建築指導課
福岡市では、建築確認等台帳記載事項証明書を市役所本庁舎4階の建築指導課で取れます。
手数料は1件300円です。
ただし福岡市は、この証明書が確認済証や検査済証を再発行するものではないと明記しています。
台帳に記録が残っていることを示す書類、という位置づけになります。
検査済証そのものが無い建物の売り方は旧耐震ビル・一棟マンションの売却にまとめました。
竣工図・修繕履歴・点検記録は管理会社へ
竣工図は、建物が実際にどう建ったかを示す図面です。
修繕履歴は、屋上防水・外壁・給排水管をいつ直したかの記録になります。
設備の点検記録とは、消防設備点検・エレベーターの保守・受水槽の清掃などの記録です。
どれも役所では取れず、管理会社か工事をした業者の手元にあります。
管理会社を変えている場合は、前の会社に残っていないかを確かめてください。
1990年ごろより前の建物では、受変電設備と照明の製造年も確かめる対象になります。
理由は古いビルの売却とPCB・アスベストに書きました。
税の書類は、どこから出せばよいですか
固定資産評価証明書は区役所の課税課で取り、取得時の契約書と減価償却の記録は手元の書類から出します。
評価証明書は区役所の課税課で1件300円
固定資産評価証明書は、物件のある区の区役所課税課で請求できます。
手数料は1件300円です。
オンラインで申請して郵送で受け取ると250円になり、令和9年3月31日までは郵送料もかかりません。
この証明書には土地と建物の評価額が別々に載っています。
代金を土地と建物に分けるときの材料になるので、消費税の扱いにも効いてきます。
按分の考え方は収益物件の売却と消費税に書きました。
評価証明書のほかに、毎年届く納税通知書に付いている課税明細も残しておいてください。
年度の途中で売ると固定資産税を日割りで精算するので、買主とその金額を突き合わせます。
取得時の契約書と、減価償却の計算欄
買ったときの売買契約書は、取得費を出すための元になる書類です。
紛失していても、購入時の仲介会社や司法書士に写しが残っている場合があります。
賃貸用の建物は毎年の減価償却で帳簿の価額が減っていくため、買ったときの金額がそのまま取得費にはなりません。
いくら残っているかは、確定申告で使う決算書の「減価償却費の計算」の欄に出ています。
個別の税額や有利不利の判断は税理士の領域なので、当社は税理士と連携して進めます。
手取りの考え方は一棟アパート・ビル売却の税金にまとめました。
境界の書類と、取りかかる順番はどうなりますか
地積測量図の有無を先に確かめ、時間のかかるものから手をつけてください。
地積測量図が無ければ、確定測量を検討する
地積測量図は、すべての土地にあるわけではありません。
古くに分筆された土地では、法務局に備わっていない場合があります。
隣地との境界が確定していない土地を売るときは、確定測量を入れるかどうかの判断が要ります。
費用の目安は40〜60万円程度です。
官民の境界が絡むと、数か月かかることもあります。
測量が要るかどうかも含めて、売ると決めた時点でご相談ください。
取りかかる順番は、時間のかかるものから
| 順 | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 1 | 確定測量の要否を判断する | 数か月かかる場合がある |
| 2 | 管理会社にレントロール・修繕履歴・点検記録を依頼する | 数日〜数週間 |
| 3 | 建築指導課で台帳記載事項証明書を取る | 窓口で当日 |
| 4 | 法務局で登記事項証明書・公図・地積測量図を取る | 窓口で当日 |
| 5 | 区役所の課税課で評価証明書を取る | 窓口で当日 |
役所で取れるものは、どれも数百円で当日に手に入ります。
先に動かすべきなのは、人と調整が要る1番と2番のほうです。
3番から5番は、まとめて1日で回ることもできます。
ただし建築指導課は市役所の本庁舎、課税課は区役所と、場所が離れた窓口です。
窓口の場所は福岡市の手続き窓口ガイドにまとめています。
次に何をすればよいですか
まず3つの山に分けて、無いものをはっきりさせてください。
そのうえで、揃っているぶんだけでご相談いただいて構いません。
書類が半分しか無い段階でも、そこから先の段取りはお伝えできます。
当社は福岡市博多区の売却専門で、売主側の仲介として入り、囲い込みをしません。
代表が最後まで担当し、税と登記は税理士・司法書士と連携して進めます。
