マンションの民泊は管理規約で決まる|禁止の部屋はどう売る?
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士分譲マンションの1室で民泊ができるかどうかは、法律より先に、その建物の管理規約で決まります。
規約で禁止されている部屋は、民泊に使いたい買主には売れません。
その一方で、自分で住む人や普通に貸す人は、民泊ができなくても困りません。
この記事は、福岡市に分譲マンションを持ち、「民泊に使えるのか」「売るならどう売るのか」で迷っている方に向けたものです。
規約の読み方・総会の決議・禁止の部屋の売り方の3つに絞って書きました。
届出と旅館業の許可の違いや年180日の上限など、民泊の制度そのものは空き家を民泊にするにはにまとめてあります。
2. 管理規約に民泊のことが書いていないときは、どう読む?
3. 総会の決議で、マンションの民泊の扱いはどう変わる?
4. 民泊が禁止の部屋は、売れる?誰に売る?
5. マンションを売るか迷ったら、何から始める?
マンションで民泊ができるかは、管理規約のどこで決まる?
決め手は、管理規約のうち「専有部分の用途」を定めた条文で、国土交通省のマンション標準管理規約では第12条にあたります。
専有部分とは、玄関の内側にある自分の部屋のことです。
標準管理規約は、管理組合が自分たちの規約を作ったり直したりするときのひな形として、国土交通省が示しているものです。
標準管理規約の第12条は「認める」と「禁止する」の2通り
国土交通省は2017年8月29日に標準管理規約を改正し、第12条に2つの書き方を示しました。
第1項はどちらも同じで、「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という文です。
違うのは第2項で、民泊を認める規約は「住宅宿泊事業に使用することができる」と書きます。
禁止する規約は、同じ場所に「住宅宿泊事業に使用してはならない」と書きます。
住宅宿泊事業とは、住宅宿泊事業法にもとづく届出をして行う、年180日までの民泊のことです。
2025年10月17日に出た最新の標準管理規約でも、この第12条の2通りの書き方は変わっていません。
「家主がいる場合だけ認める」など、間の書き方もある
標準管理規約には、条文の解説にあたる「コメント」が付いています。
そのコメントに載っているのが、家主が同じマンションに住んでいる場合だけ民泊を認める「家主居住型」の書き方です。
家主が自分の住む部屋で泊める場合に限って認める「家主同居型」の例もあります。
可否を規約に書かず、「使用細則で定める」と細則に任せる書き方も示されています。
規約に「家主居住型に限る」とあれば、同じマンションに住んでいない持ち主が部屋を民泊に使うことは認められていません。
第12条の第2項に何が書いてあるかを、一字ずつ確かめる必要があるのはこのためです。
管理規約に民泊のことが書いていないときは、どう読む?
民泊について何も書いていない規約は「禁止されていない」とは読めず、届出にも旅館業の許可にも管理組合の確認が別に要ります。
2017年の改正より前に作られ、そのあと見直されていない規約は、第12条が第1項だけになっていることがあります。
「専ら住宅として使用」の1項だけのとき
住宅宿泊事業法の届出では、分譲マンションの部屋なら専有部分の用途に関する規約の写しを出すのが決まりです。
規約に民泊についての定めが無ければ、管理組合に禁止する意思が無いことを確かめた書類も一緒に出すことになっています。
つまり規約が黙っている場合、民泊を始めたい人は管理組合(実際には理事会や理事長)に確認を取りに行かなければなりません。
規約に禁止の定めが無くても、総会や理事会で禁止の方針を決めていれば届出はできません。
「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」を禁じる書き方
標準管理規約のコメントは、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない」という書き方もあり得るとしています。
この書き方は、届出の民泊だけでなく旅館業の許可を取って行う民泊もまとめて禁じるものです。
規約の文言に「住宅宿泊事業」の語が無くても、この一文があれば民泊はできないと読んでください。
同じコメントは、民泊の実施だけでなく、その前の広告や募集まで禁じる条文の例も示しています。
福岡市で旅館業の許可を取るなら「明記」が要る
年180日の上限が無い旅館業(簡易宿所など)の許可を福岡市で取る場合、規約に求められる条件はさらに厳しいものです。
福岡市の手引きは、分譲マンションで許可を申請するとき、規約に旅館業を明確に認める条項があることを求めています。
しかも、標準管理規約の「住宅宿泊事業に使用することができる」という一文は旅館業を認めたものではない、というのが手引きの書き方です。
規約に明確な記載が無ければ、管理組合の確認書を出すか、規約を改正するかのどちらかです。
出す規約には、理事長が「現に有効な規約である」と書いて日付を入れ、署名押印したもので、記載から3か月以内のものが求められます。
規約の書き方ごとの扱いを並べると、次のようになります。
| 規約の第12条 | 届出の民泊 | 旅館業の許可(福岡市) |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業を認める | できる | この文だけでは足りず、確認書か規約の改正が要る |
| 住宅宿泊事業を禁止する | できない | 旅館業の明記が無ければ、確認書か規約の改正が要る |
| 宿泊料を受ける事業を禁止する | できない | できない |
| 第1項だけ(民泊の記載なし) | 管理組合の確認が要る | 確認書か規約の改正が要る |
総会の決議で、マンションの民泊の扱いはどう変わる?
民泊の可否を規約で変えるには総会の特別決議が要り、2026年4月1日からは出席した人の4分の3以上の賛成で決まるようになりました。
規約は一度決めたら終わりではなく、住民の考えが変われば「可」から「禁止」へも、その逆へも変えられます。
規約の変更に必要な賛成の数(2026年4月から)
改正された区分所有法が2026年4月1日に施行され、規約を変える決議の数え方が変わりました。
いまは区分所有者の過半数で、かつ議決権の過半数を持つ人が出席し、出席者とその議決権の各4分の3以上が賛成すれば決まります。
改正前は、出席していない人も含めた全員の4分の3以上の賛成が必要でした。
1戸1票の50戸のマンションで比べると、改正前は38戸の賛成が要りました。
いまは26戸が出席すれば、そのうち20戸の賛成で規約を変えられます。
委任状や議決権行使書を出した人も、出席した人として数えます。
区分所有法では、規約に別の定めが無ければ議決権は専有部分の床面積の割合で決まるため、1戸1票とは限りません。
使用細則なら過半数、民泊中の部屋には「特別の影響」
民泊の可否を使用細則に任せている規約なら、細則の変更は特別決議ではありません。
標準管理規約の第47条では、特別決議にあたるのは規約の変更で、細則は出席組合員の議決権の過半数で決まる形になっています。
規約の場合より少ない賛成で扱いが変わり得るため、細則の中身と変更の履歴まで見ておかなければなりません。
区分所有法は、規約の変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その人の承諾が要ると定めています。
すでに民泊をしている部屋の持ち主がこれに当たるかどうかは、個別の事情によって答えが分かれるところです。
当てはまるかを一般論で言い切ることはできないので、争いになりそうなら弁護士に相談してください。
総会の決議は、次の持ち主にも引き継がれる
区分所有法第46条は、規約と総会の決議は区分所有者の特定承継人にも効力を生じると定めています。
特定承継人とは、売買などで部屋を引き継いだ次の持ち主のことです。
売り出している最中に総会で民泊の禁止が決まれば、買主もその禁止に従うことになります。
標準管理規約では、総会の招集通知は会議の2週間前までに出すことになっているので、議案はそこで分かります。
売り出し中に届いた通知に民泊の議案があれば、その時点で当社にもお知らせください。
民泊が禁止の部屋は、売れる?誰に売る?
民泊が禁止の部屋は民泊に使いたい買主には売れませんが、住まいとして買う人には普通のマンションと同じように売り出せます。
売り方の答えは、住まいとして売るの一つです。
民泊の買主に向けて売り出さない理由
規約で禁止されている以上、買主は民泊の届出ができず、決議の効力は買主にも及びます。
不動産会社が売買の前に行う重要事項説明では、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めを説明することになっています。
禁止の定めは契約の前に必ず買主に伝わるので、民泊を期待させる売り出し方をしても、最後に話が壊れるだけです。
管理会社が出す「重要事項調査報告書」にも、専有部分の用途が「住宅宿泊事業は可」か「不可」かを書く欄があります。
国土交通省がこの報告書の項目の例として示しているもので、用途の規制を変える予定の有無も記入する形です。
住まいとして売るときの進め方
民泊が禁止の部屋の査定は、同じマンションや近くの住戸の、住まいとしての成約事例を基準にします。
住まいの買主が見るのは、管理費と修繕積立金、修繕の履歴、駅からの距離、部屋の状態などだからです。
管理費が高い・築年数が古いといった住まいとしての弱点があるなら、そちらへの手当てを先に考えます。
いま民泊をしている部屋なら、売り出しの前に廃業の届出をして、住まいとして見てもらえる状態に戻します。
その手順は民泊をやめて家を売る手順に書きました。
規約で民泊が認められている部屋なら、民泊の買主と住まいの買主の両方に向けて売り出すことができます。
ただし、民泊に使えるからといって高く売れるとは限らず、買主がどこを見るかは民泊に向く家の条件で整理しています。
運営を続けたまま引き継ぐ形を考えるなら、民泊を運営したまま売るにはもあわせてお読みください。
マンションを売るか迷ったら、何から始める?
最初にやることは、管理会社から規約・使用細則・総会の議事録を取り寄せ、民泊の扱いを紙で確かめることです。
売るか持つかは、そのあとで決めても遅くありません。
管理会社から取り寄せる書類と、福岡市の相談窓口
- 現に有効な管理規約(改正があれば改正後のもの)
- 使用細則(民泊・ペット・リフォームなどの細則)
- 直近2〜3年分の総会の議事録
- 重要事項調査報告書(売り出しのときに不動産会社が取り寄せることが多い書類)
これらの発行に費用がかかる管理会社もあり、金額は管理会社ごとに違います。
規約の読み方に迷ったら、福岡市役所3階の住宅相談コーナーで、マンション管理の専門家に無料で相談できます。
マンション管理相談は毎月第1・第3木曜日で、予約が必要です(電話は092-711-4808)。
民泊の届出は福岡県、旅館業の許可は物件のある区の衛生課が窓口で、規約の可否そのものを決めるのは管理組合です。
出典:福岡市 住宅相談コーナー
当社にご相談いただけること
規約や議事録がそろっていなくても、マンションの売却の相談は始められます。
住まいとしていくらで売れそうかは、無料査定でお出しします。
マンション売却の進め方は福岡市のマンション売却に、民泊での運用と売却の比べ方は民泊で運用する(福岡市)にまとめました。
建物の用途地域から民泊に使えるかを調べたい方は、用途地域と建物の調べ方も参考にしてください。
売らずに民泊で持ち続けたいとお考えなら、15分無料相談で、規約を見ながら今の状況を一緒に整理します。

