実家が空き家になりそう|家族で話し合う4つのこと
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市に親の家があり、いずれ空き家になりそうだと感じているのに、家族でまだ一度も話していない方に向けた記事です。
結論から書くと、話し合いは親が元気なうちに、親の希望を聞くところから始めます。
そのうえで決めるのは、誰が継ぐか(名義)、家をどう使うか、費用を誰が持つか、の順番です。
1回で全部決める必要はありません。
決めきれない部分は、管理を頼んで時間を稼ぎながら進める方法もあります。
2. なぜ親が元気なうちに話したほうがよいのか?
3. 家族会議では何を決めればよいのか?
4. 話し合わずに放置すると何が起きるのか?
5. 話し合っても決めきれないときはどうする?
6. 福岡市で空き家の相談はどこにすればよいか?
実家の空き家、家族で話し合えている人はどれくらい?
空き家を抱える、または抱えそうな人のうち、最も多いのは「話し合いの必要を感じつつ、まだ行っていない」の35.0%でした。
家族で話し合いを進めている人は18.1%にとどまります。
この数字は、公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が2026年9月に公表した「2026 住宅居住白書」によるものです。
全国の20〜65歳の男女5,000人を対象に、2026年7月30日から8月5日にインターネットで調べています。
家を売る人や買う人だけに聞いた調査ではありません。
全国で4割弱が「空き家」か「空き家の予備軍」
「自分や家族(両親など)の家が、既に空き家になっている、または将来空き家になる可能性がある」と答えた人は、5,000人のうち37.2%でした。
前年は37.0%なので、ほとんど動いていません。
地域別に見ると、九州は「既に空き家」が9.4%、「将来空き家になる可能性がある」が29.6%で、合わせて39.0%です。
「将来の可能性」だけで比べると、中国地方の31.6%に次いで九州が2番目に高い数字でした。
ただし調査は九州単位までで、福岡県や福岡市だけの数字は出ていません。
いちばん多いのは「話す必要は感じているが、まだ」
空き家を抱える、または抱えそうな1,859人に、いまどんな検討をしているかを聞いた結果が次の表です(複数回答)。
| いまの状況 | 2026年 |
|---|---|
| 話し合いの必要を感じつつ、まだ行っていない | 35.0% |
| 放置している・何も考えていない | 20.7% |
| 家族(親子)で話し合いを進めている | 18.1% |
| 売却する手続きを進めている | 18.0% |
| 賃貸する手続きを進めている | 15.1% |
| 相続する手続きを進めている | 13.3% |
| 取り壊しを検討している | 10.9% |
「放置・何も考えていない」は前年から2.0ポイント増えました。
「まだ話していない」の35.0%だけでも、話し合いを進めている18.1%のおよそ2倍です。
この記事を読んでいる方が「うちもまだだ」と感じたなら、それは少数派ではありません。
なぜ親が元気なうちに話したほうがよいのか?
家を売る・貸すといった契約は、名義人である親本人の意思で結ぶものだからです。
親の判断する力が衰えてからでは、家族が代わりに決めることはできません。
家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう手続きが先に入り、売るまでの時間が延びます。
話し合いを先に延ばすほど、選べる道は減っていきます。
親にしか分からないことを聞いておける
家の書類や来歴は、住んでいる親の頭の中にしかないことが多いものです。
相続が起きたあとで子が探し回るのは、たとえば次のようなものです。
- 登記識別情報通知(権利証)がどこにあるか
- 住宅ローンは払い終わっているか、抵当権(借入の担保の登記)は消してあるか
- 隣との境界で、揉めたことや口約束はないか
- 雨漏り・シロアリ・増築など、手を入れた履歴
- 家を買ったときの契約書や領収書(売るときの税金の計算に使う)
最後の契約書が見つからないと、売ったときの税金の計算で、取得費を売却価格の5%として扱うことになります。
実際に払った金額より低く見積もられると、そのぶん税金が増える仕組みです。
書類の探し方は売却に必要な書類のページにまとめています。
「この家をどうしてほしいか」は親に聞くしかない
家族会議で最初に聞くのは、親自身がこの家をどうしたいかです。
「最後まで住みたい」「施設に入ったら売ってよい」「孫が住むなら残したい」。
答えによって、子の側で準備することはまったく違ってきます。
親の希望を聞かずに兄弟だけで「売る・売らない」を決めると、あとで「親はそんなことを言っていなかった」と意見が割れがちです。
親が住んでいる間に売るのか、住まなくなってから売るのかで使える税金の特例も変わります。
時期ごとの違いは親の家は生前と相続後のどちらで売るのが良いかで説明しています。
家族会議では何を決めればよいのか?
親の希望を聞いたあとに決めるのは、誰が継ぐか(名義)、家をどう使うか、費用を誰が持つか、の3つです。
この順番にするのは、名義が決まらないと使い道を決める人がおらず、使い道が決まらないと費用の見通しも立たないから。
誰が継ぐのか、名義と相続登記をどうするか
まず決めるのは、家を相続する人と、名義をどうするかです。
2024年4月から相続登記(亡くなった人から相続人へ名義を移す登記)が義務になりました。
相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請しなければなりません。
正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
2024年4月より前に相続した家で、まだ名義が亡くなった人のままなら、期限は2027年3月31日までです。
名義が親のままでは、相続人が家を売ることはできません。
兄弟で共有にする方法もありますが、共有にすると売るときに全員の同意が要ります。
1人が反対するだけで売却が止まるので、共有にするかどうかはこの場で話しておいたほうが後が楽です。
住む・貸す・売る・管理する、のどれにするか
家の使い道は、大きく分けて4つしかありません。
| 選択肢 | 向いている家族 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 住む | 子や孫が移り住む予定がある | 住む人と、他の兄弟との公平の取り方 |
| 貸す | 手放したくないが、住む人がいない | 修繕に出せる費用と、管理を誰がするか |
| 売る | 住む人も貸す手間をかける人もいない | 売る時期と、売ったお金の分け方 |
| 管理する | まだ決めきれない | いつまで管理して、いつ決め直すか |
「売る」を選んだ場合も、すぐに売り出す必要はありません。
親が住まなくなった時点、相続が起きた時点など、動き出す合図を家族で決めておけば十分です。
「貸す」「管理する」を詳しく比べたいときは、同じ調査をもとに書いた売らない選択肢(管理・賃貸・民泊)の比較を読んでください。
固定資産税や管理の費用を誰が持つか
空き家になっても、固定資産税は毎年かかり続けます。
固定資産税は、その年の1月1日に登記上の持ち主である人にかかる税金です。
相続登記が済むまでの間、誰が払うのかを決めておかないと、長男が黙って払い続ける形になりがちです。
管理の手間も費用にあたります。
月に1回、窓を開けて風を通し、郵便物を片づけ、庭の草を見る作業を、誰がどのくらいの頻度でやるのか。
近くに住む1人に任せきりにすると、数年後に「自分だけが負担してきた」という不満になって表に出ます。
当社の空き家管理サービスに頼む場合、いちばん軽いプランで月6,600円(税込)です。
年に直すと79,200円なので、兄弟3人で割れば1人あたり年26,400円。
こうして金額にしておくと、「誰がどれだけ負担しているか」が全員に見えるのが利点です。
話し合わずに放置すると何が起きるのか?
空き家を手入れせずに置いておくと、福岡市から助言や指導を受け、勧告まで進むと土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)が外れます。
家族の間では、決める人がいないまま相続が重なり、売ることも貸すこともできない状態に近づきます。
福岡市の放置空家対策で、税の軽減が外れることがある
福岡市は2017年(平成29年)4月に「福岡市空家等の適切な管理に関する条例」を全面改正して施行しました。
市は、そのままでは倒壊のおそれがある、衛生上有害であるといった状態の家を「特定空家等」としています。
その一歩手前の家が「管理不全空家等」です。
特定空家等は「助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行」、管理不全空家等は「助言・指導 → 勧告」の順に手続きが進みます。
どちらも勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の特例の対象から外れます。
税額がどのくらい変わるかは空き家を放置するとどうなる?で詳しく書いたので、ここでは繰り返しません。
市の窓口は、住宅都市みどり局 建築物安全推進課(092-711-4574)です。
出典:福岡市 放置空家対策
相続が重なると、話し合う人数が増えていく
親の家の名義を移さないまま、相続人の1人が亡くなると、その人の配偶者や子も話し合いに加わります。
兄弟3人で決められたはずの話が、会ったこともない甥や姪を含めた話し合いに変わるわけです。
売るにも貸すにも、名義を持つ全員の同意が欠かせません。
1人でも連絡がつかなかったり反対したりすると、手続きが止まります。
兄弟の意見が割れたときの法的な手段は共有物分割請求とは?兄弟が反対する実家の売却で紹介していますが、裁判まで行くと時間も費用もかかります。
そこへ行く前に決めるための場が、家族会議です。
話し合っても決めきれないときはどうする?
決めきれない部分は、空き家管理を頼んで家の傷みを止め、相続登記だけ先に済ませて、決め直す時期を家族で約束しておきます。
全部を一度に決めようとして話し合いそのものが止まるより、決められることから片づけたほうが先に進みます。
当面は空き家管理で時間を買う
「売るか残すか、もう少し考えたい」という家族は少なくありません。
その間に家が傷んでしまうと、あとで選べる道が狭まります。
当社の空き家管理サービスは、福岡市内と近郊の家を月1回巡回し、写真つきで報告します。
料金はライト6,600円・スタンダード12,100円・プレミアム18,700円(いずれも月額・税込)です。
売却を当社に頼むことは条件にしておらず、契約期間の縛りもありません。
遠方に住む兄弟にも同じ写真を共有できるので、「実家がいまどうなっているか」を全員が同じ情報で見ながら話せます。
貸して家賃を得ながら持ち続けたい場合は、不動産管理のページで、持ち続けた場合と売った場合を数字で比べる方法を案内しています。
「決め直す日」だけは決めておく
決めきれなかったときに必ず決めておきたいのは、次に話し合う日です。
「来年のお盆に集まったとき」「母が施設に入ったとき」など、全員が思い出せる合図にします。
日付のない「またそのうち」は、調査で2割を占めた「放置・何も考えていない」の入口になります。
相続登記の期限(知ってから3年以内)だけは待ってくれないので、名義の話は先に進めておいてください。
福岡市で空き家の相談はどこにすればよいか?
福岡市役所の住宅相談コーナーで司法書士による無料の空き家相談が受けられ、福岡県の宅建協会の窓口でも無料で相談できます。
売却や管理の具体的な話を進めたいときは、不動産会社に相談するのが早道です。
福岡市役所3階の住宅計画課内に、市の住宅相談コーナーがあります。
ここで毎月第2木曜日の午後1時から3時に、福岡県司法書士会から派遣された司法書士が空き家の相談に乗っています。
1組30分・無料で、相談日の前日正午までの予約制です(092-711-4808・先着順)。
相続人が分からない空き家の扱いや、特定空家にならないための管理の方法なども相談できます。
全宅連の呼びかけで、各都道府県の宅建協会も空き家の無料相談窓口を置いています。
福岡県では「福岡県空き家活用サポートセンター(イエカツ)」が窓口で、電話は092-726-6210(平日9時〜17時)です。
出典:福岡市 空き家相談
出典:全宅連 空き家相談窓口
不動産会社には「売る前の相談」をしてよい
同じ全宅連の調査では、空き家対策で不動産会社に最も期待することも聞いています。
答えは「買い取ってほしい」が16.7%、「どうしたらいいか相談に乗ってほしい」が11.4%でした。
一方で「わからない」などが35.8%と最も多く、何を頼めるのか分からない人が多いことも読み取れます。
当社は福岡県宅地建物取引業協会の会員(ハトマークの会員)です。
売ると決めていない段階の相談もお受けしており、家族会議の前に「この家はいくらくらいで、選択肢は何があるか」を整理するお手伝いもしています。
親の家の今の値段が分かると、「売る」「貸す」「残す」を同じ物差しで比べられます。
家族会議の材料づくりには、15分無料相談をお使いください。
相続の手続きと売却を並行したい方は相続した不動産の売却をご覧ください。
すでに空き家になっている家は福岡市の空き家売却のページで進め方を説明しています。
