査定額とは「3か月で売れる価格」|3つの価格の違い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士不動産会社から査定書を受け取って、この金額が何を指しているのかを確かめたい方に向けた記事です。
査定額とは、3か月程度で成約が見込まれる価格のこと。
「この金額で買い取ります」という約束でも、「この金額で売り出します」という決定でもありません。
売主が決める売り出し価格、買主との交渉で決まる成約価格とは、それぞれ別の金額です。
3つを混ぜたまま売り出すと、2か月目に価格を下げる話が出たときに、何が想定どおりで何が違ったのかが分からなくなります。
この記事では3つの金額の違いと、査定書のどこを見ればよいのかを順に説明します。
2. 査定額・売り出し価格・成約価格は何が違いますか?
3. 査定額で必ず売れるのですか?
4. 福岡市では、査定額の幅はどのくらい開きますか?
5. 査定書を受け取ったら、どこを見ますか?
6. 次に何をすればよいですか?
査定額とは、何の金額ですか?
不動産会社が「3か月程度の売却活動で成約が見込まれる」と判断した価格です。
価格の根拠になるのは、近隣で実際に成約した事例と、その物件の条件の差です。
「3か月程度で成約が見込まれる価格」という意味
査定額には、金額のほかに期間という前提が入っています。
同じ物件でも、1か月で売り切る前提なら金額は下がり、1年かけてよい前提なら上がります。
つまり査定額は、金額と期間の組み合わせで1つの答えになっているわけです。
「いくらで売れますか」と尋ねたときに期間の話が出てこない査定書は、前提が欠けています。
なぜ3か月なのか
3か月という区切りは、不動産会社と結ぶ媒介契約の有効期間に合わせたものです。
宅地建物取引業法は、専任媒介契約の有効期間を3か月より長くできないと定めています。
それより長い期間を書いても、期間は3か月として扱われます。
売主から見れば、3か月ごとに「このまま続けるか、会社を変えるか、価格を見直すか」を決める機会が来るということ。
査定額とは、その1区切りのあいだに売れる見込みの価格です。
不動産鑑定士の鑑定評価額とは別のもの
査定額は、不動産鑑定士が出す鑑定評価額とは違います。
鑑定評価は有料で、相続税の申告や裁判など、第三者に示す場面で使われます。
一方の査定は無料です。
宅地建物取引業法は、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定めています。
国土交通省は、この明示が法律上の義務であることから、そのための査定費用を依頼者に請求できないとしています。
無料だから適当という話ではありません。
根拠を示すところまでが、会社の仕事に含まれています。
査定がなぜ無料なのかは別の記事にまとめました。
買取の金額とも、同じではない
買取の金額は、不動産会社が自分で買う価格です。
仲介の査定額は買主を探して売れる見込みの価格なので、同じ物件でも2つの金額は一致しません。
買取は相場の5〜7割程度になるのが一般的で、そのぶん引き渡しまでの日数が短くなります。
どちらの金額を聞いているのかが曖昧なまま話が進むと、金額の差を会社の実力の差と取り違えます。
差額の内訳は別の記事にまとめました。
査定額・売り出し価格・成約価格は何が違いますか?
決める人が違います。
査定額は不動産会社が出す見込み、売り出し価格は売主が決める金額、成約価格は買主との交渉で決まった結果です。
| 価格 | 決める人 | いつ決まるか |
|---|---|---|
| 査定額 | 不動産会社 | 売り出す前 |
| 売り出し価格 | 売主 | 媒介契約のとき |
| 成約価格 | 売主と買主 | 契約のとき |
売り出し価格は、売主が決める
査定額をそのまま売り出し価格にする決まりはありません。
売り急いでいないなら、査定額より高く出して様子を見る選び方もできます。
その場合に決めておくのが、いつまで様子を見て、いつ見直すかという期限です。
期限を決めずに高く出すと、問い合わせが無いまま数か月が過ぎ、情報が古い物件として扱われます。
価格の付け方は別の記事で詳しく書きました。
成約価格は、交渉で決まる
買主から値下げの申し入れが入ることは珍しくありません。
売り出し価格のまま決まることもあれば、下がって決まることも。
どちらになるかは、問い合わせの数と、買主が他に見ている物件で変わります。
成約価格は公表されませんが、国土交通省の不動産情報ライブラリで、地域ごとの取引価格を後から見ることができます。
この3つに加えて、買主に伝わるのは売り出し価格だけという点も押さえてください。
査定額は売主と不動産会社のあいだの数字で、広告には出ません。
そのため、査定額を低く出された状態で売り出すと、買主からは「相場どおりの価格」として見えてしまいます。
査定額で必ず売れるのですか?
査定額どおりに売れるとは限りません。
実際の成約価格は買主との交渉で決まるため、査定額を下回ることも上回ることもあります。
下回る場合に起きていること
下回る理由で多いのが、売り出してから分かった条件です。
- 境界が確定しておらず、買主が測量を求めた
- 設備の不具合が内覧で見つかった
- 同じマンションの似た部屋が、同じ時期に売り出された
- 買主の住宅ローンの審査額が、価格に届かなかった
いずれも、査定の時点では見えていない事情です。
先に分かっているものを伝えておくと、価格の前提に入れたうえで査定を出せます。
上回る場合に起きていること
当社は福岡市西区のマンションで、成約想定価格より高い金額での売却に至りました。
住み替えのための売却で、空室のため案内しやすく、売り急いでもいませんでした。
そこで査定額より高いチャレンジ価格で売り出し、時間をかけて買主を探した案件です。
条件がそろえば上を狙えますが、どの物件でも同じようにできるわけではありません。
この事例の詳細は売却事例に載せています。
3か月で売れなかったら、何を見直すか
3か月が過ぎた時点で見るのは、価格より先に内覧の件数です。
成約までの内覧は5〜10件程度が目安で、3か月で数件にとどまるなら価格が高いという合図。
内覧は入っているのに決まらない場合、原因は価格ではなく、室内の状態や説明の不足にあります。
当社は、内覧が数件にとどまっている場合に価格の見直しをご提案しています。
どちらなのかを分けずに値下げすると、下げた意味が検証できません。
査定額が高い会社を選べばよい、とはならない
査定額は会社ごとに違います。
違いの理由は、売却期間・売り方・想定する買主層という前提が会社ごとに違うから。
前提を聞かずに金額だけを並べると、いちばん長い期間を前提にした会社がいちばん高く見えます。
そのまま媒介契約を結ぶと、3か月目に大きな値下げの相談が来ることになります。
福岡市では、査定額の幅はどのくらい開きますか?
幅は区によって変わり、取引事例の少ない区のほうが広く開きます。
査定の根拠が近隣の成約事例だからです。
事例の数が、区で7倍違う
当社は国土交通省の取引価格情報を区ごとに集計しています。
2024年第2四半期から2026年第1四半期までのマンションの取引件数は、中央区が1,109件、城南区が153件。
同じ2年間で、7倍以上の差。
事例が多い区では、似た条件の部屋がいくつも見つかるぶん、会社による金額の差は小さくなります。
条件の近い事例が年に数件しかない土地や戸建てでは、会社ごとの判断の差が、そのまま金額の差に出ます。
区ごとの件数と中央値は福岡市の売却相場でご覧ください。
同じ3LDKでも、区で中央値が1.8倍違う
同じ集計で、70平方メートル台の3LDKの中央値は南区が2,300万円、中央区が4,200万円でした。
区が違うだけで1.8倍になるため、「福岡市の3LDKの相場」という言い方は査定の役に立ちません。
査定書を見るときは、比べている事例がどこの取引かを確かめてください。
自分でも取引事例を見ておく
不動産情報ライブラリでは、地域と種別を選んで、実際に成約した価格を見られます。
査定書を受け取る前に自分の区の事例を10件ほど見ておくと、金額の話が早く進みます。
見るときは、取引の時期と面積の2つをそろえてください。
同じ区でも、2020年の取引と今年の取引では前提が違います。
面積が20平方メートル違う部屋を並べても、1平方メートルあたりの単価で比べれば同じ土俵に乗ります。
査定書を受け取ったら、どこを見ますか?
最初に見るのは金額ではなく、その金額の根拠が書かれた欄です。
根拠の明示は会社の義務なので、書いていなければ尋ねて構いません。
根拠の欄で確かめる3つ
- 比べた成約事例が、同じ区・同じ沿線のものか
- 事例の取引時期が、1年以内に収まっているか
- 自分の物件と事例の違い(築年・面積・階数・向き)をどう調整したか
この3つが埋まっていれば、金額が高いか低いかを自分で判断できます。
とくに確かめたいのが、2つめの取引時期です。
福岡市のマンションは近年の価格の動きが大きく、2年前の事例をそのまま並べると、いまの金額とずれます。
3つめの調整の考え方は、会社によっていちばん差が出るところ。
「築年が5年新しいので何%上げた」といった説明が付いていれば、他社の査定書と同じ土俵で比べられます。
査定額は、手取りの金額ではない
査定額から仲介手数料や税金などを引いた残りが、手元に入る金額です。
売却価格と手取りの差は、数十万円から数百万円になります。
どれだけ残るかは手取りの試算で先に確かめてください。
売ったあとに残る金額が分かってから、売り出し価格を決めるほうが迷いません。
机上の査定と訪問の査定を混ぜない
登記情報と成約事例だけで出す机上の査定は、当日から翌日に出る概算です。
現地で日当たり・眺望・室内の状態・境界を見る訪問の査定なら、実際の売却価格に近い金額が出ます。
この2つを並べて「A社のほうが高い」と比べると、前提の違うものを比べることになるわけです。
比べるなら、どちらも訪問の査定にそろえてください。
AI査定との違いは別の記事にまとめました。
次に何をすればよいですか?
売る時期が決まっているかどうかで、次の一手が変わります。
決まっていれば金額を、決まっていなければ順番を先に確かめてください。
時期が決まっていない場合
売ると決めていない段階でも、金額と段取りのご相談は承っています。
当社の15分無料相談でお伝えしているのは、いまの相場観と、売るとしたら何から始めるかの2つ。
他社の査定書をお持ちの方は、その根拠の欄を一緒に読むこともできます。
金額を知りたい場合
当社の無料査定では、金額と、その価格でいつまでに売れる見込みかをあわせてお出しします。
3か月で売る前提の金額と、半年かけてよい場合の金額に分けてのご説明も可能です。
査定額は約束の金額ではありません。
ただ、前提と根拠がそろっていれば、売り出し価格を決める土台になります。
