一棟の売却はどこに頼む?大手・地場・買取業者の違い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士一棟アパートや一棟ビルを初めて売るとき、まず詰まるのは「どこに頼むか」でしょう。
自宅の売却と違って、近所の会社に声をかけて決める、という進め方がしっくりきません。
頼み先は、大きく3つに分かれます。
大手の仲介会社、地場の仲介会社、そして買取業者です。
この3つに上下の順番はありません。
価格を取りにいくか、早さと確実さを取るかで、向いている相手が変わるからです。
そして選ぶときに見るのは、会社の大きさではありません。
査定の根拠を説明できるか、売主側に立つか、担当が最後まで同じか、資料を先に整えてくれるかの4点です。
この記事では、3つの違いを表で並べたうえで、福岡市の取引の中身から選び方を考えました。
2. 大手の仲介・地場の仲介・買取業者は、具体的に何が違うのですか
3. 会社の大きさより、何を確かめればよいのですか
4. 福岡市の取引の中身から、会社選びは変わりますか
5. 媒介契約は、一棟ではどれを選べばよいのですか
6. 当社に頼む場合は、どういう形になりますか
一棟の売却は、どこに頼めばよいのですか
価格を優先するなら仲介、期日を優先するなら買取業者という分かれ方になります。
仲介のなかで大手と地場のどちらが向くかは、物件の価格帯と所在地で変わります。
3つの違いを表で見る
下の表は、一棟ものを売るときの頼み先の違いを並べたものです。
| 頼み先 | 強み | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 大手の仲介 | 事業用の専門部署があり、法人・投資家の買主にあたる網が広い | 担当が異動することがある。小さな物件は優先順位が下がることもある |
| 地場の仲介 | 地域の道路・用途地域・入居付けの事情に通じている。担当が替わりにくい | 遠方の買主への届き方は、会社ごとに差がある |
| 買取業者 | 期日を区切れる。買主を探す期間が要らない | 再販の費用と利益を先に引くため、価格は仲介より下がりやすい |
表のとおり、強みと気をつける点は裏返しの関係になっています。
この表を自分の物件に当てはめるには、売る期日が決まっているかどうかを先に決めてください。
価格と早さは、ふつう両方は取れない
仲介は、買主を探す期間と引き換えに価格を取る方法です。
買取業者は、価格と引き換えに期日を取る方法になります。
どちらが得かは、売る理由によって変わります。
相続の申告期限や、借入の借換えの期日が迫っているなら、価格差より期日のほうが重い場面もあるでしょう。
期日に余裕があるなら、まず仲介で出して、反応を見てから買取を検討する順番も取れます。
大手の仲介・地場の仲介・買取業者は、具体的に何が違うのですか
買主をどこから連れてくるかが、いちばん大きな違いです。
価格はその結果として決まるので、買主の出どころを先に聞いてください。
大手の仲介 — 事業用の部署と、遠方の買主
大手には、居住用とは別に事業用・投資用を扱う部署があることが多いです。
資産管理会社や不動産投資を行う法人との付き合いがあり、福岡市外の買主にも声をかけられます。
一方で、組織が大きいぶん担当者の異動は起きます。
売出しから決済まで1年近くかかる物件では、途中で担当が替わることも想定しておいてください。
地場の仲介 — 地域の事情と、担当の継続
地場の会社の強みは、机の上の数字に出ない情報です。
前面道路の幅、用途地域、近くの建替えの動き、入居が付きにくい間取り。
こうしたことは、その地域で売買と賃貸の両方を見ている会社のほうが具体的に答えられます。
担当者が最後まで同じになりやすいのも、人数の少ない会社の利点です。
ただし遠方の買主への届き方は、会社ごとに差があります。
レインズへの登録のほか、どの媒体に出すのかを最初に確かめてください。
買取業者 — 早さと確実さ
買取業者は、自社が買主になります。
買主を探す期間が要らないので、決済日を先に決められる形です。
そのかわり、再販までのリフォーム費用・保有中の経費・利益を先に引いた金額が提示額になります。
だから価格は仲介より下がりやすい、という関係です。
入居者やテナントが付いたまま売る場合の扱いは 一棟のオーナーチェンジ売却|敷金・保証金はどう引き継ぐ? に書きました。
会社の大きさより、何を確かめればよいのですか
確かめるのは4点です。
査定の根拠を説明できるか、売主側に立つか、担当が最後まで同じか、資料を先に整えてくれるか。
1. 査定の根拠を説明できるか
一棟ものの査定額は、1枚の紙に金額だけ書いて出せるものではありません。
現在の賃料、空室、修繕の履歴、残っている耐用年数、周辺の取引事例。
この材料のどれをどう見て出した数字なのかを、口で説明できるかを聞いてください。
「このくらいで出せます」とだけ言う会社と、材料を並べる会社では、売出し後の値付けの直し方も変わります。
とくにレントロールの読み方を聞いてみてください。
実際に入っている賃料と、空室を埋めたときの想定賃料は別の数字です。
後者だけで積み上げた査定額は、売出しのあとで下がりやすくなります。
なお、利回りの相場を1つの数字で示す案内は、そのまま当てにしないでください。
築年数・構造・立地で中身がまったく違うため、1つの数字で語れるものではありません。
2. 売主側に立つか(囲い込みをしないか)
囲い込みとは、他社から買主の紹介があっても取り次がず、自社で買主を見つけようとする動きです。
売主から見ると、買主の候補が自社の範囲に狭まります。
一棟ものは買主の数がもともと限られるので、ここが価格に直接きいてきます。
売主側と買主側のどちらに付くのか、両方に付くことがあるのかを、媒介契約の前に聞いてください。
両手仲介と囲い込みの関係は 一棟マンション・ビル売却の仲介手数料|1億〜5億円の早見表 で詳しく書きました。
3. 担当が最後まで同じか
一棟の売却では、賃貸借契約・修繕の履歴・テナントとのやり取りを、担当者が頭に入れたまま進めます。
途中で替わると、その引き継ぎが抜け落ちかねません。
抜けたまま契約書を作ると、敷金の引き継ぎや原状回復の負担の記載で食い違いが出ます。
最初の面談で「決済までこの方が担当ですか」と確かめるだけで足ります。
4. 資料を先に整えてくれるか
一棟ものは、資料がそろうまで買主が判断に入れません。
レントロール、確定申告書、修繕の履歴、建築確認や検査済証、境界の図面。
声をかけた段階で「まずこれを集めましょう」と順番を示す会社と、売出価格の話から始める会社があるでしょう。
前者を選んでください。
資料が欠けたまま売り出すと、買付が入ってから手続が止まります。
必要な書類と取得先は 収益物件の売却に必要な書類|取得先と手数料の一覧 に一覧をまとめました。
福岡市の取引の中身から、会社選びは変わりますか
変わります。
福岡市の一棟ものは1億円以上の取引が多く、買主が個人の住宅購入者ではないからです。
当社は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格情報を区ごとに集計しています。
2024年第2四半期から2026年第1四半期までの8四半期では、共同住宅490件・事務所店舗146件の取引がありました。
この情報は買主へのアンケートに回答があった取引だけを載せたもので、全数ではありません。
価格帯で、買主の種類が変わる
1億円以上の取引は、共同住宅で47%、事務所・店舗では67%を占めていました。
共同住宅でいちばん厚いのは5,000万〜1億円の帯で、152件(31%)です。
この金額を現金か事業用の融資で動かせるのは、法人や資産管理会社、専業の投資家になります。
つまり買主の網は、住宅を探している人の名簿とは別のところにあるわけです。
声をかける会社には、事業用の買主をどこから連れてくるのかを具体的に聞いてください。
区によって、物件の種類が偏る
同じ集計を10年分で見ると、一棟の共同住宅は東区622件・博多区553件・南区539件の順に多く、この3区で全体の57%になりました。
事務所・店舗は博多区215件と中央区165件で58%を占め、都心の2区に寄っていました。
住宅系と事業用系で、取引の多い場所が違うということです。
天神や博多駅周辺の事業用ビルと、東区や南区のアパートでは、買主も見る材料も別になります。
物件のある区で、その種類の取引を扱ったことがあるかを確かめてください。
築古の帯は、買主を選ぶ
同じ10年分の集計では、一棟の共同住宅のうち築31年以上の建物が31%を占めていました。
事務所・店舗では築41年以上が21%、築31〜40年が22%で、合わせて4割を超えます。
築年数が進むと、買主が使える融資の期間は短くなります。
買える相手が絞られるぶん、どの層にあたれる会社かが効いてくるわけです。
旧耐震の建物の売り方は 旧耐震ビル・一棟マンションの売却|築古で変わる買主と売り方 にまとめています。
媒介契約は、一棟ではどれを選べばよいのですか
1社に絞る専任・専属専任か、複数に出す一般のどちらかを選びます。
一棟ものは買主の数が限られるため、どちらを選ぶかで動き方がはっきり変わる場面です。
1社に絞る場合に確かめること
専任と専属専任には、レインズへの登録と売主への報告の義務が付きます。
報告の頻度と、レインズの売却依頼主専用確認画面を使えるかを聞いてください。
この画面では、自分の物件が「公開中」になっているかを売主自身が確かめられます。
囲い込みを心配するなら、ここを見るのがいちばん早い方法です。
3種類の違いは 媒介契約の種類 にまとめました。
複数に出す場合に起きること
一般媒介にすると、複数の会社が同時に買主を探します。
一方で、どの会社も「自社で決まるとは限らない」状態になるため、費用のかかる広告には踏み込みにくくなります。
資料の作成も、各社がばらばらに頼んでくる形になりがちです。
一棟もので一般媒介を選ぶなら、資料を売主側で1組作って各社へ同じものを渡す段取りが要ります。
当社に頼む場合は、どういう形になりますか
当社は福岡市博多区の売却専門で、売主側の仲介として入り、囲い込みをしません。
売主側に立つので、買主側に別の会社が付くこともあります。
代表が最初の面談から決済まで担当するため、途中で引き継ぎは起きません。
個別の税額と有利不利の判断は税理士の領域になるので、当社は税理士・司法書士と連携して進めます。
なお、当サイトの 手取りの試算 は自宅の売却を前提にした計算です。
一棟ものの消費税や減価償却は織り込んでいないので、一棟には当てはめないでください。
一棟ものの税金の考え方は 一棟アパート・ビル売却の税金|減価償却で手取りが減る理由 に書きました。
売却の全体像は 福岡市の一棟ビル・一棟マンション・アパートの売却 にまとめています。
相談から決済までの順番は 一棟ビル・一棟マンション売却の流れ|自宅と違う5つの点 でご確認いただけます。
面談では、この記事の4点をそのまま聞いていただいて構いません。
答えられない会社があれば、それも判断の材料になります。
査定額の根拠まで聞いてみたい方は、無料査定 から一棟アパート・一棟ビルを選んでお送りください。
