空き家を民泊にする費用|改装・消防・委託料と売却の比べ方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士空き家になった実家を民泊にしたら、いくらかかるのかを知りたい方がいます。
この記事は、福岡市に空き家を持ち、民泊にするか売るかを迷っている方が「お金をかける前に何を確かめるか」を判断するために書きました。
先に結論を書くと、民泊の費用のうち金額が公に決まっているのは役所の書類代と手数料だけです。
消防設備・改装・家具・運営の委託料は、家の状態と契約しだいで大きく変わり、見積もりを取るまで分かりません。
だからこそ、見積もりを集めて工事を頼む前に、今売った場合の査定額を手元に置いて並べることを勧めています。
届出と許可の違いや年180日の上限といった制度の基本は、ここでは繰り返しません。
詳しくは空き家を民泊にするには|福岡市の届出と年180日の上限をご覧ください。
2. 届出や許可の書類には、いくらかかる?
3. 消防設備と改装には、どんな費用がかかる?
4. 家具や委託料など、始めたあとに続く費用は?
5. 費用をかける前に、売った場合と何を比べる?
6. 福岡市の空き家を民泊にするか迷ったら、何から始める?
空き家を民泊にする費用は、どんな項目に分かれる?
空き家を民泊にする費用は、始める前の書類代、始めるための設備と改装の費用、始めたあとに続く委託料や点検の費用の3つに分かれます。
このうち公的なページで金額を確かめられるのは、書類代・手数料・ごみの手数料の上限くらいです。
金額が決まっている費用と、見積もりで決まる費用
項目を時期ごとに並べると、次のようになります。
| 時期 | 主な項目 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 始める前 | 登記事項証明書・身分証明書・図面・旅館業の手数料 | 法務局と福岡市が決めている |
| 始めるため | 消防設備・防炎のカーテン・改装・家具と家電 | 業者の見積もりで決まる |
| 始めたあと | 管理業者への委託料・設備の点検・ごみの収集 | 契約で決まる(ごみは市が上限を定める) |
表の真ん中の行が、費用の大部分を占めやすいところです。
そして、この行の金額は家ごとにまったく違うため、この記事では相場の数字を出していません。
届出の民泊と旅館業で、かかる費用の顔ぶれが変わる
福岡市で民泊を始める方法は、県に届け出て年180日まで泊める方法と、市から旅館業の許可を受ける方法の2つです。
届出なら役所に払う手数料の記載は見当たらず、旅館業なら申請の手数料がかかります。
旅館業では、建物の用途を変える手続きや、置ける地域の制限まで確かめる必要が出てくるでしょう。
どちらの道が自分の家で取れるかは、先にその家は民泊に使える?用途地域と建物の調べ方で確かめておくと、無駄な見積もりを取らずに済みます。
届出や許可の書類には、いくらかかる?
届出の民泊で個人が集める証明書は、福岡市に本籍がある方なら登記事項証明書600円と身分証明書300円で、合わせて900円です。
旅館業の許可を受けるなら、ここに福岡市の申請手数料22,000円が加わります。
届出の民泊で集める書類と、その代金
観光庁の一覧では、個人が届出に添える書類として次のものが挙がっています。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に当たらないことを示す、市町村長の証明書(身分証明書)
- 欠格事由に当たらないことを誓約する書面
- 住宅の登記事項証明書
- 住宅の図面(台所・浴室・便所・洗面設備の位置、間取り、床面積、非常用照明器具の位置など)
- 分譲マンションなら管理規約の写し
- 管理業者に委託するなら、管理業者から受け取った書面の写し
官公署が出す証明書は、届出の日の前3か月以内に発行されたものに限られ、写しは使えません。
図面は手書きでも認められているので、図面を描き起こす費用は必ずしもかかりません。
登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送で請求すると1通600円です。
インターネットで請求して郵送で受け取れば520円、窓口で受け取れば490円まで下がります。
身分証明書を出すのは本籍地の市区町村で、福岡市に本籍があれば区役所の窓口で1通300円です。
本籍が福岡市にない方は、本籍地の役所に郵送で請求することになります。
出典:福岡市 証明書の取得
消防法令適合通知書は、物件がある区の消防署に平面図と登記などを添えて申請します。
この通知書の手数料は、福岡市消防局の民泊のページには書かれていなかったので、申請の前に区の消防署で確かめてください。
旅館業の許可なら、福岡市の手数料は22,000円
旅館業の許可を申請するときは、施設がある区の衛生課に手数料22,000円を現金で納めます。
届出の証明書2通の900円と比べると、約24倍です。
納めたあとは返金されないので、許可が取れる見込みを事前の相談で確かめてから出すのが順番でしょう。
申請には、各階の平面図と立面図、施設を中心に半径300m以内の見取り図も要ります。
書類を出してから許可書が出るまでは14営業日ほどです。
市は、できれば工事を始める前に、平面図を持って区の衛生課に相談するよう案内しています。
相談の前に、家のどこを旅館業の基準に合わせることになるのかを旅館業の許可で求められる基準で確かめておくと話が早く進みます。
改装の契約を結んだあとで許可が取れないと分かると、工事の費用だけが残ってしまうからです。
消防設備と改装には、どんな費用がかかる?
消防設備の費用は消火器・自動火災報知設備・誘導灯などの業者の見積もりで決まり、改装は水回りの4つの設備がそろっているかで規模が変わります。
どちらも家の状態しだいで、公的なページに相場は載っていません。
消防設備は、業者の見積もりと届出の手間で決まる
福岡市消防局のよくある問い合わせでは、民泊で必要になることが多い設備の例として、消火器・自動火災報知設備・誘導灯が挙がっています。
何が要るかは、一戸建てかマンションか、いま付いている設備は何かで建物ごとに変わります。
自動火災報知設備や誘導灯は、消防設備士や電気工事士の資格がないと工事できない場合があるため、多くは消防設備業者に頼む形です。
消防局が勧めているのは、見積もりを複数の業者から取ることです。
設備の費用のほかに、見落としやすい小さな項目が3つ。
- カーテンやじゅうたんは、防炎物品にする
- 宿泊室の見やすい場所に、避難経路図を貼る
- 寝る場所に、持ち運べる電灯を置く
今あるカーテンやじゅうたんを使い続けるつもりでも、防炎物品でなければ買い替えの費用が出るでしょう。
宿泊施設と判定された家は、設置したあとも機器の点検を半年ごと、総合点検を1年ごとに行い、結果を1年に1回消防署長へ報告する決まりなので、点検を頼む費用も毎年続くことになります。
どの設備が要るかの決まり方と、区の消防署での手続きは民泊の消防設備と適合通知書に書きました。
設備ごとの細かな決まりは家の造りで変わるため、ここでは費用の項目として挙げるだけにしました。
福岡県が届出住宅に求めているのは、非常用照明器具の設置や避難経路の表示などの安全の措置です。
非常用照明器具が要るかどうかは住宅の建て方や規模で変わるので、図面を描く段階で確かめておかないと、届出の直前に工事が増えます。
改装は、4つの設備がそろっているかで規模が変わる
届出の民泊に使う家には、台所・浴室・便所・洗面設備の4つが必要です。
近くの銭湯や、併設した店舗の台所で代わりにすることはできません。
ユニットバスのように浴室・便所・洗面設備が一体になっていれば、それぞれがあるものとして扱われます。
長く空き家だった家では、4つがそろっていても、給湯器や水回りが使えるかを確かめるところから始まります。
改装の中身として考えられるのは、たとえば次のような項目です。
- 水回り(給湯器・浴室・便所・洗面)の修理や交換
- 壁紙や床の張り替え、雨漏りの補修
- 鍵の交換(暗証番号の錠や鍵箱にするか)
- インターネット回線の引き込み
- 玄関などに掲げる届出住宅の標識
金額は工事の範囲で大きく動くため、2〜3社から同じ条件で見積もりを取って比べるしかありません。
旅館業に使う部分が200㎡を超えると用途を変える確認申請も要り、その設計や申請の費用が別にかかります。
家具や委託料など、始めたあとに続く費用は?
始めたあとに続くのは、管理業者への委託料、消防設備の点検、ごみの収集費、リネンや消耗品の補充です。
このなかには、泊まる人がいない月にもかかる費用が含まれます。
家具や家電の購入は始める前の1回ですが、傷めば買い替えが必要です。
家具・家電・リネンは、泊める人数で量が決まる
空き家に残っている家具を使えるかどうかで、ここの費用は大きく変わるはずです。
そろえる項目としては、次のようなものが挙がります。
- 寝具(布団やベッド)と、替えのシーツ・タオル
- 冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機・エアコンなどの家電
- 食器や調理器具、ドライヤーなどの備品
- 外国語の案内や、宿泊者に渡す説明の資料
泊める人数が多いほど寝具もタオルも増え、洗濯や補充の手間も比例して増えていきます。
リネンを家で洗うのか業者が持ち帰るのかは、管理業者との契約で決まる部分です。
家主が住まないなら、住宅宿泊管理業者への委託料が毎月かかる
空き家で届出の民泊をすると、泊めている間は家主がいないので、国に登録した住宅宿泊管理業者に管理の業務を委託しなければなりません。
委託料は会社ごとの契約で決まり、公的な目安はありません。
住宅宿泊管理業者は、契約の前に内容を書面で説明し、契約のあとにも報酬や業務の範囲を書いた書面を渡す義務があります。
見積もりを比べるときは、清掃・苦情対応・予約サイトの運用のどこまでが委託料に入っているかを、その書面でそろえてから比べてください。
委託しても、県への2か月ごとの報告や福岡市の宿泊税の申告は家主の名前で続きます。
任せられる範囲と会社の選び方は、民泊の運営代行とは|任せられる範囲と選び方に詳しく書きました。
福岡市では、民泊のごみは事業系ごみとして有料で出す
福岡県は、民泊から出たごみを事業活動で生じた廃棄物として、家主が責任をもって処理するよう求めています。
福岡市の事業系ごみの出し方は、市の許可を受けた収集業者に頼むか、市の処理施設に自分で運び込むかの2つです。
許可業者に頼む場合の手数料は、市の条例で上限が決まっています。
| 区分 | 収集運搬の費用(上限) | 処分の費用(上限) |
|---|---|---|
| 定期収集 | 50リットルまでごとに150円 | 1kgまでごとに14円 |
| 臨時収集 | 1立方メートルまでごとに4,070円 | 1kgまでごとに14円 |
週2回、50リットルの袋を1つずつ出す契約なら、収集運搬だけで月8〜9回、1,200〜1,350円が上限の計算です。
ここに重さに応じた処分の費用が加わり、宿泊者がいない週でも契約の内容によっては費用が出ます。
家庭ごみの袋で出せないぶん、自宅に住んでいたころにはなかった費用になるわけです。
費用をかける前に、売った場合と何を比べる?
比べるのは、民泊を始めるためにかける費用、今売った場合の手取り、民泊で失うかもしれない税金の控除の3つです。
この順に数字をそろえると、判断がぶれません。
民泊の売上の見込みは、この記事では数字を示せないため、先に確かめられるものから並べます。
比べる3つは「かける費用」「今の手取り」「失うかもしれない控除」
1つ目は、ここまでに挙げた費用の見積もりを合計した額です。
2つ目は、今の状態のまま売った場合の手取りで、査定額から仲介手数料や税金を引いて出します。
手取りの計算は、手取りの試算で目安をつけられます。
3つ目は、相続した空き家を売るときの3,000万円控除です。
この控除は相続のときから売るときまで事業や貸付けに使っていないことが条件なので、民泊を始めると外れる可能性があります。
控除の条件と民泊との関係は、民泊に使った家を売るときの税金に書きました。
個別の税額や有利不利は、税理士か税務署にご確認ください。
古い家の場合は、解体して更地で売る道も比べる対象に入ります。
木造戸建ての解体費は1坪5〜8万円が目安で、30坪なら150〜240万円ほどかかります。
民泊の改装に同じくらいの金額をかけるのか、解体に使うのか、何もかけずに今の状態で売るのかを、同じ表に並べてみてください。
民泊の買主に向けて売る道もある
自分で民泊を始めなくても、民泊に使いたい人を買主の候補に入れて売り出す方法があります。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊の買主の条件に合えば、検討の対象になる場合があります。
古家付きのまま売り出せば、解体費を売る前に払う必要はありません。
ただし、実際に買うのは民泊の買主とは限らず、賃貸用の買主や自分で直して住む人のこともあるでしょう。
民泊にすれば高く売れるという話ではないので、住まいとして売る場合の見通しと並べて考えるのが前提です。
民泊に向く家の条件は民泊に向く家の条件に、古い家を解体する前に考えることは古くて売れない実家を民泊の買主へにまとめました。
福岡市の空き家を民泊にするか迷ったら、何から始める?
最初にやることは、業者に見積もりを頼むことではなく、今の状態で売った場合の査定額を知ることです。
査定は無料で、査定を受けたからといって売る必要はありません。
査定額が分かっていれば、消防設備や改装の見積もりが届いたときに「この費用をかけて持ち続けるか」をその場で比べられます。
見積もりを先に集めると、かける費用の大きさだけを見て判断しがちです。
査定のときは、登記事項証明書か権利証、建物の図面、固定資産税の納税通知書を手元に置いておくと話が早く進みます。
民泊の買主も候補に入りそうかを含めて知りたい方は、無料査定からお申し込みください。
民泊の運営は、当社が提携している運営会社が受け持ちます。
当社は窓口と、売った場合の手取りとの比較を担当します。
進め方は民泊で運用する(福岡市)のページにまとめました。
売らずに民泊として持ちたい気持ちが強い方は、15分の無料相談で、持ち続けた場合の費用と売った場合の手取りを並べるところからご一緒します。

