福岡市の一棟もの取引は年何件?国交省データで見る価格帯
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士一棟マンションや一棟ビルを持っていると、売るときの相手がどれだけいるのかが分かりません。
自宅のマンションなら、同じ建物の別の部屋が売りに出ます。
一棟ものには、その比べ方がありません。
そこで当社は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の取引価格情報を、福岡市7区について集計しました。
集計の時点は2026年9月19日です。
結果から先に申し上げます。
共同住宅(一棟マンション・アパート)は、2016年から2025年の10年間で2,982件でした。
1年あたり232〜402件です。
事務所・店舗の建物は、同じ10年で651件でした。
この記事は、福岡市に一棟ものをお持ちで「そもそも売れるのか」を確かめたいオーナーに向けて書いています。
価格帯・区別・築年数・構造まで分けて載せました。
先にお断りしておきます。
この取引価格情報は、買主へのアンケートに回答があった取引だけが入っています。
福岡市で実際に動いた一棟ものの全数ではありません。
2. どの価格帯の取引が多いのですか?
3. 区によって、動き方は違いますか?
4. 建物の古さと構造は、どう分かれていますか?
5. この数字を、自分の一棟にどう使いますか?
6. 次にやること
福岡市で一棟ものは、年に何件売買されていますか?
共同住宅が1年あたり232〜402件、事務所・店舗の建物が50〜84件です。
10年の合計では、共同住宅が事務所・店舗の4.6倍にあたります。
10年の件数と、1年あたりの幅
| 建物の種類 | 10年の件数 | 1年あたり |
|---|---|---|
| 共同住宅(一棟マンション・アパート) | 2,982件 | 232〜402件 |
| 事務所・店舗の建物 | 651件 | 50〜84件 |
対象は福岡市7区、2016年から2025年までの10年間です。
集計の時点は2026年9月19日になります。
共同住宅の年300件弱というのは、月に25件ほどという規模です。
毎日動いているわけではありませんが、売りに出して相手が1人も現れない市場でもありません。
事務所・店舗の年65件ほどは、月に5件ほどという数になります。
こちらは、同じ条件の比較対象を探すのが難しい規模です。
区分所有のマンションと比べると、差がはっきりします。
当社が同じ取引価格情報から集計した福岡市7区の区分マンションは、2024年第2四半期から2026年第1四半期までの2年間で3,739件でした。
同じ2年間の一棟の共同住宅は490件です。
7.6倍の差になります。
お部屋単位の売買が日常的に起きている一方、棟ごとの売買は週に数件という頻度だということです。
区分マンションの区ごとの件数は福岡市の売却相場の各区のページに載せています。
この数字は全数ではない
もう一度書きます。
取引価格情報は、国土交通省が買主へアンケートを送り、回答のあったものを公開する仕組みです。
調査票が届くのは買主だけで、送付先は登記簿に記載された権利者の住所になります。
売主には届きません。
登記された売買のすべてが入っているわけではありません。
公開のされ方にも、知っておいていただきたい加工が2つあります。
1つめは価格で、有効数字2桁に丸められています。
丸め以外の補正はしていないという説明なので、桁の感覚は信用できる一方、1万円単位の比較には使えません。
2つめは所在地で、町・大字のレベルまでしか出ません。
どの建物の取引かを特定することはできない形です。
ですから、上の件数は「少なくともこれだけはあった」という下限として読んでください。
実際の取引は、これより多いと考えてください。
直近の年の件数が少なく見える理由
1年あたり232〜402件という幅には、理由があります。
調査票が買主に送られるのは、不動産登記の受付日から通常1〜2か月後です。
そこから回答が返り、四半期単位でまとめて3か月ごとに公開されます。
つまり、取引から公開までに半年前後の間があきます。
そのため、集計した時点に近い年は、まだ回答がそろっていません。
2025年の件数が前の年より少なく出ていても、それは「取引が減った」という意味ではありません。
回答が集まりきっていないだけです。
当社がこの記事で年ごとの増減を論じないのは、そういう理由からです。
どの価格帯の取引が多いのですか?
共同住宅では5,000万〜1億円の帯がいちばん多く、直近2年で152件でした。
事務所・店舗では1億〜3億円が最多の49件です。
直近8四半期の価格帯
| 価格帯 | 共同住宅 | 事務所・店舗 |
|---|---|---|
| 5,000万円未満 | 110件 | 24件 |
| 5,000万〜1億円 | 152件 | 24件 |
| 1億〜3億円 | 138件 | 49件 |
| 3億〜5億円 | 44件 | 20件 |
| 5億円以上 | 46件 | 29件 |
| 合計 | 490件 | 146件 |
対象期間は2024年第2四半期から2026年第1四半期までの8四半期、集計の時点は2026年9月19日です。
共同住宅は、1億円未満が490件のうち262件を占めます。
半分を超える取引が1億円未満だということになります。
事務所・店舗は逆で、146件のうち98件が1億円以上でした。
同じ「一棟もの」でも、売買が起きている金額の中心が違います。
1億〜5億円は、2年で251件あった
1億円から5億円までの帯を足すと、251件になります。
共同住宅182件と、事務所・店舗69件の合計です。
8四半期で251件ですから、月に10件ほどのペースです。
1億円を超える物件は買主が限られると言われますが、福岡市では月に10件前後が記録に残っています。
この帯の仲介手数料の目安は一棟マンション・ビル売却の仲介手数料|1億〜5億円の早見表に早見表で出しました。
件数が多い帯は「買主が多い」という意味まで
ここは読み間違えやすいところです。
件数が多いことが示すのは、その金額を出せる買主が市場にいたという事実だけです。
ご自身の物件がその金額で売れることを示すものではありません。
価格は、立地・建物の状態・賃料の入り方・融資の付きやすさで決まります。
件数は、そのうち「相手がいるかどうか」の1点にしか答えていません。
当社は、この表から価格の見通しを申し上げることはいたしません。
もう1つ、この集計に入っていないものがあります。
賃料と、空室がどれだけあったかです。
取引価格情報には、価格・面積・建築年・構造・最寄駅は入りますが、その建物がいくらの家賃で回っていたかは入りません。
一棟ものの価格は、この入ってこない部分で大きく動きます。
満室の建物と、3割空いている建物が、同じ件数の「1件」として並んでいるわけです。
ですから、相場をつかむ目的に使えるのはここまでです。
ご自身の物件の金額は、レントロールを見てからの話になります。
欄の作り方はレントロールの作り方|欄の一覧と買主が見る5点にまとめました。
区によって、動き方は違いますか?
違います。
共同住宅の10年の件数は、いちばん多い東区といちばん少ない西区で2.6倍の差があります。
共同住宅の7区別(10年の件数)
| 区 | 共同住宅の取引件数 |
|---|---|
| 東区 | 622件 |
| 博多区 | 553件 |
| 南区 | 539件 |
| 城南区 | 357件 |
| 中央区 | 356件 |
| 早良区 | 318件 |
| 西区 | 237件 |
対象は2016年から2025年までの10年間、集計の時点は2026年9月19日です。
ここで注意していただきたいのは、件数が棟の数だという点です。
1件あたりの規模や金額は、この数字に入っていません。
戸数の少ない木造アパートが1件でも、大きな一棟マンションが1件でも、同じ1件として数えます。
ですから「東区のほうが市場が大きい」とは言えません。
言えるのは「東区では、棟の売買そのものが起きている回数が多い」というところまでです。
なお、事務所・店舗の建物については、区別の件数を当社は公開していません。
10年で651件しかないため、区に割ると1区あたりの数が小さくなりすぎます。
その数から傾向を述べると、根拠のない話になってしまいます。
建物の古さと構造は、どう分かれていますか?
共同住宅は築31年以上が31%を占め、構造では木造が47%でした。
事務所・店舗は鉄骨造が52%で、こちらは築41年以上が21%です。
築年数の分かれ方
共同住宅の10年の取引のうち、築31年以上が31%でした。
築41年以上に限っても290件あります。
事務所・店舗は、築41年以上が21%で135件、築31〜40年が22%です。
どちらも、古い建物の売買が例外ではないと分かります。
築古の一棟で買主が変わる仕組みと、売り方の違いは旧耐震ビル・一棟マンションの売却|築古で変わる買主と売り方に書きました。
構造の分かれ方
共同住宅は木造47%、鉄筋コンクリート造33%です。
木造が半分近くというのは、福岡市の一棟ものの売買が、大型のマンションだけで起きているわけではないことを示します。
事務所・店舗は鉄骨造52%、鉄筋コンクリート造22%でした。
構造は、買主が組める融資の年数に関わります。
そのため、同じ築年数でも売り方の組み立てが変わる要素になります。
築年数と構造を、査定の前に手元で確かめる
売却の相談をされる前に、建築年と構造だけは確かめておいてください。
どちらも登記事項証明書と、固定資産税の課税明細書に書かれています。
検査済証が見つからない場合は、取れる書類が別にあります。
一棟の査定を頼んだあとの流れは一棟の査定はどう頼む?依頼から査定書が届くまでの流れにまとめました。
この数字を、自分の一棟にどう使いますか?
「売れるかどうか」の不安を外す材料として使ってください。
価格の見通しには使えません。
件数から言えること・言えないこと
- 言えること — 福岡市では一棟ものの売買が毎月起きている
- 言えること — 1億円を超える帯でも、記録に残る取引が月10件前後ある
- 言えること — 築30年を超えた建物も売買されている
- 言えないこと — ご自身の物件がいくらで売れるか
- 言えないこと — 来年の価格がどうなるか
- 言えないこと — どの区が有利か
下の3つを当社が申し上げないのは、この集計から読み取れないからです。
読み取れないことを述べると、宅地建物取引業法が禁じている断定的な判断の提供にあたります。
税金の見込みは、自宅の試算では出せない
当社の手取りの試算は、自宅の売却を前提に作っています。
一棟ものには使えません。
減価償却で帳簿上の価額が下がっているため、売却益の出方が自宅と違うからです。
仕組みは一棟アパート・ビル売却の税金|減価償却で手取りが減る理由で説明しています。
個別の税額と、どの年に売るのが有利かという判断は、税理士の領域です。
当社は連携している税理士へおつなぎするところまでを担当します。
次にやること
まず、お持ちの一棟が上の表のどの価格帯にありそうかを見てください。
そのうえで、建築年と構造を課税明細書で確かめます。
この2つがそろえば、査定の依頼ができる状態です。
当社の進め方と、売主側の仲介として入るときの立ち位置は福岡市の一棟ビル・一棟マンション・アパートの売却に書いてあります。
売却の順番そのものは一棟ビル・一棟マンション売却の流れ|自宅と違う5つの点をご覧ください。
査定のお申し込みは無料査定(一棟アパート・一棟ビル)からどうぞ。
