検査済証がないビル・アパートは売れる?融資と調査の壁
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士古い一棟ビルやアパートを売ろうとして書類をめくり、検査済証が見つからないことに気づいた方へ向けた記事です。
結論から申し上げます。
検査済証が無くても、その建物を売ること自体はできます。
売買を禁じる規定はありません。
壁になるのは別の2つです。
1つは買主の融資で、もう1つは買主が増築や用途変更をしたいときの調査です。
この記事は一棟ものに絞って、その2つがどう効いてくるのかを書いています。
ご自宅の売却でお探しなら、検査済証が無い家は売れる?福岡市で取れる台帳記載事項証明書のほうが近い内容です。
2. 買主の融資には、どう響きますか
3. 増築や用途変更をしたい買主には、何が壁になりますか
4. 適法性を確かめる道はありますか
5. 福岡市で、売る前にそろえる書類
6. 次に何をすればよいですか
検査済証がない一棟ビルは売れますか
売れます。
建築基準法にも宅地建物取引業法にも、検査済証が無い建物の売買を禁じる条文はありません。
実際の取引では、検査済証が無いことを重要事項として買主に説明したうえで契約を結びます。
検査済証とは、何を証明する書類か
検査済証は、工事が終わったあとの完了検査を受けて、建築基準法に適合していると確認された建物に交付される書類です。
着工前に出る確認済証とは別のものです。
確認済証は「この計画でよい」という段階の書類で、検査済証は「その計画どおりに建った」という段階の書類。
この2つを混同されている方が少なくありません。
確認済証だけが手元にあって検査済証が無い、という状態が実務ではよくあります。
無いこと自体は違法ではない
検査済証が無いと聞くと、違法建築ではないかと心配される方がいます。
この2つは別の話です。
古い建物では、完了検査を受ける習慣が定着していなかった時期があり、確認申請は出したけれど完了検査を受けていない建物が数多くあります。
その場合、建物は図面どおりに建っているかもしれないし、途中で変わっているかもしれません。
どちらなのか分からない、という状態が検査済証の無い建物です。
違法だと決まっているわけではなく、確かめられていないということ。
この違いが、あとの調査の話につながります。
自宅の売却と一棟で、どこが違うか
自宅の場合、買主は住宅ローンを使う個人が中心になります。
一棟ものの場合、買主は収益を目的とした投資家か不動産業者です。
どちらも融資を使うことが多いのですが、審査で見られるものが違います。
加えて一棟ものには、買主が用途を変えて使いたいという需要があるでしょう。
自宅の売却とは別の問題が、この2点から生まれるわけです。
買主の融資には、どう響きますか
金融機関は担保評価の前提として建物の適法性を確かめるため、検査済証が無いと融資が付きにくくなる場合があります。
付かないと決まっているわけではなく、金融機関と案件によって変わります。
ただ、売る側として想定しておくべきなのは「買える人が減る」という点です。
融資が付かないと、買主の顔ぶれが変わる
融資を前提にしていた投資家が審査で止まると、残るのは現金で買える投資家と、不動産業者です。
現金で一棟ビルを買える人の数は、融資を使える人よりずっと少なくなります。
買主の母数が減れば、価格の交渉で売主の立場は弱くなります。
ここで大事なのは、書類の問題が価格の問題に変わるという点です。
検査済証が無いことを黙っていても、買主側の金融機関が審査で必ず見つけます。
そのときに契約が白紙に戻ると、売り出しからやり直しになります。
ですから、売り出す前に無いことを把握し、買主の層を見込んでおいてください。
当社が売主側の仲介として入る場合、検査済証が無いことは最初の資料に書いて買主へ出します。
隠して話を進めるほうが、結果として売主の損になるためです。
現金で買える買主は、この条件を前提にした価格で検討に入るでしょう。
途中で発覚して値引きを求められるより、最初から条件を開示して価格を決めたほうが、売主の手残りは読みやすくなります。
旧耐震と重なると、見られる項目が増える
1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物なら、旧耐震基準で建てられています。
検査済証が無いことと旧耐震が重なると、金融機関が見る項目が2つになります。
この組み合わせは築古の一棟ものでは珍しくありません。
耐震の側の話は旧耐震ビル・一棟マンションの売却|築古で変わる買主と売り方にまとめました。
増築や用途変更をしたい買主には、何が壁になりますか
既存の部分が建築基準法に適合していることを示す必要があり、検査済証が無いとその出発点がありません。
買主が建物をそのまま貸し続けるなら、この壁は出てきません。
壁になるのは、手を入れて使い方を変えたい買主の場合です。
用途変更は200㎡を超えると確認申請が必要
建築基準法第87条により、確認申請の規定が用途変更にも準用されます。
用途を変えたあとの特殊建築物の床面積の合計が200㎡を超える場合、確認申請が必要になります。
200㎡以下なら申請は要りません。
類似の用途どうしの変更も、対象から外れます。
この200㎡という線は、2018年の改正で100㎡超から引き上げられたものです。
一棟ビルや一棟アパートの延べ面積は、200㎡を超えることが多くなります。
事務所をホテルや福祉施設に変えたい買主にとって、申請が必要になる側に入りやすいわけです。
確認申請が必要になるのは、変更後の用途が特殊建築物に当たる場合です。
特殊建築物には、ホテル・旅館、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等、物品販売業を営む店舗、飲食店などが含まれます。
築古の一棟ビルを買う側には、空室の多い事務所を住まいや宿泊に変えて使いたいという発想がよく出てきます。
その入口で止まるのが、検査済証の無い建物ということ。
そして確認申請には、既存の部分が適法であることの確認がついてきます。
ここで検査済証の有無が効いてくるわけです。
既存不適格と違法建築は、扱いが違う
建てた当時は適法で、その後の法改正で今の基準に合わなくなった建物を既存不適格といいます。
既存不適格はそのまま使い続けられますし、売買もできます。
一方、建てた当時から基準に反していた建物は違法建築です。
検査済証が無い建物は、このどちらなのかが書類では判定できません。
増築をするときに既存不適格の緩和を受けたい買主には、既存の部分が当時の基準に適合していたことを示す作業が残ります。
検査済証があれば、その証明はそのまま済むわけです。
容積率オーバーの既存不適格そのものを売るときに何が起きるかは、容積率オーバー・既存不適格の一棟を売るに書きました。
適法性を確かめる道はありますか
あります。
国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」に沿って、建築士が現況調査を行う方法です。
対象は、増築などをしようとする既存建築物。
調査の手順と報告書の作り方が、そこに示されています。
調査は2段階に分かれている
調査は、検査済証の交付状況などを調べる段階と、現地を調べる段階の2つに分かれます。
前の段階でそろえるのは、確認申請の記録と図面です。
どこまで分かっているのかを、ここで切り分けます。
後の段階では、図面と実際の建物が合っているかを現地で照合。
この調査の費用と期間は、建物の規模と残っている図面の量で大きく変わります。
図面が1枚も残っていない建物では、現況から図面を作り直す作業が先に入ります。
旧ガイドラインは2025年4月に統合された
以前は「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」という別の文書がありました。
これは2014年に作られたもので、2025年4月に現況調査ガイドラインへ統合され、廃止されています。
古い記事を読むと前者の名前で説明されていることがあるので、調べるときは現行のほうをご覧ください。
なお、この調査の報告書は検査済証そのものではありません。
検査済証が後から交付されるわけではないので、そこは買主にも正確に伝えてください。
福岡市で、売る前にそろえる書類
先に建築確認の履歴、次に賃貸の資料です。
この2つがそろっていると、買主側の金融機関の審査が早く進む形です。
台帳記載事項証明書で、交付の有無を確かめる
手元に検査済証が無くても、交付された記録が市の台帳に残っていることがあります。
福岡市では建築確認等台帳記載事項証明書を1件300円で取得できます。
確認済証と検査済証のそれぞれについて、いつ交付されたのかを確かめられる書類です。
紛失していただけなら、ここで解決します。
取り方と、台帳にも記録が無かった場合の進め方は検査済証が無い家は売れる?福岡市で取れる台帳記載事項証明書に書きました。
図面が残っていないときは、建築計画概要書を見る
検査済証も図面も手元に無い、という建物もあります。
その場合に次に見るのが、建築計画概要書です。
確認申請のときに提出された概要が記録されていて、福岡市では閲覧と証明の申請ができます。
敷地の面積、建物の用途、構造、階数、延べ面積といった基本の数字が分かります。
現況調査をする場合も、ここが出発点になるでしょう。
買主との交渉に入る前に、どの書類がどこまで残っているのかを一覧にしておいてください。
一棟ならこれに賃貸の資料が加わる
一棟ものの買主は、建物の適法性と収益の両方を見ます。
そろえるのは、各室の賃貸借契約書、敷金と保証金の一覧、賃料の入金記録、修繕の履歴です。
検査済証が無いという不安がある物件ほど、残りの資料の整い方で印象が変わります。
敷金や保証金の引き継ぎの決まりは一棟のオーナーチェンジ売却|敷金・保証金はどう引き継ぐ?にまとめました。
売却全体の段取りは一棟ビル・一棟マンション売却の流れ|自宅と違う5つの点のほうです。
次に何をすればよいですか
まず、台帳記載事項証明書を取って、検査済証が交付されていたのかを確かめてください。
交付の記録が無かった場合は、現況調査をするかしないかの判断になります。
調査にかける費用と、買主が広がることで動く価格を並べて決める形です。
どちらが得かは、一般論では決められません。
物件ごとに試算して判断する場面です。
なお、当サイトの手取り計算シミュレーターは自宅の売却を前提にした作りですから、一棟ものには当てないでください。
譲渡所得の計算も、減価償却が入るぶん自宅とは別の話になります。
個別の税額と有利不利の判断は、税理士にお願いしてください。
当社は福岡市博多区の売却専門で、売主側の仲介として入ります。
一棟ものの取扱いの実績はまだありませんので、そこは正直にお伝えしておきます。
そのうえで、売主側に立つ立場は自宅でも一棟でも変えません。
囲い込みはしませんので、買主側に別の会社が付くこともあります。
代表の野上が最後まで担当し、必要に応じて税理士・司法書士と連携いたします。
一棟の売却について詳しくは福岡市の一棟ビル・一棟マンション売却をご覧ください。
価格の目安をお知りになりたい場合は無料査定からお申し込みいただけます。
