木造アパートは築22年を過ぎても売れる?融資と買主の見方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士築20年を超えた木造アパートをお持ちで、そろそろ手放すか迷っているオーナーの方へ書いています。
相続で引き継いだ木造の賃貸物件を、どう扱うか決めかねている方にも読んでいただけます。
先に結論です。
木造の住宅用の法定耐用年数は22年ですが、これは税金の計算に使う年数にすぎません。
22年で建物が使えなくなるという意味ではなく、築22年を過ぎた木造アパートの取引も実際に動いています。
変わるのは、売れるかどうかではなく、買う人の層です。
買主の融資の期間が耐用年数の残りで決まる扱いが広いため、残りが短い建物では現金や事業性の融資で買う人へ寄っていきます。
この記事では、22年という年数の意味、買主の層の変わり方、買主側の償却、売主の税金、そろえる書類を順に並べました。
当社は福岡市博多区の売却専門で、売主側の仲介として入ります。
個別の税額と有利不利の判断は税理士の領域になるため、国税庁の資料で確かめられる範囲に絞りました。
2. 築22年を過ぎた木造アパートは売れますか
3. 買主の融資期間は、耐用年数でどう決まりますか
4. 買主は、どうやって償却するのですか
5. 売主の税金はどうなりますか
6. 売る前に、何から始めればよいですか
木造アパートの法定耐用年数は何年ですか
住宅用の木造・合成樹脂造の建物は22年です。
同じ木造でも、事務所用は24年、飲食店用は20年と分かれています。
国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で、構造と用途の組み合わせごとに決まっています。
22年は、税金の計算のための年数
法定耐用年数は、建物の取得費を何年かけて経費に落とすかを決めるための年数です。
木造の住宅用なら、取得した建物の価額を22年に割り振って毎年の減価償却費にします。
22年を過ぎると、帳簿の上では建物の価値がほとんど残らなくなります。
残るのは土地の価額と、建物の備忘価額の1円だけ。
売主の側の償却と譲渡所得の関係は一棟アパート・ビル売却の税金に分けて書きました。
建物が使えなくなる年数ではない
法定耐用年数は、国が税の計算をそろえるために決めた区分です。
建物の寿命を判定した年数でも、賃貸できる期間の上限でもありません。
実際には、築30年を越えて満室で回っている木造アパートもあります。
建物が持つかどうかを決めるのは、年数より雨仕舞いと手入れの履歴です。
屋根と外壁をいつ塗り替えたか、白蟻の防除をいつ行ったかの記録が、ここで効いてきます。
築22年を過ぎた木造アパートは売れますか
取引は動いています。
当社が国土交通省の取引価格情報を集計したところ、福岡市7区では築31年以上の共同住宅も相当数が売買されていました。
ただし、買う人の層は築年数とともに入れ替わっていきます。
買主は3つの層に分かれる
1つめは、金融機関の融資を使って買う個人の投資家です。
この層は融資の期間に左右されるため、耐用年数の残りが短い建物では手が止まりやすくなります。
2つめは、現金または事業性の融資で買う層。
法定耐用年数の残りに縛られないぶん、築古でも検討の対象に入ります。
3つめは、建物より土地を見て買う層です。
いずれ建て替える前提なので、入居者の退去や解体の費用まで織り込んで価格を考えます。
どの層に当たるかで、査定の方法も変わります。
収益還元法と積算の違いは収益物件の査定方法3つにまとめました。
福岡市7区の取引は、どの区で多いのか
当社の集計では、2016年から2025年までの10年間で、福岡市7区の共同住宅の取引は2,982件ありました。
区ごとに見ると、東区622件、博多区553件、南区539件、城南区357件、中央区356件、早良区318件、西区237件という並びです。
東区の622件は、西区237件の2.6倍にあたります。
構造では木造が47%を占めていて、木造アパートが取引の半分近くを担っていることになります。
この数字は、買主へのアンケートに回答があった取引だけを集めたもので、全数ではありません。
2025年の件数が少なく見えるのは、回答があとから届くためです。
築年数で見ると、この10年分の共同住宅のうち築31年以上が31%を占めていました。
築41年以上だけでも290件。
古い木造が買われずに残っている、という状態ではありません。
価格帯は、5,000万円未満が5分の1
直近8四半期(2024年第2四半期から2026年第1四半期)の共同住宅490件を価格帯で分けると、次のようになります。
| 価格帯 | 件数 |
|---|---|
| 5,000万円未満 | 110件 |
| 5,000万〜1億円 | 152件 |
| 1億〜3億円 | 138件 |
| 3億〜5億円 | 44件 |
| 5億円以上 | 46件 |
5,000万円未満が110件で、全体の22%です。
戸数の少ない木造アパートは、この帯に入ることが多くなります。
この帯は、現金で買える個人や地場の会社が動ける金額です。
区ごとの相場は福岡市の売却相場にまとめています。
買主の融資期間は、耐用年数でどう決まりますか
法定耐用年数から築年数を引いた残りを、融資期間の上限の目安にする扱いが広く見られます。
木造の住宅用なら22年から築年数を引くので、築15年なら残り7年という計算です。
この扱いは金融機関ごとに違い、当社から特定の銀行の基準をお伝えすることはできません。
法定耐用年数22年に対する残りの年数は、築年数から機械的に出ます。
| 築年数 | 22年から引いた残り |
|---|---|
| 築10年 | 12年 |
| 築15年 | 7年 |
| 築20年 | 2年 |
| 築22年以上 | 0年 |
築20年から築22年までのあいだで、残りは2年から0年へ落ちます。
売る時期を数年のうちで選べる立場なら、この段差の手前と後ろで買主の反応が変わる点を見ておいてください。
残りが短いと、買主の毎月の返済が重くなる
同じ借入額でも、期間が20年と7年では毎月の返済額が大きく変わります。
家賃収入から返済を引いた手残りが薄くなるため、買主は価格を下げて辻褄を合わせようとします。
つまり、耐用年数の残りは買主の融資を通して価格に跳ね返ってくるもの。
利回りと価格の関係は利回りから売却価格を逆算で説明しています。
残りがゼロの建物では、土俵が変わる
築22年を越えると、法定耐用年数の残りはゼロです。
この段階では、建物の年数ではなく、買主自身の事業の実績や自己資金で融資が判断されます。
結果として、融資の条件が買主ごとにばらつき、申し込みから回答までの日数も読みにくくなります。
売買契約に融資特約を付ける場合は、期限の設定に余裕を見てください。
売主が用意できる材料は3つ
買主の融資の審査を前に進めるために、売主の側から出せるものがあります。
直近2〜3年のレントロールと、賃貸借契約書の写し。
修繕の履歴と、屋根・外壁・給排水の工事の請求書。
そして建築確認済証と検査済証です。
検査済証が見つからない場合の進め方は検査済証がないビル・アパートは売れる?に書きました。
買主は、どうやって償却するのですか
中古の建物を買った買主は、残りの使用可能期間を見積もって償却します。
見積りが難しい場合は、国税庁が示す簡便法で年数を出せます。
法定耐用年数を全部過ぎた建物なら、法定耐用年数に20%を掛けた年数です。
簡便法の2つの式
法定耐用年数の全部を過ぎている場合は「法定耐用年数×20%」で計算します。
木造の住宅用なら22年の20%で4.4年、1年未満を切り捨てて4年。
一部だけ過ぎている場合は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」です。
築15年の木造アパートなら、22年から15年を引いた7年に、15年の20%の3年を足して10年になります。
どちらも1年未満は切り捨てで、2年に満たないときの下限は2年です。
短い年数が、買う理由になる場合がある
築22年を越えた木造アパートを買った場合、建物の価額を4年で落とす形になります。
同じ金額を47年かけるRC造と比べると、1年あたりの償却費は大きくなります。
これを目的に築古の木造を探す買主もいるため、買主の層が完全に消えるわけではありません。
ただし、どう扱うかは買主の申告の話で、税の有利不利は当社がお勧めする領域の外です。
簡便法が使えない場合もある
買主が事業に使うために支出した資本的支出が、その中古資産の取得価額の50%を超える場合、簡便法は使えません。
大規模にリフォームしてから貸す計画の買主は、ここに当たることがあります。
売主の側で判断する話ではありませんが、買主の計画で償却の年数が変わる点は押さえておいてください。
売主の税金はどうなりますか
築22年を越えた木造アパートでは、譲渡益が大きく出やすくなります。
毎年の減価償却で建物の取得費がすでに削られているためです。
売った金額が安く見えても、税額は小さくならないという形になります。
税率は、売った年の1月1日の所有期間で決まる
所有期間が5年以下なら39.63%、5年を超えていれば20.315%です。
数え方の起点は引き渡した日ではなく、売った年の1月1日なので、年末と年始の引き渡しで税率が変わる場合があります。
築22年の木造アパートは長期の側に入るのがふつうですが、相続で取得した場合は取得時期を引き継ぎます。
計算の順番は一棟アパート・ビル売却の税金に例を置きました。
出典:国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算/国税庁 No.3211 短期譲渡所得
個別の税額は税理士へ
取得費の算定、法人名義の場合の扱い、建物にかかる消費税は、申告の組み立てごとに変わります。
当社は税理士と連携して進めますが、税額の計算そのものは税理士が行います。
当社の手取りの試算は自宅の売却を前提にしているため、一棟の計算には使えません。
法人名義のビルを売る前に聞いておくことは法人名義のビルを売る前にに並べました。
売る前に、何から始めればよいですか
最初にそろえるのは、建物の年数を裏づける書類です。
登記事項証明書で新築の年月を確かめ、建築確認済証と検査済証を探してください。
登記の新築年月と、確認済証に書かれた年が食い違うことがあります。
その場合に建築時期の裏づけになるのは、確認済証と検査済証の日付のほうです。
次に、直近2〜3年のレントロールと賃貸借契約書、修繕の履歴を1つにまとめます。
入居者がいるまま売るか、空けてから売るか
入居者がいるまま売ると、買主は家賃収入をそのまま受け取れます。
敷金と保証金の引き継ぎ方は一棟のオーナーチェンジ売却に書きました。
空けてから売る場合は、立ち退きの交渉と空室期間の家賃の減りを先に見積もってください。
土地として買う層に当てるなら、入居者がいない状態のほうが話が早く進みます。
どちらを選ぶかは、空室の数と、残っている入居者の契約の残期間で決まります。
半分以上が埋まっているなら、収益として見る買主へ当てたほうが価格は組みやすいもの。
空室が目立つなら、解体と建て替えの見積りを先に取って、土地として売る道を並べてください。
当社への相談の入口
一棟の売却の考え方は福岡市の一棟ビル・一棟マンション売却にまとめました。
当社は売主側の仲介として入り、囲い込みをしません。
買主側に別の不動産会社が付くこともあり、代表が最後まで担当します。
査定のご依頼は無料査定から、建物の種別で一棟を選んでお進みください。
登記事項証明書とレントロールが手元にあれば、その写真を添えていただくと話が早くなります。
