民泊のやめどきはいつ?続けるか売るかを決める5つの材料
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士民泊を続けるか、やめて売るか。
この迷いに「売上がこれを下回ったらやめる」という線を引きたくなりますが、この記事ではその線を出しません。
売上は季節や周りの宿の数で動き、来年の数字は誰にも約束できないからです。
代わりに、手間・修繕・近所・制度の変更・相続の5つを、いまと5年後で確かめる形にしました。
この記事は、福岡市で民泊を運営しているオーナーが「続ける」「やめて売る」「運営したまま売る」のどれを選ぶかを決めるための材料です。
民泊の制度そのもの(届出と許可の違い、年180日の上限など)は、空き家を民泊にするにはで説明しました。
やめると決めたあとの手順は民泊をやめて家を売る手順にまとめてあるので、ここでは「決める前」に絞ります。
2. 民泊の手間は、運営を任せていてもオーナーに残る?
3. 修繕や設備の更新は、続けるかどうかにどう響く?
4. 近所から苦情が出たら、民泊はやめるべき?
5. 制度の変更や相続は、やめどきにどう関わる?
6. やめると決めたら何から始める?続けたい場合は?
民泊のやめどきは、何で判断すればよい?
民泊のやめどきは、売上の数字よりも、手間・修繕・近所・制度の変更・相続の5つが「5年後も同じ形で続けられるか」で判断します。
5つのうち1つでも「5年後は無理だ」と分かれば、そこが比べ始める時期です。
比べ始めるのと、やめるのは別の話になります。
売った場合にいくら手元に残るかを先に知っておけば、続けると決めた場合も、根拠を持って続けられます。
5つの材料を1枚の表にする
5つの材料と、それぞれで確かめることを並べると、次のとおりです。
| 材料 | 確かめること | 比べ始める合図 |
|---|---|---|
| 手間 | 報告・納税・苦情の対応を、5年後も誰が担うか | 担う人が決まらない |
| 修繕 | 大きな修繕や設備の更新が、いつ来るか | 見積もりが出た |
| 近所 | 同じ苦情が繰り返されていないか | 改善の指導を受けた |
| 制度の変更 | 始めたときの前提が、いまも同じか | 新しい手続きや制限が加わった |
| 相続 | 名義人に何かあったとき、誰が続けるか | 家族の中で引き継ぐ人がいない |
表の右の列は、どれも金額ではありません。
金額の線を引くと、その線を少し上回った月に判断が先送りされ、手間や修繕の問題が積み上がっていくためです。
次の章からは、5つを1つずつ見ていきましょう。
民泊の手間は、運営を任せていてもオーナーに残る?
残ります。
清掃や鍵の受け渡しを管理業者に任せていても、県への定期報告、宿泊税の申告、近所からの苦情への責任は、届出をしたオーナーに残ります。
運営代行に任せられる範囲と残る仕事の線引きは、民泊の運営代行とはで詳しく書きました。
ここでは、その残る仕事を「5年後も続けられるか」の目で見直します。
年6回の定期報告と、毎月の宿泊税
届出の民泊では、偶数月の15日までに、前の2か月に泊めた日数や宿泊者数を報告します。
2月・4月・6月・8月・10月・12月の年6回で、ひと月おきに締め切りが来る計算です。
福岡県では、福岡市内の家も含めて、県内全域の届出を県の生活衛生課が受け付けています。
一方で宿泊税は福岡市と福岡県の税で、福岡市の案内では、申告と納入は毎月行うのが原則です。
要件を満たして承認を受ければ、3か月分をまとめて年4回(6月末・9月末・12月末・3月末)にできます。
つまり報告は県へ年6回、宿泊税は年12回か4回と、窓口も周期も違う締め切りを並行して抱えることになります。
手間は「誰が5年後も担えるか」で数える
いまは自分で回せている作業でも、5年後に同じ形で回せるとは限りません。
確かめるのは、次の3つです。
- 締め切りの管理と申告を、いまは誰がしているか(自分か、家族か、委託先か)
- その人が体調を崩したり、県外へ移ったりしたときに、代わりがいるか
- 苦情の連絡が深夜に入ったとき、最後に判断する人は誰か
3つ目が埋まらない場合は、続ける前提が崩れかけています。
福岡県のページは、苦情には深夜早朝を問わず対応し、宿泊者がいない間も対応するよう求めているからです。
答えがすべて「自分」なら、自分が動けなくなった日に運営が止まるということでもあります。
修繕や設備の更新は、続けるかどうかにどう響く?
修繕は、続けるかどうかを比べ直すいちばん分かりやすい合図です。
大きな修繕の見積もりが出た時点で、「直して続ける」「直さずに売る」「直してから売る」の3つを並べると、その後の数年の負担が見えてきます。
民泊は泊まる人が毎回入れ替わるため、家具や寝具、水回りの消耗は、家族だけで住むより早く進みます。
それに加えて、住まいには無い点検が続くことも忘れてはいけません。
消防設備の点検と報告が続く
福岡市消防局は、住宅や共同住宅を民泊に使う場合、多くは新しい消防用設備等の設置が要ると案内しています。
届出の民泊では、区の消防署が出す「消防法令適合通知書」を福岡県への届出に添えて始めたはずです。
付けた設備は、付けて終わりではありません。
福岡市消防局の案内では、消防用設備等の機器点検は6か月に1回以上、総合点検は1年に1回以上です。
結果の報告は、ホテルや飲食店など不特定多数が使う建物で1年に1回、共同住宅や事務所などで3年に1回と分かれています。
民泊に使っている家がどちらの扱いになるかは、管轄の区の消防署で確かめてください。
点検を業者に頼んでいるなら、その費用は民泊を続ける限り毎年かかる固定の支出として数えます。
大きな修繕の見積もりが出たら、査定と並べる
屋根や外壁、給湯器、エアコンの入れ替えといった大きな出費は、まとまって来ることがあります。
見積もりを受け取ったら、その金額だけで決めずに、同じ時期に査定を取って横に並べてください。
並べるのは、修繕して続けた場合と、修繕せずに今の状態で売った場合の、手元に残るお金の違いです。
修繕しても売値に同じ額が上乗せされるとは限らないため、「直してから売る」が得かどうかも、この比較で分かります。
古い家を解体せずに売る道は、古くて売れない実家を民泊の買主へで書きました。
近所から苦情が出たら、民泊はやめるべき?
苦情が1回出ただけで、やめる必要はありません。
分かれ目は、同じ苦情が繰り返されるか、県から業務の改善を求められたかです。
苦情を誰がどこで受けるかと、続いたときの県の命令の段階は民泊の近隣トラブルにまとめています。
住宅宿泊事業法の第10条は、近所の住民からの苦情や問い合わせに「適切かつ迅速に」対応することを、届出をした事業者に求めています。
苦情への向き合い方を誤ると、続けるかやめるかを自分で選べなくなることさえあるのです。
苦情を記録して、同じ内容が続くかを見る
苦情が入ったら、日時・内容・連絡してきた人・どう対応したかを残しておきます。
騒音、ごみの出し方、玄関前での話し声など、内容ごとに分けておくと、繰り返しかどうかが一目で分かります。
同じ内容が繰り返されるなら、宿泊者への案内や間取りの使い方では解決しにくい、家と場所の相性の問題かもしれません。
その記録は、売ることになったときに買主へ伝える内容を整理する材料にもなります。
改善命令や廃止命令まで進むと、選べる道が狭まる
住宅宿泊事業法には、段階を踏んだ監督の仕組みがあります。
まず県知事が業務の改善を命じ(第15条)、命令や法令に違反すれば1年以内の業務停止を命じることができます(第16条第1項)。
それでも監督の目的が達せられないときは、住宅宿泊事業の廃止を命じることができます(第16条第2項)。
廃止を命じられた人は、その命令の日から3年を経過するまで、住宅宿泊事業を営めません(第4条)。
自分からやめた場合は、この3年の制限はかかりません。
苦情が続いて指導を受けた段階は、自分の判断でやめ方を選べる最後の時期と考えて、比べ始めてください。
制度の変更や相続は、やめどきにどう関わる?
どちらも「始めたときの前提」を、オーナーの意思と関係なく変えてしまう材料です。
制度の変更は手間と費用を増やし、相続は「誰が続けるのか」という問いを家族に残します。
そして税金の期限は、迷っている間にも進みます。
制度は、始めたときのままとは限らない
福岡市の宿泊税は、令和2年4月1日に始まった税です。
それより前に民泊を始めた人にとっては、運営の途中で毎月の申告が加わったことになります。
住宅宿泊事業法の附則にあるのは、施行後3年を経過した場合に施行の状況を検討し、必要なら措置を講じるという定めです。
本則の第18条は、都道府県などが条例で区域を定めて、民泊を営める期間を制限できるという規定です。
令和8年2月の県の手引きには、区域や期間を制限する条例の記載はありません。
最新の扱いは、県の生活衛生課(092-643-3279)に問い合わせて確かめてください。
分譲マンションの一室なら、管理組合の総会で管理規約が変われば、続けられなくなることもあるでしょう。
どれも先の時期は読めないので、「変わったら考える」ではなく、年に1回、県・市・管理組合の案内を見直す日を決めておくと判断が遅れません。
名義人が亡くなると、届出は引き継がれない
住宅宿泊事業法の第3条第6項は、届出をした人が亡くなったとき、相続人がその事実を知った日から30日以内に県へ届け出ることを定めています。
この法律には、届出を相続人が引き継ぐ定めがありません。
相続人が民泊を続けたいなら、相続人の名前で、届出を新しく出し直す形です。
家の名義も、2024年4月から義務になった相続登記で、相続人に移さなければなりません。
相続人が複数いて家を共有にすると、続けるか売るかを全員で決めることになります。
話がまとまらないまま、宿泊の予約だけが入っている、という状態も起こりえます。
オーナーが元気なうちに「自分に何かあったら、この家はどうするか」を家族と決めておけば、相続人が30日の期限の中で慌てずに済むはずです。
税金の期限が、先に来ることがある
もともと自分が住んでいた家を民泊にしたなら、売るときにマイホームの3,000万円控除が使える期限があります。
国税庁は、以前住んでいた家は「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります」としています。
民泊を続けるか迷っているうちにこの日を越えると、控除が使えなくなる点に気をつけてください。
親から相続した空き家を民泊にした場合は、事情が違います。
相続した空き家の控除は、相続の時から売る時まで事業や貸付けに使っていないことが条件なので、民泊を始めた時点で外れます。
民泊に使った家の税金の細かい扱いは、民泊に使った家を売るときの税金にまとめました。
実際の税額や、どちらが有利かは、手元の資料を持って税理士に確かめてください。
やめると決めたら何から始める?続けたい場合は?
やめると決めたら、届出より先に査定を取り、「売った場合に手元に残るお金」を確かめてから動きます。
続けたい場合も、同じ査定が「いつでも売れる家かどうか」を知る材料になります。
どちらに決めても、最初の一歩は同じです。
やめる前に、売り方ごとの見え方を確かめる
民泊に使ってきた家は、住まいとして売る、民泊の買主も含めて探す、運営したまま引き継いで売る、の3通りで見え方が変わります。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊の買主が条件に合えば検討する場合があります。
ただし、民泊の買主も含めて探すのは候補を広げるための方法で、民泊にすれば売れるという話ではありません。
実際に買うのが、賃貸用や住まいとして使う人になることも十分にあります。
運営をやめずに引き継いで売る方法と、引き継げるもの・引き継げないものは、民泊を運営したまま売るにはで書きました。
やめて売ると決めたら、予約の止め方から届出の期限までを民泊をやめて家を売る手順の順番で進めてください。
民泊での運用と売却の比べ方は、民泊で運用する(福岡市)のページにまとめています。
売らずに続けたいときの相談先
5つの材料を見直して、まだ続けられると判断したなら、それも一つの答えです。
その場合も、手間を誰が担うか、相続のときにどうするかは、家族と書き残しておいてください。
民泊で持ち続けるか迷っている段階なら、15分無料相談で、続ける場合と売る場合の考え方を整理するお手伝いをします。
売った場合の金額を先に知りたい方は、無料査定からご依頼ください。
運営中の家でも、売り方ごとの目安をお出しします。

