相続した不動産の売却の必要書類|戸籍は広域交付で1か所
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士相続した福岡市の家を売るとき、必要な書類は通常の売却より3種類ふえます。
亡くなった方の戸籍一式、相続人全員で作る遺産分割協議書、相続登記を終えたあとの登記事項証明書の3つです。
手間がかかるのは戸籍で、亡くなった方の出生から死亡までを、本籍地を移した回数だけ別々の市区町村に請求する必要がありました。
2024年3月1日に始まった「広域交付」で、いまは福岡市内の区役所の窓口1か所から、他の市区町村の戸籍もまとめて請求できます。
ただし福岡市の案内には、国のシステムとの通信状況によって後日のお渡しになる場合があると書かれています。
この記事で示すのは、相続人として福岡市の不動産を売ることになった方が、どの書類をどこで、どの順番で集めるかです。
名義変更そのものの期限と罰則は相続登記が義務化。3年の期限と罰則を解説にまとめているので、ここでは書類の集め方だけを扱います。
2. 戸籍はどこで集めますか?
3. 書類がそろうまで何日かかりますか?
4. 相続人が多いときは、どう段取りしますか?
5. 福岡市の不動産の相続登記は、どの法務局ですか?
6. 次に何をすればよいですか?
相続した家の売却では、通常の書類に何が加わりますか?
加わるのは、亡くなった方の戸籍一式、遺産分割協議書、相続登記のあとに取る登記事項証明書の3つです。
どれも「この不動産がいま誰のものか」を買主と買主側の金融機関に示すための書類です。
通常の売却書類がそろっていても、この3つが欠けていると契約まで進めません。
通常の売却で必ず要る7点
相続かどうかに関係なく、不動産を売るときに必須なのは次の7点です。
- 登記識別情報通知(いわゆる権利証)
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
- 認印
- 固定資産評価証明書
- 売却代金の振込先口座
このほか、物件の種類やご事情によって足りるものが変わります。
マンションなら管理規約と長期修繕計画、土地なら測量図が加わる、というように物件側の事情で動く部分です。
必須/あった方がよい/状況に応じて の3段階に分けた一覧は売却に必要な書類のページにあります。
相続で加わる3つの書類
相続した不動産では、上の7点に次の3つが加わります。
| 書類 | どこで取るか | 福岡市の手数料 |
|---|---|---|
| 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍・除籍 | 区役所市民課(広域交付) | 戸籍450円/除籍・改製原戸籍750円 |
| 相続人全員の戸籍と印鑑証明書 | 各相続人の本籍地と住所地 | 戸籍450円 |
| 遺産分割協議書(相続人が複数のとき) | 相続人が作る | 作成の手数料はなし |
相続登記が終わったあとに法務局で取るのが、名義が相続人に変わった登記事項証明書です。
買主側の金融機関は、この新しい登記事項証明書で名義を確かめてから融資を実行します。
戸籍の通数を決めるのは、本籍地を移した回数です。
生まれてから一度も本籍を動かしていない方なら1〜2通、結婚と転居で3回動いている方なら4通前後になります。
名義が故人のままでは売れない
亡くなった方の名義のままでは、売買契約を結んでも引き渡しができません。
登記を動かせるのは名義人本人だけで、故人は手続きの当事者になれないからです。
そのため段取りは「相続登記を終える → 売り出す」の順になります。
ただし、相続登記と売却の準備は並行して進められます。
登記が終わるのを待ってから査定を頼む必要はありません。
当社が相続した不動産の売却をお手伝いするときは、提携する司法書士が登記を進めるあいだに、価格の調査と買主の反応を見る作業を同時に進めています。
名義変更が長く止まっている場合の進め方は相続登記していない家は売れる?義務化後の段取りに書きました。
戸籍はどこで集めますか?
福岡市にお住まいなら、お住まいの区の区役所市民課の窓口1か所で、他の市区町村の戸籍もまとめて請求できます。
これが2024年3月1日に始まった広域交付で、亡くなった方の本籍地が福岡県外にあっても同じです。
請求できるのは本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られます。
兄弟姉妹やおじ・おばの戸籍は、この仕組みでは取れません。
亡くなった方に子がおらず、兄弟姉妹が相続人になる家では、ここで1段つまずきます。
福岡市で広域交付を受け付けている窓口
申請できるのは、市内7区の区役所市民課と、入部出張所・西部出張所です。
天神・博多駅・千早の証明サービスコーナーでは、広域交付を受け付けていません。
受付時間は平日の8時45分から17時15分までで、年末年始とシステムの停止期間は除かれます。
仕事帰りに博多駅の証明サービスコーナーへ寄る段取りを組むと、受け取れずに出直しです。
区役所と出張所の場所は福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめてあります。
広域交付で取れない戸籍がある
コンピュータ化されていない戸籍と除籍は、広域交付の対象から外れます。
対象外のものは、これまでと同じく本籍地の市区町村への請求です。
一部事項証明書と個人事項証明書も、広域交付では出せません。
どの戸籍が対象外かは、請求してみるまで分かりません。
古い本籍地が町村合併で変わっている家では、1か所で全部そろわない前提で日程を組んでください。
郵送と代理人は使えない
広域交付は、請求する人が窓口へ出向く方法だけです。
郵送での請求と、委任状を持った代理人による請求は認められていません。
窓口では、マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど、官公署が発行した顔写真付きの本人確認書類が要ります。
健康保険の資格確認書や年金手帳は、広域交付では使えません。
顔写真付きのものをお持ちでない場合は、本籍地へ郵送で請求する従来の方法に切り替えます。
同じ仕組みは逆向きにも働き、福岡を離れて暮らす相続人が、自分の住む市区町村の窓口から福岡の戸籍を請求することも可能です。
県外にお住まいのまま福岡の不動産を売る段取りは遠方から福岡の不動産を売却にまとめました。
書類がそろうまで何日かかりますか?
広域交付は即日とは限らず、福岡市は「窓口でお待ちいただいたり、後日のお渡しとなる」場合があると案内しています。
急ぐときは本籍地の市区町村へ直接請求するよう、同じページに書かれています。
決済日を先に決めてから戸籍を集め始めるのは、そのため危ない進め方です。
広域交付が即日にならない場合
即日にならない理由は、請求を受けた窓口が国の戸籍システムを通じて他の市区町村の戸籍を呼び出す仕組みにあります。
通信の状況が悪いと、その場では出せません。
家系図作成を目的とした請求は申請が集中していて、数週間以上かかる場合があるとも案内されています。
売却のために相続人を確定させたいだけなら、何代もさかのぼる必要はありません。
要るのは、亡くなった方の出生までの戸籍と、相続人全員の現在の戸籍です。
窓口で「相続登記に使います」と伝えると、必要な範囲で請求を組んでもらえます。
本籍地へ郵送で請求する場合
対象外の古い戸籍が出てきたときは、郵送請求になります。
郵送は、請求書と定額小為替を送り、先方が処理して返送するまでの往復が必要です。
1通ずつ順番に請求すると、本籍地を3回移している方では3往復ぶんの日数がかかります。
当社がお手伝いする場合、戸籍の取り寄せは提携する司法書士が代行します。
印鑑証明書は発行から3か月以内のものを使うので、戸籍より後に取ってください。
先に取ってしまうと、遺産分割協議がまとまるまでに期限が切れて、取り直しになります。
相続人が多いときは、どう段取りしますか?
先に決めるのは、相続人が何人いて、どこに住んでいるかの2つです。
相続人全員の戸籍と、遺産分割協議書に押す実印の印鑑証明書が必要になるからです。
人数が多い家では、書類集めよりも「連絡が取れるか」で日程が決まります。
法定相続情報一覧図の写しを使う
相続人が確定したら、法務局で法定相続情報一覧図の写しを取れます。
戸籍の束を提出すると、登記官が内容を確認して、相続人を一覧にした図に認証文を付けて返す仕組みです。
手数料は無料で、相続手続に必要な範囲で複数通を受け取れます。
同じ戸籍の束を求めてくる窓口は、相続登記だけではありません。
亡くなった方の預金を払い戻すときも、銀行が同じ束を見ます。
一覧図の写しがあれば、窓口ごとに戸籍一式を出し直さずに済みます。
申出先は、亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所です。
福岡市内の不動産を相続した方なら、不動産の所在地で申し出れば、そのまま相続登記の窓口と同じになります。
なお、一覧図の保管期間は5年間で、そのあいだなら写しの再交付も可能です。
換価分割なら代表者の名義にしてから売る
売って代金を分ける方法を換価分割と呼びます。
この場合は、代表者1人の名義に相続登記してから売却するのが通常の進め方です。
相続人全員の共有名義にすると、契約から決済まで全員の実印と来場が要るため、日程が合わなくなります。
当社が扱った山口県防府市の土地では、相続手続きで所有者を探し出すのに苦労し、最終的に12名のうち10名までしか集まりませんでした。
買主の住宅ローン審査が通らず、売主様のご意向で当社が買取をして売却を終えています。
人数が多い案件で先に効くのは、価格よりも、全員の同意がそろうかどうかです。
同意が得られない相続人がいるときの考え方は共有物分割請求とは?兄弟が反対する実家の売却と裁判例にあります。
共有のまま売る場合の段取りは共有名義の不動産売却にまとめました。
福岡市の不動産の相続登記は、どの法務局ですか?
福岡市内の不動産は、区によって福岡法務局の本局と西新出張所に分かれます。
博多区・中央区・南区・東区は本局、早良区・城南区・西区は西新出張所です。
決まるのは売る不動産がある場所で、相続人がお住まいの区ではありません。
本局と西新出張所の分かれ目
| 庁 | 管轄する区 | 所在地 |
|---|---|---|
| 福岡法務局 本局 | 博多区・中央区・南区・東区 | 福岡市中央区舞鶴3丁目5番25号 |
| 西新出張所 | 早良区・城南区・西区 | 福岡市早良区祖原14番15号 |
早良区にお住まいで博多区の実家を相続した方は、近い西新出張所ではなく本局が申請先です。
登記事項証明書の交付を受けるだけなら、どの法務局の窓口でも全国の不動産について取れます。
管轄が効くのは、相続登記の申請そのものだけです。
登記手続案内は事前予約制
法務局の登記手続案内は予約制で、1回の利用時間は20分以内です。
予約は電話か、「法務局手続案内予約サービス」というウェブの窓口から申し込みます。
本局の不動産登記について電話で予約する先は、不動産登記部門の092-721-4575です。
西新出張所の場合は、代表の092-831-4114にかけます。
ウェブの案内を使えるのは申請人本人だけで、予約した時刻に遅れても延長はされません。
気をつけたいのは、案内でしてもらえることの範囲です。
担当者は申請前の書類を審査できず、法的な判断もしません。
「この遺産分割協議書で登記が通るか」を確かめる場ではないので、そこは司法書士に見てもらってください。
自分でどこまでできるかの線引きは不動産の個人売買と司法書士|自分で登記できる範囲と費用で説明しています。
次に何をすればよいですか?
順番は、相続人の確定、戸籍の取り寄せ、遺産分割協議書、相続登記、売り出しの5段です。
最初の2つは、売り出す前でも、売るかどうかを決める前でも進められます。
戸籍がそろうまでの日数は家ごとに違うので、先に動かしておくと決済日を無理なく置けます。
価格の見当がつかないうちは、書類を集めながら無料査定で金額の幅だけ先に知るのも一つの手です。
相続した家を売るまでの全体の流れは相続した実家を売却する流れ、期限の数え方は相続登記の期限はいつ?2027年3月31日の数え方にあります。
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