「買い時ではない」37.7%をどう読む?住宅居住白書2026
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士全宅連が2026年9月に公表した「2026 住宅居住白書」で、「いまは不動産の買い時ではない」と答えた人が37.7%に増えました。
ニュースでこの数字を見て、「それなら家を売り出すのは待ったほうがいいのか」と迷った方もいるはずです。
先に結論を書きます。
同じ調査で「買い時だ」と答えた人も21.6%に増えており、買う側は「急ぐ人」と「見送る人」に分かれたというのが調査の読み方です。
この記事の読み手は、福岡市に家やマンションを持ち、売るかどうか・いつ売るかを迷っている50〜60代の方です。
調査の数字を、買う側ではなく売主の側から読み直します。
株式会社おもいで不動産の野上俊彦が、売り出す前に確かめてほしいことまで順にまとめました。
2. 買い時と思う人・思わない人は、何を理由にしている?
3. 売主にとって、この調査は何を意味する?
4. 「待てば上がる・下がる」で売る時期を決めてよい?
5. 福岡市で売り出す前に、何を確かめればよい?
6. 迷っている今、何から始めればよい?
2026年の住宅居住白書で「買い時ではない」は何%だった?
「買い時だと思わない」は37.7%で前年から3.0ポイント増え、「買い時だと思う」も21.6%で0.8ポイント増えました。
両方が増えたぶん、減ったのは「わからない」と答えた人です。
誰に聞いた調査なのか
調査したのは公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)で、全国の20〜65歳の男女5,000人にインターネットで聞いています。
期間は2026年7月30日から8月5日まで。
ここで押さえておきたいのは、家を探している人だけに聞いた調査ではないという点です。
いま住宅を買うつもりのない人も含めた、世の中全体の「買う側の気分」として読むのが正確な読み方になります。
地域別の数字は「九州」という単位までしか出ておらず、福岡県や福岡市だけの値はありません。
九州の回答者は82人と少ないので、この記事では地域別の数字を使わずに全国の値で話を進めます。
3つの数字を並べると見えること
態度を決めた2つの回答を並べると、次のようになります。
| 回答 | 2026年 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 買い時だと思う | 21.6% | 0.8ポイント増 |
| 買い時だと思わない | 37.7% | 3.0ポイント増 |
「買い時ではない」は、およそ8人に3人。
「買い時だ」は、およそ5人に1人です。
見出しになりやすいのは37.7%のほうですが、迷っていた人が「買わない側」だけに流れたわけではありません。
態度を決めた人が、両方向に増えています。
買い時と思う人・思わない人は、何を理由にしている?
買い時だと思う人の64.4%が「金利がさらに上がりそう」を挙げ、買い時だと思わない人の47.2%が「価格が高騰しすぎ」を挙げました。
同じ金利と価格の状況を見て、片方は急ぎ、片方は立ち止まっています。
「金利がさらに上がりそう」で急ぐ人
買い時だと思う理由で最も多かったのは「今後、住宅ローンの金利がさらに上昇しそうなので」で、64.4%でした。
2位の「支援制度が充実している」21.3%と比べると、3倍ほどの差があります。
「価値が安定・上昇しそう」は13.6%にとどまりました。
つまり、急いで買う人を動かしているのは値上がりへの期待よりも、借りる条件が悪くなる前に決めたいという気持ちです。
この層は、条件に合う物件が見つかれば判断が早いと考えられます。
「価格が高騰しすぎ」で見送る人
買い時だと思わない理由の1位は「価格が高騰しすぎているから」で、47.2%でした。
2位の「住宅ローン金利が上昇しているから」20.0%の2倍を超えています。
「収入が不安定・減少」9.1%、「価値が下落しそう」8.9%と続きます。
見送る人の多くは、住宅がいらないのではなく、いまの値段に納得していないということです。
値段に納得できる物件が出れば、見送り層の一部は動く可能性があります。
同じ環境が、逆の判断を生んでいる
全宅連は調査の結びで、購入を急ぐ意識と、価格・金利を理由に見送る意識が同時に表れたとまとめています。
金利が上がる局面は、ある人には「急ぐ理由」、別の人には「待つ理由」になるということです。
ここから「市場全体が冷え込んだ」とも「活発になった」とも言い切れません。
言えるのは、買う側が値段と条件をこれまでより厳しく見比べているということまでです。
金利が買主の予算にどう響くかは、同じ調査から書いた金利上昇と買主の予算の記事で詳しく扱っています。
売主にとって、この調査は何を意味する?
売主にとっての意味は、相場に沿った値段の物件は急ぐ層に拾われやすく、相場から離れた物件は見送る層に素通りされやすい、ということです。
これは調査の数字から当社が読んだ見方で、どの物件にも当てはまると断定するものではありません。
相場に沿った物件は、急ぐ層の目に留まりやすい
金利が上がる前に決めたい人は、探す期間を長く取れません。
その人たちが比べるのは、同じ地域・同じ広さの物件の値段です。
周りと比べて納得できる値段なら、内覧から申し込みまでが短くなりやすいでしょう。
逆に、急いでいる人ほど「高い」と感じた物件を後回しにします。
比べる手間をかけずに、次の候補へ移れるからです。
相場から離れた物件は、見送る層に素通りされやすい
「価格が高騰しすぎ」と感じている47.2%の人は、値段に最も敏感な買い手です。
相場より高めに出した物件は、この層の検討からまず外れます。
売り出してから反応が無い期間が長くなると、「売れ残っている物件」という印象も付きかねません。
当社がよくいただく質問に「今は売り時ですか?」があります。
そのときにお伝えしているのは、相場が上がっている=今売るべき、とは限らないということです。
高めに出すなら、いつまで様子を見て、いつ値段を見直すかを売り出す前に決めておきます。
持ち家を望む人が多いことも、この調査からは読めます。
持ち家派は63.3%で、持ち家を選ぶ理由として「老後の住まいが心配」が34.7%と前年から2.4ポイント増えました。
家を持ちたい人はいまも6割を超えており、買う側が消えたわけではないことが分かります。
老後の住まいを考えて住み替えを迷っているのは、売主の皆さんと同じ世代の感覚でもあるでしょう。
「待てば上がる・下がる」で売る時期を決めてよい?
おすすめしないのは、値動きの予想だけで売る時期を決めることです。
先の値段は誰にも分からないので、売る理由と期限から時期を決めるほうが、あとで悔いが残りにくくなります。
先行きは、当社にも誰にも分からない
この調査でも、「価値が安定・上昇しそう」と考える人と「価値が下落しそう」と考える人の両方がいました。
当社は、値上がりや値下がりを前提にした「今売れば得」「待てば得」というお話はしません。
先の値段を当てられると言う会社があれば、その根拠を聞いてみてください。
待つあいだにも、固定資産税や管理費、空き家なら草刈りや換気の手間がかかり続けます。
値上がりを待った結果、その間の負担で手取りが減る場合もあるわけです。
売る理由から時期を決める考え方
売る時期を決めるときは、次の3つの事情から考えます。
| 事情 | 時期を決めるもの | 見ておくこと |
|---|---|---|
| 住み替え | 新居の入居日と、ローンが二重になる期間 | 売る側と買う側、どちらを先に決めるか |
| 相続 | 相続人の話し合いと、登記の手続き | 全員が売ることに同意しているか |
| 維持費 | 毎年の固定資産税・管理費・修繕 | 持ち続けた場合の出費の合計 |
住み替えなら、ローンの二重払いがいつまで続くかが期限になります。
区切り方は住み替えのダブルローンの記事にまとめました。
相続した家なら、相続人全員の同意が取れた時点がスタートです。
空き家になっている実家の話し合いの進め方は、空き家の家族会議の記事で扱っています。
どの事情でも、「いつまでに、いくら手元に残ればよいか」を先に決めると、売り出す値段と時期は自然に絞れます。
福岡市で売り出す前に、何を確かめればよい?
売り出す前に確かめたいのは、自分の区の取引相場、手元に残る金額、複数社の査定の3つです。
全国の調査は買う側の気分を映しますが、実際の値段は福岡市の自分の区で決まります。
自分の区の取引相場を見る
当社の区ページでは、国土交通省の取引価格の情報をもとに、福岡市7区の相場を種別ごとに集計しています。
たとえば当社の事務所がある博多区は、2024年第2四半期から2026年第1四半期までのマンション取引951件を集計しました。
そのうち3LDK系の取引価格の中央値は2,700万円(127件)、1R〜1DKは1,400万円(424件)です。
同じ博多区のマンションでも、間取りでおよそ2倍の差があります。
戸建ての中央値は博多区が4,000万円(87件)、東区が3,550万円(280件)でした。
「福岡市の相場」とひとまとめにせず、自分の区の、自分と同じ種別と広さで見ることが、値段に敏感な買い手と向き合う出発点になります。
各区の数字は福岡市の売却相場から、博多区など区ごとのページで確かめられます。
吉塚周辺の値動きと売却時期については博多区吉塚の価格動向の記事も参考にしてください。
手元に残る金額を先に出す
売れた値段がそのまま手元に残るわけではありません。
差し引かれるのは、仲介手数料、登記の費用、住宅ローンの残り、場合によっては譲渡所得の税金です。
住み替えや相続の整理に足りるかどうかは、この差し引いたあとの額で考えます。
同じ3,000万円で売れても、ローンの残りが多い人と少ない人とでは、次の住まいに回せるお金がまったく違うからです。
手取りの試算に売却価格と所有期間を入れると、費用と税の目安が出ます。
そうすれば「この値段より下なら今は売らない」という線を、売り出す前に自分の中で引けるでしょう。
線が決まっていれば、買主から値引きの相談があったときも、その場で慌てずに答えられます。
査定を複数比べて、値段の根拠を聞く
査定額は会社によって違います。
見てほしいのは金額の高さではなく、その金額の根拠がどの取引と比べて出たものかです。
相場から離れた高い査定額で売り出すと、値段に敏感な見送り層に素通りされ、結局は値下げで時間を失いかねません。
根拠を聞いて、区ページの数字と照らし合わせてください。
査定のときに注意点まで話してくれるかどうかも、会社を選ぶ手がかりになります。
この点は注意点を先に伝える売主の記事で詳しく書きました。
迷っている今、何から始めればよい?
始めるのは、売るかどうかを決める前の「数字をそろえる」ところからで十分です。
「買い時ではない」が37.7%に増えたという数字は、売るのをやめる理由にも、急ぐ理由にもなりません。
分かるのは、買う側が値段をこれまで以上に見比べているということです。
だからこそ売る側も、自分の区の相場と、手元に残る金額と、売る理由の期限をそろえてから決めるのが近道です。
当社は、判断の材料をお出しするところまでを役割と考えています。
売るかどうか決まっていなくても、無料査定で今の値段の目安をお出しできます。
話を聞いてから考えたい方は、15分無料相談もご利用ください。
