空き家を売らずに持つなら|管理・賃貸・民泊の注意点
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士空き家になった実家を、すぐに売る決心がつかない方は少なくありません。
売らずに持つ道は、管理を頼む・貸す・民泊にするの3つ。
この記事は、福岡市に空き家を持ち、売るかどうかを決めかねている方に向けて書きました。
売らない場合に何ができて、いくらかかり、あとで売りたくなったときに困らないかを判断するためのものです。
先に結論を書くと、何も決めていない段階なら管理を頼んで時間を買うのが、あとから選び直しやすい方法です。
貸すなら、貸す前に売ったときの税金が変わらないかを比べてください。
相続した空き家の3,000万円控除は、一度でも貸すと使えなくなるためです。
2. 選択肢1:管理を頼んで持ち続けるとどうなる?
3. 選択肢2:空き家を賃貸に出すときに何が要るのか?
4. 貸す前に、売ったときの税金を比べておくべきなのはなぜ?
5. 選択肢3:空き家を民泊にするには何を確かめる?
6. 選択肢4:売ると決める前に、何と何を比べればよい?
空き家を売らないとき、不動産会社には何を頼めるのか?
不動産会社に頼めるのは売却だけではなく、空き家の見回り、賃貸に出す準備と入居者の管理、持ち続けた場合との数字の比較までです。
ところが、それが知られていないことが調査の数字に表れています。
全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)は2026年9月に「2026 住宅居住白書」を公表しました。
全国の20〜65歳の男女5,000人に、インターネットで聞いた調査です。
調査の期間は2026年7月30日から8月5日まで。
空き家対策で不動産業者に最も期待することを1つ選ぶ問いでは、「あてはまるものはない/わからない/答えられない」が35.8%で最多でした。
具体的な答えでは「買い取ってほしい」16.7%、「相談に乗ってほしい」11.4%、「買い手や借り手を紹介してほしい」9.3%の順でした。
3人に1人強が、不動産会社に期待することを具体的に挙げられなかったことになります。
すでに空き家を持つ人と、将来空き家になりそうな人に今の状況を聞いた問いもあります。
そこでは「放置・何も考えていない」が20.7%で、前年より2.0ポイント増えていました。
この調査は全国の20〜65歳への調査で、福岡市だけの数字ではありません。
当社では「遠方に住んでいて実家の管理ができない」といった、売るかどうかを決める前の段階のご相談もお受けしています。
家族でまだ話し合えていない方は、実家が空き家になりそうなときの家族会議から読むと、話し合う順番が見えてくるはずです。
選択肢1:管理を頼んで持ち続けるとどうなる?
管理を頼むと、誰も住んでいない家を月1回見回ってもらい、傷みや近所への迷惑を防ぎながら、売るか貸すかを決める時間を確保できます。
家に手を加えないので、あとで貸すにも売るにも道が残るのがこの方法の利点です。
向いている家と人
向いているのは、遠方に住んでいて様子を見に行けない方と、兄弟で意見がまとまらず結論を先に延ばしたい方です。
四十九日や一周忌までは家財に手を付けたくない、という事情も当てはまります。
反対に、すでに雨漏りや床の傷みが進んでいる家は、見回りだけでは劣化を止められません。
その場合は修繕するか、売るかを早めに決める段階に来ています。
費用はいくらかかるか
当社の空き家管理サービスは、福岡市内と近郊が対象で、月1回の巡回と写真つきの報告が基本です。
| プラン | 月額(税込) | 主な内容 |
|---|---|---|
| ライト | 6,600円 | 外まわりの点検、郵便物の回収と転送、写真つき報告 |
| スタンダード | 12,100円 | ライトの内容に加えて、室内の通風・換気、水回りの通水、簡易清掃 |
| プレミアム | 18,700円 | スタンダードの内容に加えて、動画つき報告、災害後の臨時点検(年3回まで)、草刈り年2回 |
戸建ての実家で基本になるスタンダードは、1年で145,200円です。
10年続けると約145万円。
30坪の木造を解体する費用の目安(150〜240万円)の、下限とほぼ同じ額です。
「とりあえず」の期間が延びるほど、この額は積み上がっていきます。
やめたくなったとき
当社の空き家管理には契約期間の縛りがなく、1か月単位で解約できます。
管理を頼んでも、売却を当社に依頼する必要はありません。
売ると決めたときに査定と売り出しの準備を早く始められるのは、毎月の巡回で建物の状態が分かっているからです。
管理を続けている間も、固定資産税は毎年かかり続けるので忘れないでください。
放置して管理が行き届かないと判断されると、住宅用地の固定資産税の軽減が外れることがあり、詳しくは空き家を放置したときのリスクにまとめています。
選択肢2:空き家を賃貸に出すときに何が要るのか?
空き家を貸すには、入居者が住める状態に直す費用と、家賃の集金や修繕の窓口を引き受ける管理の手配が要ります。
家賃が入る一方で、入居者がいる間は売り方が限られる点を先に知っておいてください。
向いている家と人
向いているのは、駅やバス停から歩ける距離にあり、水回りが使える状態の家です。
「いずれ子どもが住むかもしれないので手放したくない」という方にも、家を使いながら残せる方法です。
一方で、耐震や設備に大きな手入れが要る家は、貸す前の修繕費を家賃で取り戻すまでに年数がかかります。
貸す前の修繕費と管理料
貸す前には、壁紙や水回りの修繕、残った家財の片付け、鍵の交換などが必要になることが多くなります。
いくらかかるかは家の状態で大きく違うため、見積りを取ってから家賃の見込みと並べてください。
貸し出したあとの管理は、当社の不動産管理でお引き受けしています。
賃貸建物の管理料は、物件と管理内容に応じて個別にお見積もりします。
家賃8万円の戸建てなら、月2,400〜4,000円ほどの計算です。
空き家を貸すための進め方のご提案もしていますので、貸せる家かどうかから相談いただけます。
やめたくなったとき:オーナーチェンジと定期借家
入居者がいるまま売ることを、オーナーチェンジといいます。
この場合、買主は家賃収入を目当てにする投資家に限られ、自分で住みたい人には売れません。
普通の賃貸借契約では、貸主の都合だけで入居者に出てもらうことはできないため、「空けて売る」ことも簡単ではありません。
将来売る可能性があるなら、定期借家契約(期間が来たら更新せずに終わる借家契約)で期間を区切って貸す方法があります。
定期借家にするには、契約とは別に「更新が無いこと」を前もって入居者に説明する手続きが要り、これを欠くと普通の契約として扱われます。
家賃は普通の契約より低めに設定されることが多いので、その差も含めて比べてください。
定期借家に必要な書面と通知の時期、貸したあとに売るときの控除の期限は、空き家を貸す前に決めることで詳しく書いています。
貸す前に、売ったときの税金を比べておくべきなのはなぜ?
空き家を一度でも貸すと、相続した空き家を売るときの3,000万円控除が使えなくなり、売ったときの税金が大きく変わることがあるからです。
家賃で得た額より、控除を失って増えた税金のほうが大きくなることもあるでしょう。
相続した空き家の3,000万円控除は、貸すと使えない
親が一人で住んでいた家を相続して売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。
国税庁の要件には「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと」とあります。
つまり、相続してから売るまでに一度でも貸すと、この控除は使えません。
ほかの主な条件は次の3つです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること
- 区分所有のマンションではないこと
- 売却代金が1億円以下であること
売る期限は、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
2024年1月1日以後の売却で、家と敷地を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたりの控除が2,000万円までになります。
この特例自体の適用期限は、2027年12月31日までの売却です。
自分が住んでいた家は「3年目の年末」が期限
転勤や住み替えで自分が住まなくなった家なら、居住用の3,000万円控除のほうが関係します。
こちらは住まなくなったあとに貸していても使えます。
ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。
貸しているうちにこの期限を過ぎると、控除を受けられないまま売ることになります。
家を取り壊して土地で売る場合は、取り壊してから1年以内に売買契約を結ぶことと、その間に土地を貸駐車場などに使わないことも条件です。
どちらの控除も、使えるかどうかで税額が数百万円単位で変わることがあります。
貸すと決める前に、手取りの試算で「控除ありで今売った場合」の手取りを出してみてください。
個別の税額は税理士にご確認ください。
相続した実家を売るときの手順と控除の全体は、相続した実家を売却する流れで解説しています。
選択肢3:空き家を民泊にするには何を確かめる?
空き家で民泊をするには、住宅宿泊事業法にもとづく届出が必要で、人を泊められるのは1年度に180日までです。
1年を通して営業したい場合は、旅館業法の許可という別の手続きです。
年180日の上限と、福岡県への届出
福岡県のページには、年間の提供日数は180日以内で、数え方は4月から翌年3月までの1年度と書かれています。
届出先は福岡市ではなく福岡県で、市内を含む県内全域の届出を県の生活衛生課が受け付けています。
届出に添える主な書類は、建物の登記事項証明書、近所の方へ事前に知らせたことを示す事前周知報告書、消防署が出す消防法令適合通知書など。
家主が住んでいない「家主不在型」の場合、管理は住宅宿泊管理業者に任せなければなりません。
分譲マンションの1室なら、管理規約で民泊を禁止していないかも先に確かめてください。
福岡市で先に確かめること
福岡市は、市街化調整区域(原則として建物を建てない区域)にある住宅の民泊について、扱いを示しています。
農家住宅や分家住宅のように、特定の人が住む前提で建築が許可された住宅では、家主不在型の民泊はできません。
市の郊外に建つ実家は、市街化調整区域に入っていないかをまず調べてください。
このほか、地域や期間の制限、建物の構造に関わる基準は、物件ごとに県と市の担当窓口で確認が要ります。
届出に要る書類や始めたあとの報告、宿泊税までの流れは、空き家を民泊にするにはで詳しく書きました。
民泊の運営は、当社が提携している運営会社が受け持ちます。
空き家を民泊に使えるかどうかのご相談は、当社が窓口になってお受けします。
まずは15分の無料相談でご相談ください。
選択肢4:売ると決める前に、何と何を比べればよい?
比べるのは「持ち続けた場合に毎年出ていくお金」と「今売った場合に手元に残るお金」の2つで、同じ表に並べると判断がつきます。
管理・賃貸・民泊のどれを選んだあとでも、この比較はやり直せるものです。
売る・貸す・民泊の3つを手間や税金で1枚の表にし、決める順番まで書いたのが相続した実家は売る・貸す・民泊のどれ?です。
持ち続ける費用と今売った手取りを並べる
持ち続ける費用には、固定資産税、管理の費用、火災保険、草刈りや修繕の費用が入ります。
今売った場合の手取りは、売却価格から仲介手数料・印紙税・登記費用・譲渡所得税を引いた額です。
この額は手取り計算シミュレーターで出せます。
貸している物件なら、当社の不動産管理で「保有・売却の比較レポート」をお出しします。
毎年の収支、今売った場合の手取り、今後10年の修繕費の見通しを1枚に並べたものです。
管理内容は月次で報告し、保有・売却の比較提案は、ご希望に応じて内容・範囲・費用を確認します。
駐車場の資料作成料・提供回数は個別確認です。
売ると決めたときの進め方
売ると決めた場合、片付けをしないまま売る方法や、当社が直接買い取る方法もあります。
当社が扱った福岡市東区の築50年を超える戸建ては、傾斜地で融資がつきにくい条件でした。
それでも解体せずに、賃貸用の不動産として買主が見つかっています(売却事例)。
空き家の売り方の全体は空き家の売却に、遠方から現地に行かずに進める方法は遠方の実家の維持費をゼロにするにまとめています。
仲介・買取など売り方の違いは4つの売り方の比較でご覧いただけます。
管理にするか、貸すか、売るか。
まだ決めていなくても、物件の住所と今のご事情が分かれば、管理の見積りと売った場合の見通しを一緒にお出しできます。
