売却の相談は書類がそろう前でもできる|先に動かせる3つ
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士「権利証が見つからないので、まだ相談できる段階ではないと思っていました」と言われることがあります。
査定は、書類が1枚もなくてもできます。
不動産の価格は、所在地・面積・築年数・接する道路・周辺の取引事例から出すもので、権利証や納税通知書は計算に使いません。
そして、書類集めと売却の準備は同時に進められます。
書類が本当に必要になるのは、媒介契約を結ぶ場面と、売買契約から決済までの場面です。
この記事でまとめるのは、書類がそろう前に先に動かせる3つのことと、当社が代わりに取れる書類と本人でなければ取れない書類の線引きです。
どの書類をどこで取るかという一覧は売却に必要な書類のページにあります。
2. 書類が1枚もないとき、先に動かせる3つは何ですか?
3. 当社が代わりに取れる書類はどれですか?
4. 書類集めと売却の準備は、同時に進められますか?
5. 次に何をすればよいですか?
書類がそろう前でも、売却の相談はできますか?
できます。
お手元にあるものだけで結構で、足りないものは取り寄せ方からご案内します。
当社に実際に届く質問のなかでも、「書類が揃ってからでないと相談できませんか」は上位に入るものです。
査定に書類が要らない理由
査定で見ているのは、物件そのものと周辺の取引です。
所在地が分かれば、登記の内容・公図・用途地域・前面道路は当社が調べられます。
近くで実際にいくらで売れたかも、当社が持っている取引のデータから確かめます。
売主様から伺うのは、増築や雨漏りの履歴、設備の不具合、入居者がいるかどうかといった、外から見えない事情です。
これらは書類ではなく、口でお聞きすれば足ります。
調べる側の作業を具体的に書くと、まず公図で土地の形と道路への接し方を見ます。
間口が2メートルに足りない土地や、他人の土地を通らないと入れない土地は、買える人が限られるため価格が下がります。
次に用途地域と容積率を見て、建て替えでどのくらいの大きさが建つかを確かめる段取りです。
同じ100平方メートルの土地でも、2階までしか建たない区域と5階が建つ区域では、買主の層が入れ替わります。
あると精度が上がる4点
なくても査定はできますが、お手元にあれば数字の精度が上がる書類が4つあります。
- 権利証(登記識別情報通知)
- 固定資産税納税通知書
- 間取り図
- 購入時の売買契約書
このうち購入時の売買契約書は、査定よりも税金の計算で効いてきます。
買った値段が分からないと、取得費は売却価格の5%で計算することになり、その分だけ譲渡所得が大きく出る形です。
3,000万円で売れた家で当時の契約書が出てこなければ、取得費は150万円として扱われます。
探す優先順位をつけるなら、購入時の契約書が1番です。
見つからない場合の扱いは福岡市の不動産売却|費用の内訳と手取りの目安で説明しています。
「相談」と「媒介契約」は別のもの
査定や相談をお願いしても、売る約束にはなりません。
売却を会社に正式に頼む契約が媒介契約で、こちらは書類をそろえてから結びます。
査定額を聞いて、今年は売らないと決めてもかまいません。
売らない場合の相談の仕方は不動産査定だけしたい!売らない場合の相談方法としつこい営業の断り方にまとめました。
当社は15分無料相談でも、その日に何を決めるかは売主様に選んでいただいています。
書類が1枚もないとき、先に動かせる3つは何ですか?
相場を見ること、持っている不動産を全部洗い出すこと、手取りを試算することの3つです。
どれも書類が要らず、売るかどうかを決める前に進められます。
この3つを先に済ませておくと、書類がそろった時点ですぐ売り出せます。
1. 相場を見る
最初に見るのは、同じ区の同じ種類の不動産がいくらで売れているかです。
福岡市は区によって相場の形がかなり違います。
当社は国土交通省の取引データから区ごとの中央値を出していて、福岡市の売却相場から7区それぞれのページに入れます。
マンションの件数が多い区と、戸建てと土地が中心の区では、売り出してから決まるまでの日数も変わります。
ここで見ておきたいのは、ご自分の物件が中央値より上か下かという1点だけです。
2. 名寄帳で、持っている不動産を全部出す
相続した不動産では、聞いていた土地のほかに持ち分が残っていることがあります。
福岡市内の不動産なら、名寄帳を見れば市内の課税対象がまとめて分かります。
名寄帳の閲覧は各区役所の課税課が担当していて、閲覧そのものは無料です。
写しが要る場合は、オンライン申請でも請求できて、1枚10円です。
よく出てくるのは、前面の私道の持ち分、隣の小さな畑、墓地や水路に接した細長い土地です。
私道の持ち分が売買から漏れると、買主は自分の家の前の道を通る権利を持たないまま引き渡しを受けることになります。
買主側の金融機関がこれを見つけると、融資が止まります。
後から出てくると売買契約のやり直しになるため、最初に全部出しておくほうが安全です。
なお、毎年4月1日から最初の納期限までの縦覧期間中は、名寄帳の請求先が区役所課税課に限られます。
3. 手取りを試算する
3つ目は、売れた値段からいくら残るかの試算です。
売却価格から、仲介手数料・印紙税・抵当権の抹消費用・譲渡所得税・住宅ローンの残債が引かれます。
手取りの試算に価格と購入時期を入れれば、その場で概算が出ます。
住宅ローンが残っている方は、金融機関から届く残高証明書か、取引アプリの残高画面を見てください。
残債が売却価格を上回るかどうかで、取れる手段が変わるためです。
当社が代わりに取れる書類はどれですか?
誰でも請求できる書類は当社が代わりに取れて、本人か委任状が必要な書類は取れません。
この線は役所の都合ではなく、法律の決め方の違いによるものです。
どちらに入るかを知っておくと、ご自分で動く手間がかなり減ります。
誰でも取れるもの
登記事項証明書は、所有者でなくても誰でも請求できます。
法務局は委任状の仕組みを用意しておらず、第三者が請求するときも委任状は不要です。
手数料は請求のしかたで変わります。
| 請求のしかた | 1通の手数料 |
|---|---|
| 法務局の窓口で紙の請求書を出す | 600円 |
| オンラインで請求して郵送してもらう | 520円 |
| オンラインで請求して窓口で受け取る | 490円 |
公図と地積測量図も、同じく誰でも取れます。
このうち地積測量図は、過去に測量して境界を確定した土地にしかありません。
無い場合は、売るときに確定測量が必要になるかどうかを早めに判断することになります。
確定測量にかかるのは40〜60万円程度で、3,000万円で売る土地なら売却価格の1〜2%です。
金額が大きいので、売り出し価格を決める前に有無を確かめておきます。
福岡市内の不動産なら、用途地域と建築基準法上の道路は「福岡市Webまっぷ」で無料で調べられます。
同じ地図では、建築基準法上の道路と、盛土規制法の規制区域もあわせて見られます。
注意したいのは、用途地域や建蔽率の境界付近にある土地です。
地図の表示と実際の線が1メートル単位でずれることがあるため、市も窓口での確認を求めています。
紙の都市計画図が必要なときは、市役所4階の都市計画課で1枚200円で買えます。
この調査は当社がまとめて行うので、売主様に動いていただく必要はありません。
委任状か本人が必要なもの
固定資産評価証明書は、本人以外が請求するときは家族でも委任状が必要です。
手数料は1件300円です。
受け取れる窓口は次のとおりです。
- 各区役所の納税課
- 早良区の入部出張所、西区の西部出張所
- 千早証明サービスコーナー(東区なみきスクエア内)
- 天神証明サービスコーナー(市役所1階)
- 博多区役所2階の証明発行コーナー
来庁せずに済ませたい場合は、オンライン申請なら1通250円で、窓口より50円安くなります。
郵送料は令和9年3月31日まで無料とされていて、開庁日の13時までに不備なく申請すれば当日発送されます。
印鑑証明書と戸籍も、本人の請求が原則です。
相続した不動産で要る戸籍の集め方は相続した不動産の売却の必要書類|戸籍は広域交付で1か所にまとめました。
どの窓口が何を出すかの分担は福岡市の不動産売却の書類|法務局・区役所・税務署の分担をご覧ください。
書類集めと売却の準備は、同時に進められますか?
進められます。
査定、現地の調査、写真の撮影、売り出し価格の相談は、書類の到着を待たずにできる作業です。
書類を待つあいだに価格の見当がつくので、そろった日に売り出せます。
書類が要るのは媒介契約と契約・決済の場面
媒介契約のときにお願いするのは、権利証、身分証明書、実印と印鑑証明書、固定資産税納税通知書、間取り図や測量図です。
購入時の売買契約書と重要事項説明書、マンションなら管理規約と長期修繕計画も加わります。
ただし、すべてそろっていなくても媒介契約は進められます。
売り出したあと、買主が決まるまでの期間に取り寄せる形で間に合うものが多いからです。
売り出しから決済までの全体の並びは売却の流れで確認できます。
見つからない書類の探し方
探す場所には順番があります。
権利証は再発行ができないので、見つからない場合は別の方法で本人であることを証明します。
司法書士が面談して作る本人確認情報という書類を使い、費用は数万円かかりますが、売却そのものは止まりません。
間取り図が無いマンションは、管理会社が竣工時の図面を持っていることがあります。
戸建てと土地なら、法務局の建物図面と各階平面図で間取りの代わりになる場合もあります。
購入時の売買契約書は、買ったときに入ってもらった不動産会社に写しが残っていることがあります。
その会社が廃業していても、売主様が住宅ローンを借りた金融機関に当時の契約書の写しが残っている例をいくつも見てきました。
ここまで当たってから、取得費を5%で計算するかどうかを決めてください。
期限があるものは、あとから取る
先に取ってはいけない書類が1つあります。
印鑑証明書は、発行から3か月以内のものを使います。
相談の段階で取ってしまうと、買主が決まるまでに期限が切れて、取り直しになります。
固定資産評価証明書も、年度が変わると評価額が変わるため、登記の直前に取るのが順番です。
戸籍や登記事項証明書には期限の定めがないので、こちらは早く動かしてかまいません。
順番をまとめると、期限の無いものを先に、期限のあるものを買主が決まってから、という2段です。
次に何をすればよいですか?
お手元の引き出しを探すより先に、物件の所在地だけ分かる状態で相談してください。
所在地が分かれば、登記と都市計画の調査は当社が進められます。
金額の幅を先に知りたい方は無料査定から、何から手を付けるか整理したい方は15分無料相談からお申し込みいただけます。
査定の種類を選びたい場合はAI査定と訪問査定の違いとは?も参考になります。
そろえる書類の全体像を先に見ておきたい方は不動産売却の必要書類一覧|土地・戸建て・マンション別に解説をご覧ください。
福岡市を離れてお住まいの方でも、名寄帳と評価証明書はオンライン申請で取れるので、来福せずにここまで進められます。
書類が1枚も無いことを理由に、相談を先延ばしにする必要はありません。
