相続登記と売却は同時に進められる?順番と期間の目安
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士相続した実家を早く売りたいのに、名義がまだ亡くなった親のままという方に向けた記事です。
結論からいうと、査定・媒介契約・売り出し・買主探しは、相続登記と並行して進められます。
登記が終わっていないために止まるのは、売買契約と決済の2か所だけ。
「登記が終わってから不動産会社に相談しよう」と待つと、その数週間がそのまま売却の遅れになります。
この記事で順に書くのは、段階ごとの可否、売買契約の前に遺産分割を終える理由、期間の確かめ方、決済当日の登記の動きの4つ。
2. 売買契約の前に、遺産分割を終える理由は何ですか
3. 相続登記にかかる期間は、どこで確かめられますか
4. 決済日に、登記はどう動きますか
5. 相続登記の義務と、売る時期の関係はどうなりますか
6. 福岡市で同時に進めるとき、当社がしていること
相続登記と売却は、同時に進められますか?
進められます。
買主へ所有権を移す前までに登記が済んでいれば、それより手前の作業は並行して構いません。
不動産会社に相談できるのは、名義を直したあとではなく、相続があったと分かった時点です。
段階ごとの、登記前にできること・できないこと
| 段階 | 登記前 | 理由 |
|---|---|---|
| 査定 | できる | 所有者でなくても建物と土地は調べられる |
| 媒介契約 | できる | 相続人全員が売主として依頼する形にする |
| 売り出し・内覧 | できる | 登記の見込みを買主へ説明したうえで進める |
| 売買契約 | 遺産分割が先 | 誰が売主かが確定していないと結べない |
| 決済・引渡し | できない | 相続人名義にしてから買主へ移す |
つまり、登記は「売却の入口」ではなく「出口の条件」です。
売り出し中に登記を仕上げておけば、買主が決まってから待たせずに済みます。
登記の途中であることを、買主にどう伝えるか
名義がまだ親のままという事実は、隠さずに買主へ伝えます。
買主が気にするのは、引渡しの日に確実に自分の名義になるかどうかの1点だけ。
司法書士が入って決済日までに登記を終える段取りを示せば、それで話は進むはずです。
伝えずに進めて契約の直前に分かるほうが、買主の不信を招く結果になります。
当社は売り出しの資料に、登記の予定を書き添える形にしてあります。
どの時点で名義が移るかが読めれば、買主は安心して申し込みを入れられるためです。
登記前に媒介契約を結ぶとき、決めておくこと
媒介契約は不動産会社に売却を依頼する契約で、相続人全員が依頼者になる形にします。
登記が終わっていない段階でも結べますが、決済までに名義を直す前提は書面で共有しておいてください。
遺産分割の話し合いが長引きそうなときは、期間の短い契約から始める選び方もあります。
3種類の違いの比べ方は媒介契約の種類と媒介契約は物件の条件で選ぶをご覧ください。
なぜ決済の前に相続登記が必要なのか
亡くなった方の名義から買主へ、所有権を直接移すことはできません。
いったん相続人の名義にしてから、買主へ移すという2段階になります。
この順番は飛ばせないので、決済日までに相続登記が終わっていることが条件。
登記をせずに売却活動を始める場合の注意点は、相続登記していない家は売れる?にまとめています。
売買契約の前に、遺産分割を終える理由は何ですか
誰が売主になるかが決まっていないと、買主と約束を交わせないからです。
相続人が複数いる不動産は、遺産分割が終わるまで全員の共有という扱いになります。
相続人が複数なら、売主は全員になる
共有のまま売るなら、売買契約書に相続人全員が署名・押印します。
1人でも「売らない」という方がいれば、その不動産は売れません。
査定だけなら全員の同意がなくても頼めるので、話し合いの材料として先に取っておく方が進みます。
話がまとまらないときは、換価分割という形がある
換価分割は、不動産を売って現金に換えてから、その代金を相続人で分ける方法です。
「誰が家をもらうか」で止まっている場合、売って分けると決めたほうが結論が出やすくなります。
どうしても反対する方がいるときの最後の手段が共有物分割請求で、その流れは共有物分割請求とは?をご覧ください。
共有名義の整理そのものは、共有名義の不動産売却でご案内しています。
遺産分割協議書に、売ることまで書いておく
換価分割で進めるなら、協議書に「売却して代金を分ける」ことと、分ける割合を書きます。
名義を代表者1人に寄せる書き方もできますが、その場合は売却代金の分配も協議書で明らかにしてください。
この1枚が、相続登記と売買契約の両方で使う書類になります。
書き方で迷ったときは、登記を頼む司法書士に文案を確かめてもらう順番が安全です。
全員が窓口に来られないときの進め方
相続人が県外や海外にいる場合、代表の1人が窓口になり、他の方からは委任状をもらう形が取れます。
遠方の相続人がいるからといって、売却ができなくなるわけではありません。
当社は遠方からの売却でこの形に対応しています。
相続登記にかかる期間は、どこで確かめられますか
法務局が各庁別の「登記完了予定日」を公表しているため、申請日から完了日を自分で確かめられる形になっています。
この予定日は申請の混み具合で動くため、目安を人から聞くより、公表されている日付を見るほうが正確です。
福岡法務局の登記完了予定日で見る
福岡法務局のページには、申請した日ごとの完了予定日が庁別に並んでいます。
福岡市の不動産登記を扱う庁は2つで、東区・博多区・中央区・南区は本局、早良区・城南区・西区は西新出張所です。
実家が早良区なら、本局ではなく西新出張所の予定日を見ることになります。
管轄と窓口の分かれ方は相続登記の期限はいつ?で詳しく書きました。
期間を決めるのは、登記そのものより書類集め
申請してからの日数より、戸籍や遺産分割協議書をそろえる時間のほうが長くかかります。
助けになるのが、2024年3月に始まった戸籍の広域交付。
本籍地以外の市区町村の窓口でも、複数の戸籍をまとめて請求できる仕組みです。
福岡市内に住んでいれば、親の本籍が県外でも、お住まいの区の区役所で請求できる形です。
ただし請求できるのは本人・配偶者・直系の親族だけで、郵送と代理人による請求は認められていません。
窓口では顔写真付きの身分証明書の提示が要るので、運転免許証かマイナンバーカードを持って行ってください。
必要書類の全体像は相続した不動産の売却の必要書類と売却に必要な書類にまとめてあります。
登録免許税は、評価額から計算する
相続登記のときに納めるのが登録免許税で、税額は不動産の価額の1000分の4です。
この「価額」は売れる値段ではなく、固定資産税の評価額から計算します。
土地と建物の評価額の合計が1,000万円なら、登録免許税は4万円。
売却価格が2,000万円の実家であれば、登記のために先に出すお金は、仲介手数料よりずっと小さい額になります。
だから、区役所で固定資産評価証明書を取る段階で、おおよその金額が分かります。
司法書士へ相談する時期
買主が決まってからではなく、売り出しを始める前に相談しておくほうが安全です。
相続人の人数や、過去の相続が1つ飛んでいるかどうかで、必要な戸籍の数が変わります。
登記の代理は司法書士の仕事なので、当社は連携している司法書士へおつなぎする形。
決済日に、登記はどう動きますか
決済日には、相続登記と買主への所有権移転を続けて申請します。
司法書士が当日に書類をそろえ、同じ日の申請として法務局へ出す進め方です。
決済当日のお金と書類の順番
当日は買主の残代金の入金を確認してから、売主側の手続きが動きます。
- 買主から残代金が入金される
- 親のローンが残っていれば完済し、抵当権抹消の書類を受け取る
- 司法書士が相続登記と所有権移転を申請する
- 固定資産税の精算をして、鍵を渡す
抵当権抹消にかかる費用は1〜2万円台で、売却代金から見ればごく小さい部分。
当日の流れ全体は売却の流れでご確認ください。
売却代金の受け取りと、翌年の申告
換価分割で売った場合、代金は決済日に相続人へ分けるか、代表者が受け取って後から分けます。
どちらの形でも、譲渡所得の確定申告は相続人それぞれが持分に応じて行います。
1人がまとめて申告する形にはならないので、決済が終わったら各自の資料を分けて保管してください。
相続税を納めた方なら、相続開始から3年10か月以内の売却で取得費加算の特例を使えます。
この期限から売り出し時期を逆算する考え方は取得費加算の3年10か月を逆算に書いています。
登記が間に合わないと、決済日が動く
戸籍が1通足りないだけでも、その日の申請ができません。
買主の住宅ローンには融資の承認期限があるので、決済が延びると買主側の条件も組み直しに。
だからこそ、当社は売り出しの段階から登記の準備を並行させる順番でご案内しています。
相続登記の義務と、売る時期の関係はどうなりますか
売る予定があるかどうかに関係なく、相続登記の申請義務は進みます。
2024年4月から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したと知った日から3年以内の申請が必要です。
売却が決まっていなくても、期限は来る
買主がまだ見つかっていない段階でも、3年の期限はそのまま数えられます。
「売れたときに名義を直せばよい」という考え方は、義務化の後では通りません。
期限の数え方と、間に合わないときの相続人申告登記は相続登記の期限はいつ?2027年3月31日の数え方をご覧ください。
売る前提なら、名義を誰にするかで手間が変わる
相続人全員の共有で登記すると、売買契約・決済・申告のすべてに全員が関わります。
代表者1人の名義に寄せると手続きは軽くなりますが、代金の分配を協議書で決めておく必要があります。
どちらが向くかは、相続人の人数と、県外に住んでいる方がいるかで変わる話。
当社は査定の段階で、この2つの進め方で何がどれだけ変わるかをお伝えしています。
福岡市で同時に進めるとき、当社がしていること
当社は、登記が済んでいない段階の相続不動産でも査定と売却活動をお引き受けしています。
登記の完了を待つ時間を、買主探しに使えるためです。
査定は、名義が親のままでも出せる
査定に要るのは所在地・面積・築年数・間取りで、名義が誰かは価格の計算に入りません。
当社は(公社)福岡県宅地建物取引業協会の会員として、国土交通省の取引価格情報と近隣の動きの両方を見てお伝えしています。
相続した不動産の売却についてのご案内は相続した不動産の売却にまとめました。
区ごとの相場を先に見たい方は福岡市の売却相場をご覧ください。
今日から動かせること
名義の手続きを待たずに、3つは今日から始められます。
- 相続人が何人いるかを紙に書き出す
- 区役所で戸籍と固定資産評価証明書の取得を始める(窓口は福岡市7区の手続き窓口)
- 売れる見込みを無料査定で確かめる
税額の個別の判断は税理士、登記の代理は司法書士の仕事なので、そこは連携している専門家へおつなぎします。
どの順番で動くか迷っている段階なら、15分無料相談で状況を聞かせてください。
