民泊の近隣トラブル|ごみ・騒音の備えと苦情が続いたとき
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士民泊を始めると、近所の人から苦情が来ないかが気になります。
この記事は、福岡市で民泊を始める方、すでに続けている方に向けて書きました。
「何でもめやすいのか」「苦情が来たら誰が受けるのか」「苦情が続いたら売るべきか」を判断する材料をまとめています。
先に結論を書くと、もめやすいのはごみ・夜の音・車・鍵の4つで、どれも泊まる前の説明と段取りで減らせるものです。
苦情への対応は法律で家主の義務とされ、管理業者に委託すれば管理業者の義務になります。
それでも、近所から見た責任の先は持ち主に残ります。
届出の方法や年180日の上限など、制度の基本は空き家を民泊にするにはにまとめたので、ここでは繰り返しません。
2. 民泊の近隣トラブルを防ぐには、何を備えればよい?
3. 民泊の苦情は、誰がどこで受ける決まり?
4. 苦情が続くと、民泊はどうなる?
5. 苦情があった民泊の家を売るとき、買主に何をどう伝える?
6. 民泊を続けるか売るか迷ったら、どこに相談できる?
民泊で近隣トラブルになりやすいのは何?
民泊で近所ともめやすいのは、ごみの出し方、夜の話し声や物音、路上の車、鍵と部屋の間違いの4つです。
福岡県も、民泊を始めたあとは深夜の騒音とごみ処理の不備について苦情や問合せが多く寄せられていると書いています。
どれも宿泊客に悪気がなく、その土地の決まりを知らないことから起きる点が共通しています。
ごみ:家庭ごみの集積所に出された袋
いちばん目に見えやすいのが、ごみです。
宿泊客が帰りがけに、近くのごみ集積所へ袋を置いていくことがあります。
民泊から出るごみは、法律上は家庭ごみではありません。
住宅宿泊事業に伴うごみは、事業活動から生じた廃棄物として、家主が責任をもって処理する決まりです。
町内で管理している集積所に事業のごみが混ざれば、近所の人には「よその人が出したごみ」に見えます。
分別の違いで回収されずに残ると、それが苦情のきっかけになります。
騒音:夜の話し声とスーツケースの音
次に多いのが音です。
観光庁が宿泊者への説明の例に挙げるのは、大声で話さない、深夜は窓を閉める、屋外で宴会をしない、室内で楽器を使わない、の4つです。
旅行中の人は夜遅くに帰り、朝早く出ていきます。
住宅街の細い路地では、夜中にスーツケースを引く音や玄関先の話し声が思った以上に響くものです。
マンションの1室なら、廊下やエレベーターでの話し声も同じ扱いになります。
駐車と鍵:路上の車と部屋の間違い
車で来る宿泊客が、家の前の道路や近所の空き地に車を止めてしまうことがあります。
駐車場のない家を、駐車場の案内なしで貸すと起きやすいトラブルです。
鍵の受け渡しでは、暗証番号が分からない、隣の家の玄関を開けようとする、夜中に近所の家の呼び鈴を押す、といったことが起こり得ます。
近所の人にとっては、知らない人が夜に家の前をうろうろすること自体が不安の種です。
この2つは法律に細かな決まりがない分、家主が自分で段取りを決めておくしかありません。
民泊の近隣トラブルを防ぐには、何を備えればよい?
備えの中心は、泊まる人への説明を書面で用意することと、ごみ・車・鍵の段取りを予約の段階で決めておくことの2つです。
宿泊者への説明は、住宅宿泊事業法の第9条で家主の義務とされています。
宿泊者への説明は、法律で決まった4つの事項
住宅宿泊事業法の施行規則の第8条は、説明する事項を4つ定めています。
- 騒音の防止のために配慮すべき事項
- ごみの処理に関し配慮すべき事項
- 火災の防止のために配慮すべき事項
- そのほか、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に必要な事項
外国から来た宿泊者には、外国語で説明しなければなりません。
方法は書面の備付けなどとされ、対面での説明は必須ではありません。
観光庁が求めるのは、居室の目につきやすい場所への掲示や、タブレット端末での表示など、滞在中いつでも見られる形です。
事前の説明を読まない宿泊者にも注意できるよう、居室に電話を置くなどの対策も挙げられました。
駐車と鍵の案内は、4つ目の「そのほか」に入れて同じ書面にまとめると、宿泊客が1枚で確かめられます。
福岡市では、ごみを家庭ごみと分けて出す
福岡市の事業系のごみは、出し方が2通りに決まっています。
事業所の所在地で許可を持つ収集業者に頼むか、市の処理施設へ自分で持ち込むかです。
持ち込む場合は、市の自己搬入ごみ事前受付センターへの申込みが要ります。
市は家庭のごみと事業所のごみを分けて出すよう求めており、分けにくい場合は家庭用のごみ袋を使えないとしています。
つまり、宿泊客のごみを町内の集積所に出す前提の段取りは、福岡市の事業系のごみの決まりに合いません。
宿泊客には「ごみは家の中の決まった場所に置いて帰る」とだけ伝えてください。
そこから先を家主か管理業者が引き取る形にすれば、集積所でのもめごとは起きません。
清掃を任せる会社にごみの収集まで含めるかどうかは、民泊の運営代行とはで確かめ方を書きました。
民泊の苦情は、誰がどこで受ける決まり?
民泊への苦情は、まず家主か、家主から委託を受けた住宅宿泊管理業者が受け、深夜や早朝でも応じる決まりです。
事業者に言っても直らないときの窓口は、福岡市内の届出の民泊なら福岡県の生活衛生課です。
法律は「適切かつ迅速に」、深夜早朝も常時
住宅宿泊事業法の第10条は、近所の住民からの苦情と問合せに「適切かつ迅速に」対応するよう家主に求めています。
観光庁の説明では、深夜早朝を問わず常時、応答か電話で対応する必要があります。
宿泊客がいない日も、この対応は止められません。
その場で答えられないときは、回答の期日を伝えて後日答える形になります。
家主が泊めている間に不在になる家では、この苦情対応も住宅宿泊管理業者に委託する業務に含まれます(第11条・第36条)。
ただ、近所の人から見れば、電話の向こうにいるのが代行会社でも、相手はその家の持ち主です。
近所の人が連絡する先は、玄関の標識から
届出の民泊では、家ごとに公衆の見やすい場所へ標識を掲げることが義務です(第13条)。
福岡県の案内では、高さはおおむね地上1.2m以上1.8m以下で、大人の目の高さにあたります。
福岡市の市政だより博多区版(令和7年8月1日号)も、トラブルが起きたら出入口付近に掲示された緊急連絡先へ連絡するよう案内しました。
それでも直らないとき、近所の人が次に連絡する先は次のとおりです。
| どんな施設か | 連絡先 | 受付 |
|---|---|---|
| 届出の民泊(福岡市内を含む県内全域) | 福岡県 生活衛生課 営業指導係 092-643-3279 | 平日9時〜16時(窓口へ行くときは予約) |
| 旅館業の許可の施設、無届・無許可と思われる施設 | 物件がある区の衛生課(福岡市) | 市の開庁時間 |
| 制度全般の質問・意見・苦情 | 民泊制度コールセンター 0570-041-389 | 平日9時〜17時 |
家主の側から見ると、標識の連絡先で受けきれなかった苦情は、県や区へ回るということです。
宿泊客が注意に従わないときは、現地へ行く
宿泊客の行為で苦情が出ていて、注意しても改まらないときは、現場へ急行して退室を求めるなどの対応が必要とされています。
管理業者が退室を求めるには、家主から宿泊契約を解除する権限を前もって受けておかなければなりません。
委託契約にこの権限が書かれていないと、夜中に現地へ着いても「お願い」しかできないことになります。
けんかや急病のように急ぐ場面では、警察署・消防署・医療機関へ連絡したうえで、自分たちも現場へ向かう決まりです。
現地へ着くまでの時間の目安は、運営代行の記事で観光庁の指針をもとに書きました。
苦情が続くと、民泊はどうなる?
苦情が続いて法律の決まりが守られていないと県が判断すれば、業務改善命令、1年以内の業務停止命令、最後は廃止命令が出されることがあります。
実際には命令が出る前に、家主の側で「続けるか、やめるか」を考える段階が来るはずです。
県が出せる命令は3段階
住宅宿泊事業法は、都道府県知事が家主に出せる命令を3つ定めています。
- 業務の方法の変更など、運営の改善を命じる業務改善命令(第15条)
- 法令や命令に違反したときの、1年以内の業務の全部または一部の停止命令(第16条第1項)
- ほかの方法では監督の目的が果たせないときの、事業の廃止命令(第16条第2項)
停止や廃止の命令に違反すると、6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(第73条)。
観光庁は、苦情が多く出ているのに宿泊者への説明で何も手を打たない場合も、業務改善命令などの対象になるとしています。
廃止を命じられた人は、その日から3年たつまで住宅宿泊事業を営めません(第4条)。
続けるか、やめるかを考える目安
苦情が1回来たからといって、民泊をやめる必要はありません。
考え直す目安は、説明の書面やごみの段取りを変えたあとも、同じ内容の苦情が同じ人から繰り返し届くときです。
その場合、宿泊客の行儀ではなく、家の場所や造りそのものが民泊に合っていない可能性があります。
たとえば、玄関が隣家の寝室の窓に面している、車で来るしかないのに止める場所がない、といった条件は書面では変えられません。
近所に親の代からの知り合いが住む実家なら、苦情は家族の付き合いにも響きます。
やめると決めたときの廃業の届出から売り出しまでの順番は、民泊をやめて家を売る手順に並べました。
苦情があった民泊の家を売るとき、買主に何をどう伝える?
伝えるのは、いつ頃、どんな苦情が、どのくらい続き、いまはどうなっているかの4点で、記録をもとに書面にして渡します。
苦情があったこと自体より、それが民泊をやめれば止むものか、家の場所や建物から来るものかが、買主の判断を分けます。
続けるかやめるかを苦情以外の材料も含めて決めたいときは、民泊のやめどきはいつ?が参考になります。
管理業者の報告書と、自分のメモをそろえる
住宅宿泊管理業者には、家主に業務の報告書を渡す義務があります(第40条)。
国土交通省の施行規則の第21条は、その記載事項に「周辺地域の住民からの苦情の発生状況」を入れています。
報告は家主の事業年度が終わるごとと、委託契約の期間が満了したときです。
この報告書が、売るときに苦情の経緯を説明するいちばん確かな資料になります。
家主が自分で受けた苦情も、日付・相手・内容・どう対応したかを1行ずつ残しておけば、あとで思い出す手間がなくなります。
記録がないと、売るときに「たしか何回か言われた」という曖昧な説明しかできません。
物件状況報告書に、苦情の中身と今の状態を書く
売るときは、売主が家の状態を書く物件状況報告書(告知書)に、近所との関係も書き込みます。
ごみや夜の音のように、民泊をやめた時点で止んだ苦情なら、その時期と、やめてからは来ていないことを書きます。
苦情のほかに書いておく設備や届出の履歴は、民泊に使っていた家の売却と告知に並べました。
近所の人との関係がこじれて今も続いているなら、それは住まいとして買う人にも関わる話です。
隠して売ると、引き渡しのあとで買主から責任を問われるおそれがあります。
近所との問題をどこまで伝えるかの考え方は、近隣トラブルは告知が必要?で書きました。
民泊を運営したまま次の持ち主へ引き継ぐ場合は、苦情の窓口や近所との約束も一緒に引き継ぐことになります(民泊を運営したまま売るには)。
民泊を続けるか売るか迷ったら、どこに相談できる?
苦情への備えを固めて続けるか、やめて売るかを決めきれない段階でも、当社の15分無料相談で受け付けています。
当社がお手伝いできるのは、売った場合と持ち続けた場合を並べて比べるところです。
売る場合の買主は、住まいとして買う人だけではありません。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊などに使いたい買主や賃貸用に買う人が、条件に合えば検討する場合があります。
苦情の記録と、近所との取り決めを書面に残しておけば、どの買主にも家の状態を説明しやすくなります。
民泊にすれば高く売れるという話ではないため、住まいとして売る場合と並べて考えてください。
民泊で運用する道と、売る場合との比べ方は、民泊で運用する(福岡市)にまとめました。
迷っている段階のご相談は15分無料相談へどうぞ。
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