一棟マンション・ビル売却の仲介手数料|1億〜5億円の早見表
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士1億円から5億円ほどの一棟マンション・アパート・ビルを売ろうとしている、個人オーナーと資産管理法人の方へ書いています。
先に知りたいのは、仲介手数料が何百万円で済むのか、それとも1,000万円を超えるのかという一点のはずです。
上限は(売買価格×3%+6万円)×1.1で、1億円なら税込336万6,000円、5億円なら1,656万6,000円。
式そのものは区分マンションと同じですが、一棟ものには建物の消費税という別の論点が加わります。
この記事で扱うのは、上限の式と早見表・消費税の扱い・支払いの時期・手数料以外の費用・両手仲介・福岡市の価格帯の6つです。
税額の個別の判断は税理士の仕事なので、ここでは売主が自分で原典を確かめられる範囲を書きます。
2. 建物に消費税がかかる取引では、どの金額に3%を掛けますか
3. 手数料は上限の額をそのまま払うものですか、いつ払いますか
4. 手数料のほかに、売主が払う費用は何がありますか
5. 両手仲介と囲い込みは、一棟ものの売主にどう関係しますか
6. 福岡市で実際に取引されている価格帯だと、手数料はいくらになりますか
一棟マンションやビルの仲介手数料は、いくらが上限ですか
売買価格が800万円を超える取引の上限は(売買価格×3%+6万円)×1.1で、2億円なら税込666万6,000円です。
根拠は宅地建物取引業法46条にもとづく国土交通大臣の告示で、昭和45年建設省告示第1552号といいます。
直近の改正は令和6年7月1日に施行されました。
居住用か収益用か、区分か一棟かで率を変える定めは、この告示にありません。
1億円から5億円までの早見表
下の表は、売買価格をそのまま式に入れたときの上限額です。
| 売買価格 | 上限(税抜) | 上限(税込) |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 156万円 | 171万6,000円 |
| 1億円 | 306万円 | 336万6,000円 |
| 1億5,000万円 | 456万円 | 501万6,000円 |
| 2億円 | 606万円 | 666万6,000円 |
| 3億円 | 906万円 | 996万6,000円 |
| 5億円 | 1,506万円 | 1,656万6,000円 |
価格が1億円増えるごとに、上限は税込で330万円ずつ増えます。
3億円の取引の上限は、5,000万円の取引のおよそ5.8倍。
この金額は、売主と買主のそれぞれが自分の依頼した会社に払う上限です。
「3%+6万円」は、告示の3段階の率をまとめた速算式
告示の本文に「3%+6万円」という式は出てきません。
書かれているのは、代金を3つの帯に分けて別々の率を掛ける方法です。
200万円以下の部分に5.5%、200万円を超え400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%。
いずれも消費税を含んだ率なので、税抜きに直すと5%・4%・3%になります。
全体に3%を掛けると、下の2つの帯で2%ぶんの4万円と1%ぶんの2万円が足りません。
この合計6万円を足したものが速算式で、400万円を超える取引なら告示どおりの計算と答えが一致します。
800万円以下の低廉な空家等には30万円+消費税を上限とする特例がありますが、一棟ものの価格帯には関係しません。
特例の中身は800万円以下の仲介手数料で書きました。
建物に消費税がかかる取引では、どの金額に3%を掛けますか
消費税を抜いた本体価格に掛けます。
一棟ものの売主が見積書でいちばん見落としやすいのが、この点です。
告示の第二は、報酬の計算の基礎を「当該売買に係る代金の額」と定めています。
そのすぐ後ろに、当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする、という括弧書きが付いています。
売買契約書の総額に建物の消費税が入っているなら、その消費税を引いた金額が計算の出発点です。
反対に報酬の額のほうは消費税を含んだ金額で決められているので、式の最後に1.1を掛けます。
土地は非課税なので、抜くのは建物の消費税だけ
国税庁は、土地の譲渡を消費税の非課税取引として挙げています。
総額から引くのは建物ぶんの消費税に限られるので、仮の数字で確かめてみましょう。
総額2億円のうち、土地が9,000万円、建物が税込1億1,000万円(本体1億円・消費税1,000万円)の取引とします。
計算の基礎は2億円ではなく、消費税1,000万円を引いた1億9,000万円。
上限は(1億9,000万円×3%+6万円)×1.1で、税込633万6,000円になります。
2億円にそのまま掛けた666万6,000円と比べると、33万円の差です。
総額に占める建物の割合が大きいほど、この差は開きます。
見積書や媒介契約書の報酬額が総額に掛けた数字になっていたら、計算の根拠を尋ねてください。
建物に消費税がかかるかどうかは、売主の立場で変わる
消費税の対象は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡です。
国税庁の説明では、法人の活動はすべて事業として行う取引にあたります。
ただし、消費税を納める義務があるかどうかは別の判定で、個人オーナーでは結論が分かれるところです。
土地と建物の内訳をいくらにするかも、消費税と手数料の両方を動かします。
ここは当社が判断できる範囲の外です。
内訳の決め方と税額は、売買契約書を作る前に税理士へ確認してください。
国税庁が挙げている按分の方法は収益物件の売却と消費税に整理しました。
手数料は上限の額をそのまま払うものですか、いつ払いますか
告示が決めているのは上限だけで、実際の額は媒介契約で協議して決め、支払うのは売買契約が成立したあとです。
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、媒介契約の場面でこう述べています。
報酬の限度額を当然に請求できるものではなく、具体的な額は媒介業務の内容等を考慮して依頼者と協議して決める。
標準媒介契約約款にも、報酬の額は告示の限度額の範囲内で協議のうえ定めると書かれています。
3億円の取引で率が0.5%違えば、税込で165万円の差です。
金額が大きい一棟ものでは、その額でどこまでの業務を頼むのかを先に決めておかないと、あとで比べようがありません。
買主へ出す資料の範囲、賃貸借契約の一覧の整理、入居者やテナントへの通知の段取りまで含むのかを、書面で確かめてください。
成立しなければ発生しない成功報酬で、受け取りは契約書の交付後
約款は、媒介によって売買契約が成立したときに報酬を請求できると定めています。
半年かけて買主を探しても、契約に至らなければ手数料は発生しません。
不動産会社が受け取れるのは、宅地建物取引業法37条の書面を契約の当事者に交付したあとです。
支払いの時期は媒介契約書の空欄に書き込む形で、約款が日取りを決めているわけではありません。
売買契約のときに半額、引き渡しのときに残りの半額とするのが一般的な定め方です。
2億円なら、契約の日に333万3,000円、決済の日に333万3,000円という資金の動きです。
買主の融資の不成立を解除条件とした契約で不成立が確定したときは、受け取った報酬の全額を返す定めも約款に入っています。
契約後に解除になった場合の扱いは報酬請求権の裁判例で整理しました。
手数料とは別に請求できるのは、依頼した広告の料金と特別の費用だけ
告示は、定められた報酬のほかに金銭を受け取ることを禁じています。
例外は、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額です。
解釈・運用の考え方は、依頼者の特別の依頼で支出する費用も、事前の承諾があれば別に受け取れるとしています。
裏を返すと、頼んでいない広告の費用や「案内料」の名目の請求には根拠がありません。
建物の調査や資料の作成を勧められたら、頼む前に金額と負担する人を書面にしておきます。
手数料のほかに、売主が払う費用は何がありますか
主なものは印紙税・抵当権の抹消・測量・借入の期限前返済の手数料の4つで、金額がいちばん読みにくいのは最後の1つです。
| 費用 | 目安 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 2億円で税込666万6,000円が上限 | 媒介契約書 |
| 印紙税(売買契約書) | 1億円超5億円以下で6万円 | 国税庁 No.7108 |
| 抵当権抹消 | 1〜2万円台 | 司法書士 |
| 確定測量 | 40〜60万円程度 | 土地家屋調査士 |
| 期限前返済の手数料 | 金融機関と契約ごとに違う | 借入先の銀行 |
| 譲渡にかかる税 | 個別に計算 | 税理士 |
抹消と測量の目安は当社のサイトで共通に使っている数字で、土地の筆数や隣地の数によって上下します。
2億円の取引なら、印紙・抹消・測量の3つを足して47万〜68万円ほどで、手数料のおよそ1割です。
印紙税は1億円を超えると6万円、5億円を超えると16万円
売買契約書に貼る収入印紙の額は、記載された契約金額で決まります。
軽減措置の対象は、令和9年3月31日(2027年3月31日)までに作成される契約書です。
軽減後の税額は、1億円超5億円以下で6万円、5億円超10億円以下で16万円。
5,000万円超1億円以下の3万円と比べると、2倍から5倍あまりの額になります。
本則の税額は、1億円超5億円以下が10万円、5億円超10億円以下が20万円です。
軽減が当たるかどうかを決めるのは契約書を作成した日で、決済の日ではありません。
期限前返済の手数料は、売り出す前に銀行へ聞く
事業用の借入を売却代金で一括返済すると、金融機関から期限前返済の手数料を求められることがあります。
金額の決め方は金融機関と契約ごとに違うので、この記事では数字を書きません。
売り出す前に、残債の額と一括返済の手数料の2つを借入先へ問い合わせてください。
この2つが分からないまま価格を決めると、決済の日に手元へ残る額が読めません。
抵当権抹消の登記は決済と同じ日に申請するので、司法書士の手配も並行して進めます。
居住用の手取りを試算する売却シミュレーターもありますが、一棟ものの消費税や減価償却は織り込んでいません。
両手仲介と囲い込みは、一棟ものの売主にどう関係しますか
1社が売主と買主の両方から上限まで受け取ると報酬は2倍になるので、買主を自社で見つけたい動機が金額に比例して強まります。
解釈・運用の考え方は、告示の上限を「依頼者のそれぞれ一方から受けることのできる限度額」と説明しています。
売主と買主の双方から依頼を受けた会社は、それぞれから上限まで受け取れるという意味です。
これが両手仲介と呼ばれる形で、法律が禁じているわけではありません。
3億円の取引では、片方で996万6,000円、双方で1,993万2,000円。
3,000万円のマンションなら双方で211万2,000円なので、1件あたりの差はおよそ1,780万円です。
問題になるのは両手そのものではなく、両手にするために他社の問い合わせを止める、いわゆる囲い込みのほうです。
レインズの取引状況を偽ると、指示処分の対象
専任媒介と専属専任媒介では、不動産会社に指定流通機構(レインズ)への登録義務があります。
令和7年1月1日からは、登録した物件の取引状況を登録することも義務になりました。
解釈・運用の考え方は、申込みの受付に関する状況などの登録内容が事実と異なるときは指示処分の対象となる、と明記しています。
売主は登録証明書に載っている二次元コードから、自分の物件の取引状況を専用の画面で見られます。
申し出ていないのに「売主都合で一時紹介停止中」になっていたら、その日のうちに理由を聞いてください。
確かめる手順はレインズ登録の確かめ方にまとめました。
一般媒介には登録の義務が無いので、情報を出す範囲と順番を媒介契約の前に書面で取り決めます。
3種類の媒介契約の違いは媒介契約の種類をご覧ください。
当社は売主側に入り、囲い込みをしません
当社は福岡市博多区にある売却専門の会社で、売主側の仲介として入ります。
買主は広く探すので、買主側に別の不動産会社が付く取引も普通に起きます。
その場合に当社が受け取るのは、売主からの報酬だけです。
窓口は代表が最後まで務め、税務と登記は連携している税理士・司法書士につなぎます。
福岡市で実際に取引されている価格帯だと、手数料はいくらになりますか
福岡市7区の共同住宅は490件のうち228件が1億円以上で、1億〜3億円の帯なら上限は税込336万6,000円〜996万6,000円です。
価格帯ごとの件数と、手数料の上限
当社は国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格情報を、2026年9月19日に集計しました。
対象は福岡市7区、2024年第2四半期から2026年第1四半期までの8四半期。
買主へのアンケートに回答があった取引だけの数字で、全数ではありません。
| 価格帯 | 共同住宅(490件) | 事務所・店舗(146件) | 手数料の上限(税込) |
|---|---|---|---|
| 5,000万円未満 | 110件 | 24件 | 171万6,000円未満 |
| 5,000万〜1億円 | 152件 | 24件 | 171万6,000円〜336万6,000円 |
| 1億〜3億円 | 138件 | 49件 | 336万6,000円〜996万6,000円 |
| 3億〜5億円 | 44件 | 20件 | 996万6,000円〜1,656万6,000円 |
| 5億円以上 | 46件 | 29件 | 1,656万6,000円以上 |
一棟のマンション・アパートにあたる共同住宅は、490件のうち228件、47%が1億円以上でした。
事務所・店舗の建物では146件のうち98件で、67%にのぼります。
区分マンションの記事が前提にしている「手数料100万円前後」とは、桁が1つ違う世界です。
回答のあった取引で見るかぎり、福岡市の一棟ものの半数前後は、上限が300万円を超える価格帯で動いています。
公表されている取引価格には消費税の内訳が無いので、表は取引価格をそのまま式に入れた目安です。
建物に消費税がかかった取引なら、実際の上限は表の額より下がります。
2016年から2025年の10年で見ると、共同住宅2,982件のうち東区が622件、博多区が553件、南区が539件でした。
事務所・店舗の651件は、博多区215件と中央区165件で6割近くを占めます。
自分の物件がどの帯に入るかで、手数料の額も、総額に占める建物の消費税の重さも変わります。
次に何をすればよいですか
手元でできることは3つです。
- 売買価格の見込みを早見表に当てて、手数料の上限を出す
- 借入先に、残債の額と一括返済の手数料を問い合わせる
- 他社の見積書があれば、3%を掛けた金額が消費税を抜いた本体価格かを確かめる
他社の査定書や媒介契約書の案を、一緒に読むところから始めてもかまいません。
一棟の売却で当社がどう進めるかは、福岡市の一棟ビル・マンション・アパート売却のページにまとめました。
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