取得費加算の3年10か月を逆算|いつ売り出すか
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士相続税を納めて、相続した実家をこれから売る方に向けて書きました。
取得費加算の特例が使えるのは、相続開始から3年10か月以内の売却です。
この期限でつまずく方が多いのは、売り出しの締切だと思い込んでしまうからでしょう。
期限が指しているのは、買主に引き渡して残代金を受け取る日です。
福岡市の相場で売り出してから引き渡しまでは、当社の目安で5か月みます。
つまり、動き出す日は期限の5か月前になります。
この記事では、相続開始の日から自分の締切を出し、そこから逆に数える順番を書きました。
特例そのものの中身は取得費加算の特例の期限は3年10か月にまとめてあります。
2. 引渡し日から逆に数えると、いつ動き出すことになりますか
3. 自分の締切は、何年何月何日になりますか
4. 間に合わないと分かったら、何が残りますか
5. 福岡市では、どの窓口に何を頼むのですか
6. 今日決めるのは、引渡しの締切日1つ
取得費加算の3年10か月は、いつを指す期限ですか
国税庁の要件は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることです。
相続税の申告期限が10か月なので、合わせて3年10か月という呼び方になっています。
ここでいう譲渡の日は、原則として買主へ引き渡した日です。
この特例が置かれているのは、同じ財産に相続税と譲渡所得税が続けてかかる負担を調整するためです。
相続税を納めてから売るまでの期間が長くなるほど、調整の必要が薄れると考えられているため、期限が切られています。
起算日は相続開始の日。申告した日ではない
数えはじめるのは、亡くなった日です。
相続税の申告書を出した日ではありません。
申告を期限より早く済ませた方でも、期限が前に動くことはありません。
相続したのが貸している駐車場なら、この期限と毎年の手取りを並べる手順を相続した駐車場は売るか貸すかにまとめました。
2024年5月10日に相続が始まった場合、申告期限は2025年3月10日、譲渡の期限は2028年3月10日です。
相続開始の日と同じ日付の3年10か月後が、最後の日だと覚えておいてください。
なお、相続税がかからず申告が不要だった方は、加算する相続税そのものが無いため対象から外れます。
基礎控除の範囲に収まった相続では、この期限を気にする必要がありません。
譲渡の日は、原則として引き渡した日
譲渡所得は、引渡しのあった日の属する年の所得として申告するのが原則です。
売買契約の効力が発生した日を選んで申告することも認められています。
引渡しがあった日は、登記に必要な書類を渡したかどうかなどから判断されます。
原則として、残代金の決済が終わった日より後にはなりません。
ただし、期限ぎりぎりの案件でこの選択に頼るのは危険です。
契約から引渡しまでの1か月の間に、買主の住宅ローンの本審査が入ります。
審査が通らず契約が白紙に戻れば、契約日を選ぶ前提そのものが消えます。
期限内に引き渡しまで終える段取りで組み、契約日で申告できるかは税務署か税理士に確かめてください。
引渡し日から逆に数えると、いつ動き出すことになりますか
期限の5か月前が、査定を依頼する目安です。
準備に1か月、売り出しから買主が決まるまでに3か月、契約から引渡しまでに1か月を見た形です。
相続登記が終わっていない場合は、ここにさらに1〜3か月が乗ります。
期限の5か月前が、売り出しの目安
引渡しの日から逆に数えた並びが、次の表です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 引渡し日 | 残代金を受け取り、鍵と書類を渡す。ここが期限の内側にある必要がある |
| 1か月前 | 売買契約。買主の住宅ローン本審査が始まる |
| 2〜4か月前 | 売り出しから買主が決まるまで |
| 4〜5か月前 | 査定、媒介契約、必要書類の取り寄せ |
2028年3月10日が期限なら、2027年10月までには査定を受けておく計算になります。
この3か月という販売期間は、相場に沿った価格で売り出した場合の目安です。
高めの価格から様子を見る売り方だと、反響が出るまでに2か月かかることもあります。
期限がある方は、価格の刻み方も最初に決めておいてください。
売り出して1か月で反響が無ければ下げる、というところまで先に決めておく形です。
相続した実家は空き家になっていることが多く、内覧の日程を組みやすいぶん、販売期間は読みやすくなります。
荷物が残っていても売り出せますが、写真を撮る前に1部屋だけ片付ける段取りは入れてください。
相続登記が終わっていないなら、さらに1〜3か月前
亡くなった方の名義のままでは、買主へ所有権を移せません。
戸籍の取り寄せから登記の完了まで、相続人が少ない案件でも1〜2か月はかかります。
相続人が5人を超える案件や、連絡のつかない相続人がいる案件なら3か月を超えるでしょう。
登記の期限そのものは相続登記が義務化。3年の期限と罰則にまとめてありますが、売却の日程では税の期限のほうが先に来ます。
相続税を納めた方の場合、登記に使える時間は期限の5か月前までです。
自分の締切は、何年何月何日になりますか
相続開始の日に3年10か月を足した日が、譲渡の期限です。
その5か月前が、査定を依頼する日になります。
よくある3つの並びを表にしました。
相続開始の日から出す3つの例
| 相続開始 | 相続税の申告期限 | 譲渡の期限 | 査定の目安 |
|---|---|---|---|
| 2024年5月10日 | 2025年3月10日 | 2028年3月10日 | 2027年10月 |
| 2025年1月20日 | 2025年11月20日 | 2028年11月20日 | 2028年6月 |
| 2026年4月1日 | 2027年2月1日 | 2030年2月1日 | 2029年9月 |
相続が始まったのが2022年より前なら、この特例の期限はすでに過ぎています。
2023年以降に始まった相続なら、まだ残っている可能性があります。
過ぎていた場合に残る手は、この記事の後半にまとめました。
期限の外にある物件でも、売却そのものは同じ手順で進みます。
変わるのは税額だけなので、計算し直してから値付けを決める形にしてください。
「月末まで」と思い込まない
期限は月末ではなく、相続開始の日と同じ日付です。
5月10日に相続が始まったなら、3月末ではなく3月10日が最後の日になります。
月末だと思って日程を組むと、3週間ぶんの余裕を使い切ってしまいます。
数え方に1日でも自信が持てないときは、最終日の1か月前を自分の締切にしてください。
1か月の余白があれば、決済の日程が1週間後ろへずれても持ちこたえられます。
引渡し日は買主の都合でも動くので、余白を持っておく形が安全です。
間に合わないと分かったら、何が残りますか
残っている道は3つあります。
買取で引渡しを前に寄せる、買取保証で仲介と期限の両方を追う、特例なしで手取りを計算し直すという順番です。
どれを選ぶかは、期限まで何か月残っているかで決まります。
買取なら、引渡しを最短で寄せられる
当社の買取は、最短1日〜2週間前後での引き渡しと入金が可能です。
買主を探す期間が要らないので、期限まで1〜2か月しかない場面で効きます。
相続登記や抵当権の抹消が残っている場合は、その分の日数が加わります。
買取価格は仲介で売れる相場より下がるため、特例で減る税額と、買取で下がる価格を並べて比べてください。
残りが1か月を切っている場合は、税額の差より引渡しが間に合うかどうかが先に来ます。
売り方ごとの違いは仲介・買取・リースバック・じぶん売却の比較に整理しています。
買取保証なら、仲介と期限の両方を追える
一定期間は仲介で売り出し、その期間内に売れなかった場合に、あらかじめ決めた金額で当社が買い取る方法です。
相場での売却を狙いながら、期限に間に合わない事態を避けられます。
期限まで5か月以上あるなら、選びやすいのはこの形でしょう。
仲介で売り出す期間を何か月にするかは、期限から引渡しの1か月を引いて決めます。
期限が2028年3月10日なら、買取に切り替える判断は2028年1月までに済ませる並びです。
当社がお手伝いした福岡市西区のマンションは、売り急いでいなかったため高めの価格から売り出し、想定より高く成約しました。
期限がある方は、この逆の順番になります。
先に引渡しの締切を決め、そこから価格を決める形です。
特例が使えないと、手取りはいくら変わるのか
3,000万円で売れた実家で、取得費加算に使える相続税が300万円あった場合を並べます。
買ったときの金額が分からない実家では、概算取得費として売却価格の5%を使います。
3,000万円の5%は150万円で、譲渡費用を100万円とすると、譲渡益は2,750万円です。
所有5年を超える長期譲渡なら税率は20.315%で、税額は約558万円になります。
特例が使えて譲渡益が2,450万円まで下がれば、税額は約498万円です。
差は約60万円で、仲介手数料の半分ほどにあたります。
相続した空き家の3,000万円控除と取得費加算は、どちらか一方しか選べません。
控除が使える実家なら、3,000万円控除のほうが差が大きくなることがほとんどです。
先に控除の要件を確かめ、使えないと分かった場合にこちらの期限を追う順番にしてください。
自分の場合の手取りは手取りの試算で先に出しておけます。
福岡市では、どの窓口に何を頼むのですか
取得費加算に必要な相続税の申告書の控えは、被相続人の住所地を管轄する税務署が出どころです。
福岡市内でも、管轄の税務署は5つに分かれます。
実家の区と、控えを請求する先が食い違うと、そこで1往復ぶんの日数を落とします。
区ごとに管轄する税務署が違う
- 中央区 … 福岡税務署
- 博多区 … 博多税務署
- 東区 … 香椎税務署
- 南区 … 南福岡税務署
- 城南区・早良区・西区 … 西福岡税務署
相続税の申告は被相続人の住所地、売ったあとの確定申告は売主であるご自身の住所地が管轄です。
親が城南区に住んでいて、ご自身が博多区にお住まいなら、2つの署にまたがります。
売ったあとの確定申告は、引き渡した年の翌年の2月16日から3月15日までです。
2028年3月10日に引き渡したなら、申告は2029年の3月15日までに済ませる形になります。
登記と評価証明は、税務署では出ない
登記事項証明書は法務局、固定資産評価証明書と戸籍は区役所です。
福岡市内の登記でも、博多区・中央区・南区・東区は福岡法務局の本局、早良区・城南区・西区は西新出張所が管轄です。
区ごとの窓口は福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめました。
戸籍も評価証明も郵送で請求できますが、往復で2週間ほどかかります。
査定と並行して動かせば、この2週間は日程に響きません。
今日決めるのは、引渡しの締切日1つ
相続開始の日に3年10か月を足して、最後の日を書き出してください。
その1か月前を自分の締切にして、さらに5か月前が動き出す日です。
相続人が複数いる場合は、この2つの日付を全員に共有しておいてください。
売るかどうかの話し合いが、期限の直前まで続く事態を避けられます。
相続登記が残っているなら、そこからもう1〜3か月さかのぼった日が起点です。
当社は相続した不動産の売却で、登記と売却の準備を並行して進めています。
期限が近い方にお見せするのは、仲介と買取の手取りを並べた表です。
税額の差より引渡し日のほうが先に決まる案件では、そこから価格を組み直します。
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