民泊に使った家を売るときの税金|3,000万円控除と取得費
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士自宅の一部を民泊で貸した家や、引っ越したあとに民泊に使った家を売るとき、税金の計算は普通の自宅と少し変わります。
変わるのは、マイホームの3,000万円控除が使える範囲、建物の取得費の出し方、消費税の3つです。
この記事は、福岡市で民泊に使った家を売ろうとしている方が、税理士に何を聞けばよいかを整理するために書きました。
個別の税額や、どの特例が有利かの判断は税理士の仕事なので、ここでは国税庁が公表している考え方の範囲にとどめます。
民泊を始めるときの届出や年180日の上限は、空き家を民泊にするにはにまとめてあります。
2. 住みながら一部で民泊をした家に、3,000万円控除は使える?
3. 引っ越したあとに民泊にした家は、3,000万円控除の対象になる?
4. 民泊に使った家は、売るときの取得費が小さくなる?
5. 民泊に使った家を売ると、消費税はかかる?
6. 売る前に、何をそろえて誰に相談すればよい?
民泊に使った家を売ると、税金の計算はどこが変わる?
税金の式と税率は普通の自宅と同じで、変わるのは「どの部分を、いつ民泊に使ったか」によって控除の範囲と取得費が変わる点です。
まず共通の土台を確かめてから、民泊ならではの違いに進みます。
譲渡所得の式と税率は、自宅と変わらない
家を売ったときの税金は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた「譲渡所得」にかかります。
取得費は買ったときの代金など、譲渡費用は仲介手数料など売るためにかかった費用のことです。
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期で20.315%、5年以下なら短期で39.63%。
同じ1,000万円の譲渡所得でも、長期なら約203万円、短期なら約396万円と2倍近く開きます。
短期と長期の数え方は、譲渡所得税の短期と長期の違いで詳しく書きました。
民泊の使い方で4つの型に分かれる
民泊に使った家といっても、使い方によって税金の扱いが違います。
| 使い方 | 3,000万円控除 | この記事の章 |
|---|---|---|
| 住みながら一部の部屋で民泊(家主居住型) | 住まいの部分だけが対象 | 2つ目 |
| 引っ越したあとに家全体で民泊 | 3年目の年末までに売れば原則対象 | 3つ目 |
| 相続した空き家で民泊 | 空き家の控除から外れる | 3つ目(要点のみ) |
| 初めから民泊用に買った家 | 対象外(住まいではない) | 4つ目・5つ目 |
どの型でも共通して関わるのが、4つ目の章の減価償却です。
住みながら一部で民泊をした家に、3,000万円控除は使える?
使えますが、原則として対象になるのは住まいとして使っていた部分だけで、民泊に使った部分は控除の外になります。
根拠は、住宅宿泊事業法が施行された2018年に国税庁が出した、民泊の税金のFAQです。
国税庁のFAQに書いてあること
FAQの6問目は、住まいを使って民泊をしている家を売った場合の3,000万円控除を扱っています。
今も住んでいる家を売るなら、原則として控除は受けられるという答えです。
ただし家の中に住まい以外に使っている部分があれば、控除の対象は住まいの部分に限られます。
住まいに使っているかどうかは、家の構造や設備、実際の使い方を合わせて判断するとされています。
このFAQは平成30年4月1日現在の法令で作られているので、売る年の扱いは税理士か税務署に確かめてください。
住まいの部分の割合と、90%の目安
住まいの部分の面積は、店舗併用住宅と同じ考え方で出します。
住まい専用の床面積に、台所や廊下のような共用部分のうち住まいの割合に応じた面積を足したものです。
敷地も、家の床面積のうち住まいが占める割合で分けます。
住まいの部分が全体のおおむね90%以上なら、家全体を住まいとして控除を受けられます。
床面積100㎡の家で、民泊専用の部屋が20㎡なら、住まいの割合は80%です。
90%に届かないので、控除の対象は住まいの8割の部分に限られます。
仮に家全体の譲渡所得が2,000万円で、ごく大まかに面積の割合で分けると、住まいの部分は1,600万円で控除により0円。
民泊の部分の400万円には控除が使えず、長期の20.315%なら約81万円の税金になる計算です。
家全体が住まいだった場合は0円なので、民泊の部屋の分だけ税金が残ることになります。
実際には、取得費の出し方が部分ごとに違うため、この割り算どおりにはなりません。
引っ越したあとに民泊にした家は、3,000万円控除の対象になる?
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、民泊に使っていても原則として控除の対象になります。
国税庁のFAQは、住まなくなったあとの家の使い方は関係ないと書いています。
期限は「住まなくなった日」から数える
たとえば2024年6月に引っ越したなら、3年を経過する日は2027年6月で、その年の12月31日が期限です。
民泊を始めた日や、民泊をやめた日から数えるのではありません。
民泊を続けるか迷っているうちにこの日を越えると、家全体が控除の外になります。
譲渡所得が2,000万円なら、長期でも約406万円の差になる計算です。
この控除には、親子や夫婦など特別な関係の人に売った場合は使えない、前年・前々年に同じ控除を使っていないといった条件もあります。
住まなくなった日がいつかは、住民票を移した日や公共料金の記録で確かめられます。
相続した空き家で民泊をした場合は、別の控除が外れる
親から相続した空き家を売るときに使う控除は、マイホームの控除とは別の「被相続人の居住用財産の特例」です。
こちらは相続の時から売る時まで、事業や貸付けに使っていないことが条件なので、民泊を始めた時点で外れます。
要件と期限の全体は、空き家を民泊にするにはの後半と空き家3,000万円控除の期限に書きました。
民泊に使った家は、売るときの取得費が小さくなる?
多くの場合、小さくなります。
民泊に使った部分と期間は、実際の減価償却費を取得費から差し引くため、住まいとして使っていた場合より建物の取得費が早く減るからです。
取得費が減れば、そのぶん譲渡所得が増えて税金も増えます。
民泊の所得は原則「雑所得」、事業なら「事業所得」
国税庁のFAQでは、自分が住む家で民泊をして得た所得は、原則として雑所得に区分されます。
宿泊料には部屋代のほか、寝具やクリーニング、光熱費、清掃などの対価が含まれ、普通の家賃とは性質が違うためです。
民泊の所得で生計を立てているなど、事業として行っていることが明らかなら事業所得。
賃貸業をしている人が、入居者の入れ替わりの間だけ一時的に民泊をした場合は、不動産所得に含めてもよいとされています。
どの区分でも、民泊に使った部分の減価償却費は必要経費に入れられるという点は同じです。
住まいと民泊の両方に使う家では、届出書に書いた床面積の割合や、民泊を行っていた日数・月数で分けて計算します。
このFAQは届出の民泊について書かれたもので、旅館業の許可を受けて営んだ場合の区分は税理士に確かめてください。
住まいの期間は1.5倍の年数、民泊の期間は実際の償却で引く
建物の取得費は、買った代金から、持っていた間の減価償却費に当たる額を差し引いて出します。
住まいとして使っていた期間は、耐用年数を1.5倍にした年数でゆっくり差し引きます。
木造なら償却率0.031に0.9を掛けるので、1年に減るのは取得価額の約2.8%です。
民泊など業務に使った期間は、毎年の実際の減価償却費の合計を差し引き、木造の償却率は0.046になります。
1,800万円で建てた木造の家全体で比べると、住まいなら1年に約50万円、業務用なら約83万円ずつ取得費が減る計算です。
家の一部だけで民泊をしたなら、この差はその部分の割合に縮みます。
見落とされやすいのは、毎年の申告で減価償却費を経費にしていなかった場合です。
国税庁は、経費にしていない部分があっても、毎年の減価償却費の合計を差し引くことは変わらないとしています。
民泊の申告をしていなくても、売るときの取得費は「償却したもの」として小さくなるということです。
賃貸用の建物で同じことが起きる仕組みは、一棟アパート・ビル売却の税金で計算例つきで書きました。
民泊に使った家を売ると、消費税はかかる?
消費税の免税事業者なら納める消費税はなく、課税事業者なら民泊に使っていた建物の部分の売却代金が課税の対象になりえます。
土地の売却は、もともと消費税がかかりません。
課税事業者かどうかの見分け方
民泊の宿泊料は、ホテルや旅館と同じく消費税の課税対象です。
普通の家賃が非課税なのとは扱いが逆になります。
個人の場合、前々年の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として消費税の納税義務は免除されます。
前年1月から6月の課税売上高と給与の支払額がどちらも1,000万円を超えた場合や、インボイスの登録を受けている場合は、免除されません。
インボイスの登録をしている方は、民泊の売上が少なくても課税事業者にあたります。
家の一部だけ民泊に使っていた場合
個人事業者が、事業と家庭の両方に使っていた資産を売ったときは、売却代金を事業の部分と家庭の部分に合理的に分けます。
消費税の対象になるのは、事業の部分の代金だけです。
売買契約書で土地と建物の代金をどう分けるかによって消費税の額が動くので、契約の前に税理士に見てもらってください。
土地と建物の按分の方法は、収益物件の売却と消費税に計算例があります。
売る前に、何をそろえて誰に相談すればよい?
民泊に使った面積・期間・申告の記録をそろえて税額は税理士に、いくらで売れるかは不動産会社に聞くのが近道です。
この2つがそろうと、売った場合の手取りが見えてきます。
福岡市の家なら、民泊の記録は県と市に残っている
福岡市内の家でも、届出の民泊の届出先は福岡県です。
届出書の控えには、民泊に使う部分の床面積が書いてあり、国税庁のFAQが按分の例に挙げている数字そのものです。
県への定期報告は偶数月の15日までに、前の2か月に泊めた日数を出すものなので、民泊をしていた期間の記録になります。
福岡市の宿泊税は、泊まった人がいない月も0円で毎月申告するため、市に出した申告書も期間の裏付けに使えます。
これに加えて、毎年の確定申告書の控えと、家を買ったときの契約書をそろえてください。
買ったときの契約書が無ければ、取得費は売却価格の5%とみなす扱いになり、譲渡所得が大きく出ます。
代わりになる資料の探し方は、取得費が不明な実家の売却に書きました。
手取りの試算と、売るか続けるかの相談
当社の手取りの試算は、住まいとして使ってきた家を前提にした道具です。
民泊に使った部分の控除の外れ方や、業務用の減価償却は織り込んでいないので、民泊に使った家にはそのまま使えません。
結果は「家全体が住まいだった場合」の目安として見て、差額は税理士に出してもらってください。
民泊をやめて普通の賃貸に切り替えた場合に売るときの税金は、空き家を貸す前に決めることで扱っています。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊の買主が条件に合えば検討する場合があります。
いくらで売れるかを先に知りたい方は、無料査定をご利用ください。
民泊で運用する道と、売る場合との比べ方は、民泊で運用する(福岡市)のページにまとめました。
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