民泊の消防設備と適合通知書|福岡市の窓口と売るときの扱い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市に戸建てを持っていて、民泊に使うか、民泊に使いたい人へ売るかを考えている方に向けた記事です。
最初にお伝えしたいのは、民泊に要る消防設備は「届出の民泊か、旅館業の許可か」という制度の違いでは決まらないということ。
決め手は、泊まる人がいる間に家主がその家に住んでいるかと、宿泊に使う部屋の広さです。
制度で違うのは設備の中身よりも手続きのほうで、届出の民泊では消防署が出す「消防法令適合通知書」が欠かせません。
売るときには、設備は家に残っても、書類はそのまま買主に渡せるとは限らないという点で扱いが分かれます。
この記事では、設備の決まり方、通知書の取り方と福岡市の窓口、設備がある家とない家を売るときの伝え方を順に書きます。
届出と許可の違いや年180日の上限など制度そのものは空き家を民泊にするには|福岡市の届出と年180日の上限にまとめました。
用途地域や床面積から「そもそも民泊に使える家か」を調べる方法はその家は民泊に使える?|用途地域と建物の調べ方で扱っています。
2. 福岡市の戸建てを民泊にすると、どんな消防設備が要る?
3. 消防法令適合通知書は、どこで、どう取る?
4. 消防設備がある家・ない家は、売るときにどう扱われる?
5. 民泊に使える家を売るか迷ったら、何から始める?
民泊の消防設備は、届出と旅館業で違う?
消防設備の基準は制度の名前ではなく、消防法上の「用途」で決まるので、届出でも旅館業でも同じ使い方なら同じ考え方で判定されます。
違いが出るのは、消防署へ何をいつ出すかという手続きの側です。
設備を決めるのは「消防法上の用途」
消防法は、建物を「一般住宅」「共同住宅」「旅館・ホテル等」のように用途で分け、用途ごとに必要な設備を決めています。
民泊は、人を泊めてお金を受け取る使い方なので、多くの場合に入るのは「旅館・ホテル等」の側です。
福岡市保健所の案内も、旅館業の許可による民泊が消防法上の旅館・ホテル等に当たる場合を取り上げています。
その場合は、誘導灯や自動火災報知設備が新たに要ることがあるという説明です。
届出の民泊も、後で触れる例外に当たらなければ、同じ「宿泊施設」として扱われます。
つまり、旅館業の許可を取ったから設備が増える、届出だから軽く済む、という関係ではありません。
家主が同居し、宿泊室が50㎡以下なら「一般住宅」
福岡市消防局のQ&Aでは、家主が同居し、かつ宿泊室が50㎡以下の場合は一般住宅と判定されるとしています。
どちらか片方だけでは足りず、2つの条件が両方そろったときの扱いです。
家主が別の場所に住んでいる空き家や、相続して誰も住んでいない実家を民泊にするなら、この例外には当たりません。
その場合は宿泊施設(消防法施行令の別表第一でいう「(5)項イ」)と判定され、必要な設備が増えます。
ここでいう宿泊室は、泊まる人が寝る部屋のことで、台所や浴室まで含めた家全体の広さではありません。
旅館業の許可で家主が同居する形をとる場合の扱いは、物件がある区の消防署予防課で確かめてください。
違うのは手続き:届出は通知書が必須、旅館業は立入検査
選んだ制度によって消防署への手続きが違う、というのが福岡市消防局の案内です。
| 制度 | 申請・届出の先 | 消防の書類 |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業法の届出 | 福岡県(生活衛生課) | 消防法令適合通知書の添付が必要 |
| 旅館業法の許可 | 福岡市(区の衛生課) | 通知書の添付は必須ではない |
ただし旅館業でも、消防の確認が要らないわけではありません。
市の手引きは「消防設備について事前に相談し、許可申請の前に立入検査を受ける」よう求めています。
通知書の写しを持っていれば、許可申請の書類と一緒に出す扱いです。
届出の民泊には、消防法とは別に、住宅宿泊事業法の決まりで非常用照明器具や避難経路の表示が要る家もあります。
ただし戸建てで家主が同居し、宿泊室が50㎡以下なら、非常用照明器具の設置は不要です。
福岡市の戸建てを民泊にすると、どんな消防設備が要る?
必要になることが多いのは消火器・自動火災報知設備・誘導灯の3つですが、何が要るかは建物ごとに違います。
福岡市消防局の案内では、一般住宅を民泊に使う場合の多くで、新しい消防用設備が必要になるとのことです。
よく要るのは消火器・自動火災報知設備・誘導灯
市消防局のQ&Aが、必要になることが多い設備の例として挙げるのは、消火器・自動火災報知設備・誘導灯です。
自動火災報知設備とは、ある部屋で煙や熱を感じたときに、ほかの部屋にも知らせる仕組みを指します。
住宅に付ける義務がある住宅用火災警報器は、その部屋で鳴るだけなので、これとは別の物として扱われます。
誘導灯は、非常口の場所を緑の光で示す照明で、ホテルの廊下で見かけるものと同じ役割です。
すでに付いている設備は重ねて付ける必要はないので、何が足りないかは今の家の状態から数えることになります。
延べ300㎡未満なら、配線の少ない火災報知設備も選べる
延べ面積が300㎡未満の建物では、「特定小規模施設用自動火災報知設備」という簡単な方式を使える場合があります。
感知器どうしが無線でつながり、感知器そのものが警報音を鳴らすので、壁の中に配線を通す工事を減らせる方式です。
受信機を置かず感知器だけで組むなら、工事に消防設備士の資格が要らず、着工前の届出も要りません。
設置が終わったあとの届出は必要で、つながる住宅用火災警報器をこの設備の代わりに使うこともできません。
電波の状態や建物の階数によっては使えないこともあるため、選べるかどうかを確かめる相手は消防署と設備業者です。
設備のほかに求められる3つの備え
設備の工事とは別に、市消防局は民泊の運営で次の3つを守るよう求めています。
- カーテンやじゅうたんは、燃えにくい「防炎物品」を使う
- 宿泊室の見やすい場所に避難経路図を貼る
- 寝る場所に、持ち運べる電灯を置いておく
どれも工事は要りませんが、家具やカーテンを残して売るなら、防炎物品かどうかも書き出しておくと買主が確かめやすくなります。
建物の中の人数が30人以上になると防火管理者を選ぶ必要が出ますが、家主同居で宿泊室が50㎡以下の一般住宅なら、その必要はありません。
消防法令適合通知書は、どこで、どう取る?
消防法令適合通知書は、民泊を始める家がある区の消防署(予防課)に申請書を出し、立入検査などで消防法令に合っていると認められると交付されます。
届出の民泊では福岡県への届出に添える書類なので、県に出す前に消防署での手続きを終えておく必要があります。
窓口は、物件がある区の消防署予防課
福岡市では7つの区にそれぞれ消防署があり、相談先は家の所在地で決まる仕組みです。
市が作った民泊のチラシには、各区の消防署予防課指導係の電話番号が載っています。
| 家がある区 | 相談先 | 電話 |
|---|---|---|
| 東区 | 東消防署 | 092-683-0119 |
| 博多区 | 博多消防署 | 092-475-0119 |
| 中央区 | 中央消防署 | 092-762-0119 |
| 南区 | 南消防署 | 092-541-0219 |
| 城南区 | 城南消防署 | 092-863-8119 |
| 早良区 | 早良消防署 | 092-821-0245 |
| 西区 | 西消防署 | 092-806-0642 |
届出そのものの相談先は福岡県生活衛生課、旅館業の許可は区の衛生課です。
窓口が3つに分かれるので、どこまでが消防の話かを先に切り分けておくと、電話で行き違いが起きにくくなります。
申請書は様式30番、平面図と登記を添える
申請書は、福岡市消防局の届出様式の一覧にある「消防法令適合通知書交付申請書(住宅宿泊事業法用)」で、番号は30番です。
提出の時期は「住宅宿泊事業法に基づく届出を福岡県に行う前」、部数は1部です。
市消防局のページによると、申請書には平面図と登記などを添えて、民泊を始める区の消防署へ出します。
申請書に書く欄は、建物の延べ面積・民泊に使う部分の床面積・宿泊室の床面積の合計と、家主が不在にならないかどうかです。
この記入内容をもとに用途が判定されるので、宿泊室の広さは図面と食い違わないように測っておきます。
旅館業など届出以外のために通知書を受けたいときに使うのは、31番の「住宅宿泊事業法以外用」という別の申請書です。
工事の前後に出す届出と、半年ごとの点検
設備を付ける場合は、通知書の申請とは別に、工事の前後で消防署へ出す届出があります。
| 届出 | 出す時期 |
|---|---|
| 着工届(資格が要る工事のとき、消防設備士が出す) | 工事の10日前まで |
| 設置届 | 工事が終わった日から4日以内 |
| 防火対象物使用開始届出書 | 使い始める7日前まで |
消火器や住宅用火災警報器は自分で買って付けることもできますが、付ける位置が法令で決まっているので、市消防局は設備業者への依頼を勧めています。
見積もりは複数の業者から取るように、というのも同じQ&Aの助言です。
宿泊施設と判定された家は、付けたあとも機器の点検を半年ごと、総合点検を1年ごとに行い、結果を1年に1回、管轄の消防署長へ報告する決まりです。
この点検の記録は、のちに家を売るときにも、設備がきちんと維持されてきたことを示す資料になります。
消防設備がある家・ない家は、売るときにどう扱われる?
設備は建物と一緒に買主へ渡りますが、消防法令適合通知書は買主の民泊にそのまま使えるとは限りません。
通知書は、申請した人と届出住宅ごとに出る書類だからです。
設備がない家は、「付ければ民泊に使える」と言い切らずに、買主が自分で確かめられる材料を渡す売り方になります。
設備は残る、通知書は買主の名前で取り直す前提で
通知書の様式には申請者と立入検査の日付が書かれ、届出のたびに県へ添えるものです。
買主が民泊を続けたいなら、買主自身があらためて県へ届け出ることになり、そのときにも通知書が要ります。
売主が受けた通知書を買主の届出に使えるのか、取り直すのかは、区の消防署予防課で確かめてから買主に伝えてください。
運営したまま売るときの届出や予約の扱いは民泊を運営したまま売るには|引き継げるもの・できないものに書きました。
売るときにそろえる消防の書類
設備がある家を売るなら、次の4つをそろえておくと、買主が民泊に使えるかを判断しやすくなります。
- 付いている設備の一覧(種類・場所・付けた年)
- 設置届と防火対象物使用開始届出書の控え
- 半年ごとの点検の記録
- 消防法令適合通知書の写し
設備は、売買のときに渡す「付帯設備表」(家に付いていて一緒に引き渡す物の一覧)にも書いておいてください。
壊れている感知器や、電池が切れたままの機器があるなら、隠さずに状態を書くほうが、引き渡しのあとの行き違いを防げます。
不具合をいつ、どう伝えるかは家の不具合は先に伝える?契約不適合責任と伝え方の順番で詳しく扱いました。
設備のない家は、先にお金をかけずに材料を渡す
民泊の設備が何もない家でも、民泊の買主が条件に合えば検討する場合があります。
そのときに役立つのは、延べ面積、寝室に使える部屋の広さ、間取り図、建物の登記といった、消防署が判定に使う材料です。
売る前に設備を付けても、買主が民泊をしないなら、その費用を価格に上乗せできるとは限りません。
民泊を想定して売り出しても、買主の使い道は民泊とは限りません。
設備にお金をかける前に売り方を決めておけば、かけた費用が戻らない事態を避けやすくなります。
すでに民泊をやめて住まいとして売るなら、誘導灯などを残すか外すかも決めておきます(民泊をやめて家を売る手順)。
民泊に使える家を売るか迷ったら、何から始める?
最初にやることは、家の延べ面積と宿泊に使えそうな部屋の広さを図面で確かめ、民泊に使った場合と住まいとして売った場合の両方の価格を知ることです。
消防設備は、どちらの道を選ぶかが決まってから区の消防署に相談しても遅くありません。
おもいで不動産では、民泊での運用と売却の比べ方を民泊で運用する(福岡市)のページにまとめています。
売った場合にいくらになるかを知りたい方は、無料査定からご依頼ください。
売らずに民泊で持ち続けたい方、まだどちらとも決めていない方は、15分無料相談で状況をお聞かせください。
消防の設備や書類が手元にどれだけあるかが分かれば、その場で買主に伝えるべきことを一緒に整理できます。

