【2026年基準地価】福岡市は5.5%上昇|売る前に知りたい読み方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士国土交通省が2026年9月に令和8年の都道府県地価調査(基準地価)をまとめ、福岡市の住宅地は平均で5.5%上がりました。
前年は7.2%だったので、上がってはいるものの、上がり方は小さくなっています。
ニュースで「福岡の地価、上昇続く」と見て、自分の家もいま売れば高いのでは、と考えた方もいるはずです。
先に結論を書きます。
基準地価は土地の値段の目安で、あなたの家やマンションがいくらで売れるかを示す数字ではありません。
この記事は、福岡市や福岡県に家・土地を持ち、地価の発表をきっかけに売却を考え始めた50〜60代の方に向けて書きました。
株式会社おもいで不動産の野上俊彦が、国土交通省の資料から福岡の数字を拾い、売主として読むときの注意点までまとめます。
2. そもそも基準地価とは?公示地価とはどう違う?
3. なぜ福岡市の地価は上がり方が小さくなった?
4. 基準地価の上昇は、自分の家の売却にとって何を意味する?
5. 発表を見たあと、売主は何から始めればいい?
令和8年の基準地価、福岡県と福岡市はどうだった?
福岡市は住宅地5.5%・商業地8.1%、福岡県全体は住宅地2.1%・商業地4.0%の上昇で、どれも前年より上がり方が小さくなりました。
全国の平均と比べると、福岡市の住宅地は全国の5倍を超える上がり方です。
全国・福岡県・福岡市を並べる
令和7年と令和8年の平均変動率(前の年からどれだけ動いたか)を並べると、次のとおりです。
| 地域 | 住宅地 令和7年 | 住宅地 令和8年 | 商業地 令和7年 | 商業地 令和8年 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 1.0% | 1.0% | 2.8% | 2.9% |
| 福岡県 | 2.7% | 2.1% | 5.1% | 4.0% |
| 福岡市 | 7.2% | 5.5% | 10.2% | 8.1% |
全国は住宅地が前年と同じ1.0%で、商業地はわずかに伸びました。
福岡県と福岡市は、住宅地も商業地も前年より数字が小さくなっています。
つまり全国が横ばいから少し強まったなかで、福岡は高い水準のまま勢いが落ち着いたという形です。
福岡県の平均価格はいくら?
福岡県の住宅地の平均価格は1㎡あたり78,300円で、前年の75,100円から3,200円上がりました。
30坪(約99㎡)の土地に当てはめると、およそ775万円です。
ただし、これは県内623地点の単純な平均です。
福岡市の中心部と郡部の地点が同じ重さで混ざっているので、どこか特定の場所の値段を表してはいません。
商業地の平均は1㎡あたり512,300円、工業地は57,700円でした。
工業地の上がり方は6.4%で、前年の8.6%から縮んでいます。
調べた地点の数は、福岡県で住宅地623、商業地230、工業地51でした。
住宅地の地点が商業地の2.7倍ほどあるので、県の住宅地の平均は郊外や郡部の動きを強く映します。
福岡市の住宅地が5.5%なのに県全体が2.1%にとどまるのは、福岡市の外では上がり方が小さい地点が多いためです。
同じ令和8年の住宅地で、北九州市は1.3%、久留米市は1.0%でした。
地方の大きな市のなかで、福岡市はどこにいる?
国土交通省は札幌市・仙台市・広島市・福岡市を「地方四市」としてまとめて集計しています。
地方四市の平均は住宅地2.9%・商業地6.0%で、どちらも14年続けて上がりましたが、上がり方は縮みました。
福岡市の住宅地5.5%は、この平均を大きく上回ります。
一方で、地方四市はそろって伸びが小さくなっており、福岡市だけが勢いを落としたわけではありません。
そもそも基準地価とは?公示地価とはどう違う?
基準地価は、毎年7月1日時点の土地1㎡あたりの価格を都道府県知事が調べて公表するもので、1月1日時点の地価公示と組み合わせて使う物差しです。
どちらも土地だけの値段で、建物の値段は入っていません。
7月1日時点で、県が調べる価格
基準地価のもとになっているのは、国土利用計画法の施行令です。
各都道府県知事が、あらかじめ決めた「基準地」の価格を判定します。
国土交通省は、各都道府県の発表に合わせて全国の状況を取りまとめて公表しています。
本来の目的は、土地取引の届出のときの価格審査や、自治体が土地を買い取るときの価格の基準にすることです。
不動産会社が査定のときに参考にするのも、この公的な性格があるためです。
1月1日の地価公示と、半年ずらして見る
よく似た名前の「地価公示(公示地価)」は、国土交通省の土地鑑定委員会による1月1日時点の調査。
国土交通省は、この2つを「調査時期と調査地点で互いに補い合う関係」と説明しています。
1月と7月、半年ずれた2つの調査を並べると、1年の中で地価がどちらへ動いているかを細かく追えます。
地点も一部が重なり、一部は別の場所なので、片方に無い地域をもう片方で埋められるということです。
なお、相続税の路線価や固定資産税評価額は、税金を計算するための別の物差しです。
名前は似ていますが目的が違うので、売却価格の目安として同じように扱うと話が合わなくなります。
なぜ福岡市の地価は上がり方が小さくなった?
国土交通省は、地価と建築費が上がったことで家を買う人が慎重になり、福岡市の多くの地域で需要が落ち着いたことを理由に挙げています。
そのうえで添えられているのが、駅に近い便利な地域などでは需要が引き続き強い、という説明です。
住宅地は「買う側が慎重になった」
国土交通省の説明では、福岡市の住宅地で需要が強いのは次のような地域です。
- 鉄道沿線で、交通の便がよい地域
- 富裕層向けのマンションの販売が見込まれる地域
一方で、地価や建築費の上昇によって住宅を買うことに慎重な動きが見られる、とも書かれています。
家を買う人の予算には上限があるので、土地と建物の値段がどちらも上がると、手が届く人が減っていきます。
その結果、全体としては上がり方が縮んだ、というのが国の見立てです。
買う側の予算と金利の関係は、金利上昇と買主の予算の記事で詳しく書いています。
商業地は天神・博多駅前の再開発が支えている
商業地については、外国人を含む観光客が増え、百貨店の売上やホテルの稼働率が好調だと説明されています。
天神地区や博多駅前の再開発でオフィスの供給が進み、賃料は上がる傾向を保っているそうです。
空室率が下がっていることも重なり、地価の上昇は続いています。
ただ、ここでも近年の地価と建築費の上昇が響き、上がり方は前年より小さくなりました。
「上がり方が縮んだ」は「下がった」ではない
ここは読み違えやすいので、はっきり書いておきます。
住宅地の変動率が7.2%から5.5%になったというのは、前の年からさらに5.5%上がったという意味です。
値段が下がったわけではありません。
坂道にたとえると、上り坂の傾きがゆるくなったという状態です。
この先どうなるかは、国土交通省の資料にも書かれておらず、当社も予想は書きません。
基準地価の上昇は、自分の家の売却にとって何を意味する?
基準地価の上昇は、福岡市の土地に対する需要がまだ強いことを示しますが、あなたの家が5.5%高く売れることまでは意味しません。
理由は大きく2つあります。
土地の値段の目安で、家の値段ではない
基準地価は、更地として見たときの1㎡あたりの土地の値段です。
戸建ての売却価格には建物の値段が加わり、建物は年数がたつほど評価が下がっていきます。
土地が5.5%上がっても、建物の評価が下がるぶんと差し引きになるので、合計がそのまま5.5%増えるとは限りません。
仮の数字で考えてみます。
土地が2,000万円、建物が600万円と見られていた戸建てがあるとします。
土地が5.5%上がれば、土地の分は110万円増えて2,110万円です。
同じ1年で建物の評価が80万円下がったとすると、合計は2,600万円から2,630万円になり、増えたのは1%少々にとどまります。
建物の下がり方は構造や手入れの状態で変わるので、この数字はあくまで考え方の例です。
言えるのは、建物の割合が大きい家ほど、地価の上昇は売却価格に表れにくいということです。
マンションはさらに地価から離れます。
1戸あたりの土地の持ち分が小さく、価格は築年数・階数・管理の状態・駅からの距離で大きく変わるためです。
この差が生まれる仕組みは、地価は上がったのに査定額が上がらない理由で5つに分けて説明しています。
区の平均と、自分の家の場所は違う
福岡市の5.5%は、市内の基準地の変動率を単純に平均した数字です。
同じ市の中でも、地点によって上がり方は大きく違います。
住宅地で市内いちばんの上がり方だったのは、早良区次郎丸3丁目の10.7%です。
いちばん小さかったのは、同じ早良区の西入部2丁目で、0.7%でした。
同じ区のなかで、15倍ほどの開きがあります。
商業地でも同じで、東区箱崎1丁目が14.6%上がった一方、中央区天神1丁目は0.3%でした。
「福岡市は5.5%」という数字は、こうした地点の上がり方をならした結果だということです。
自宅にいちばん近い地点の探し方は、基準地価の調べ方にまとめました。
7区それぞれの数字は、福岡市7区の基準地価の記事で前年と並べて載せています。
春日市・大野城市・糸島市など福岡市の外に物件がある方は、周辺6市の基準地価の記事に同じ形の表を載せました。
発表を見たあと、売主は何から始めればいい?
まず自宅の近くの基準地を調べ、次に実際の成約価格の相場と並べ、最後に査定で土地と建物を分けて説明してもらうのが順番です。
地価の数字だけで売り出し価格を決めないことが、この発表をうまく使うコツです。
近くの基準地と、成約価格の相場を並べる
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、地図から基準地と地価公示の地点を探し、価格の動きを見られます。
自宅に近く、駅からの距離や道路の条件が似ている地点を選ぶと、目安としての精度が上がります。
そのうえで、実際に取引された価格の相場と並べてください。
当社の福岡市の売却相場のページでは、国土交通省の取引価格情報をもとに、7区ごとのマンション・戸建て・土地の中央値と取引件数を載せています。
地価は「土地の値段の傾き」、取引価格は「実際に売れた値段」なので、両方を見ると自分の家の位置がつかみやすくなります。
地価がこの15年ほどでどう動いてきたかは、福岡市の基準地価の推移の記事にまとめました。
査定では、土地と建物を分けて聞く
査定を頼むときは、金額だけでなく、土地と建物をそれぞれどう見たかを聞いてください。
「土地は地価の上昇を反映してこのくらい、建物は築年数からこのくらい」と説明できる会社なら、査定額の根拠を確かめられます。
査定額と実際の売り出し価格の差の付け方は、売り出し価格の決め方の記事にまとめました。
当社では、近くの基準地や取引事例を並べたうえで、根拠つきの査定額をお出ししています。
売るかどうか決めていない段階でもかまいませんので、無料査定からご相談ください。
